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虹の架け橋  作者: 藤井桜
新婚編
210/415

一年目の結婚記念日と二人の誓い



 この日は、宮城公演のために私は、土曜日から仙台入りしていた。本当は三月の十一日にライブをしたかったが、残念ながら月曜日なので諦めた。昔から、ライブは土日か祝日にやって来たので、今回もそうする事になった。

 今回のベストアルバムを掲げた全国ツアーは、二月の後半から始まって、福岡公演から開始された。そして、今日の宮城公演がちょうど真ん中、来週から折り返しの後半に入る。

 基本、宮城公演以外は土曜日開催で、金曜日に現地入りして、ライブ後に、一泊して東京に戻るのだが、今回は、違った。莉子さんに無理を言って、ライブ終わりに東京に戻る事にしたのだ。遅くなったとしても、十日のうちに帰りたかった。莉子さんもそれを理解して、一緒に帰路に着いてくれた。


 この日は、結婚記念日だった。一年前のこの日、私たちは入籍して、世間に結婚を報告した。そう言うわけで、この日は無視出来なかったのだ。お祝いのケーキもワインも何もない。お土産さえ、買う余裕は無かった。莉子さんが気を利かせて、宮城公演でファンから受け取った、お菓子と花を持たせてくれた。うん? 何だかこれ、男性側が準備するものの様な気がするのだが、これはこれで麻衣らしいって、莉子さんに言われた。でも、結婚記念日に流用するつもりは無い。あくまで、お土産だ。


 流石に時間が遅いので、衣装などは機材班に頼んで、バス移動で東京に運んでもらう事になった。私と莉子さん以外は後片付けもあるので、仙台に一泊して、次の日に東京に戻る予定だ。美月さんも今回は仙台泊まりにした様だ。ごめんなさいと謝ると「結婚記念日の方が大事でしょう」と言われた。ありがとうございます。

 莉子さんも私と東京駅で別れて、事務所には戻らずに今日は部屋に戻るって言ってた。ただし、社長には連絡を入れてくれた様で、いつもありがとうございます。


 ライブ終わりに(よし)くんには、連絡は入れてあった。何があるか分からないので、予定はそのまま、明日帰ると告げていたので、突然、私が帰るって言う選択肢をした事に驚かれた。トラブルがある可能性も考えられたので、予定の二泊は変更しなかった。



『ぶち嬉しいけれど、ご飯はどうするの?』

「流石にお腹空くので、駅弁買うよ」

『そっか、じゃあ、気を付けて帰って来てね』



 晩御飯は駅弁にした。駅弁の種類、仙台って多いらしいね。温かいもの食べたかったので、牛タン弁当にした。莉子さんも一緒だ。時間があれば、牛タン屋さんで食べて来たかったんだけど、昨日のお昼は嘉くんが作ってくれたお弁当で、夜は定食屋さんだった。今日のお昼は、食べに行く時間が取れなくて、お弁当だった。朝食はホテルで食べた。



* * *



 東京駅には、まさかの嘉くんが迎えに来てくれた。それと、沖さんもいた。私から、嘉くんには、何も話していなかった、私は、このまま部屋に帰るつもりでいたのだ。莉子さんは、しっかり、沖さんに時間も場所も伝えてあったので、行き違いになる事は無かった様だ。

 実は、今日は、レーゲンボーゲンのデビュー日だったので、配信後にお祝いを兼ねて、いつもの居酒屋に行っていたらしい。スタッフさんと遥くんに、理由を告げて、途中で抜けて来たらしい。

 本当は、うちでサポートメンバーの人たちと泊まりがけで、配信の話もあった様だが、私の帰宅でそれは無くなった様だ、それ、本当に申し訳ありません。



「わざわざ、迎えに来てもらって、ごめんなさい」

「いや、みんな、結婚記念日だって知ってるから、麻衣の予定が変わって、みんな、ほっとしていたよ」

「そうなのね、すごく、申し訳ないなって思ってたから、…嘉くんたちはご飯は?」



 そう聞くと、嘉くんも沖さんもちゃんと、食べて来たらしい。うん、嘉くんはお酒弱いから、ちゃんと食べないと寝落ちしちゃうからね。ここまで、来るのに酔いも覚めた様で、普段通りだった。スーツケースは嘉くんが持ってくれた。莉子さんから預かった私へのファンや友達からのプレゼントはスーツケースケースの中だ。手に花束だけを持っている。



「じゃあ、麻衣、明日、事務所で。申し訳ないけれど、報告したいから来てもらいたいわ」

「はい、了解です。莉子さん、お休みなさい」

「ええ、麻衣も。ゆっくり休んでね。必ずよ?」



 あはは、嘉くんに牽制している、莉子さんがいる。善処しますって言ったのは私じゃなくて嘉くんだ。行動が読まれている。私は莉子さんたちと別れると家路に着いた。あ、途中で、嘉くんケーキを買っていた様で、手にはケーキの箱を持っていた。流石です。



* * *



 あと一時間ほどで今日が終わってしまう。この時間にケーキは実はあまり食べたく無いのだが、せっかく買ってくれたのだ、頂こうと思う。帰ってきてから開けようと思っていたワインも冷蔵庫で冷やしていた様で、本当に気が利く旦那様だ。



「あれ、一つだけ?」

「もっと、食べたかった?」

「ううん、ちょっと、予想外だった」

「この時間だしね。麻衣あまり、食べないでしょ。俺も甘いものそこまで取るつもりないので、分けようと思った。もし、食べたかったら、後で改めて食べようよ」

「これで、十分かな」

「うん、そう言うと思った。ワインは開けようか」



 そう言って、今回は遥くんがお祝いにと差し入れてくれた、ワインをいただく事にした。長野のワインだった。後で、遥くんにお礼を言っておこう。莉子さんに注意されたので、ワインはほどほどにして、明日は事務所に顔を出さないといけないので、早く休まないといけないね。



「乾杯しよう、何に乾杯する?」

「これからも宜しくお願いします」

「いや、それもだけど、他にもないの?」



 いや、本気で何も思い浮かばない。嘉くんにお礼と感謝の言葉を伝えると、更に他には、って聞かれた。抱負じゃ、なんか、年の初めに願う事だし、何か他にあるかな。



「私にばかり、聞かないで。嘉くんは無いの?」

「俺?」

「うん」

「そうだね、麻衣、僕と結婚してくれて、ありがとう。これまでもこれからも、君を愛しているよ」

「え、ちょ、なんで突然の僕呼びなの」

「喜んでもらえるかなと思って。麻衣は?」



 そう言って、覗き込まれた、嘉くんの表情は真剣で、返す言葉に私も「愛してる」と告げると、誓う様に優しく口付けられた。


 今日、無理して帰って来て良かった。だって、嘉くん、本当に嬉しそうなんだもの。お風呂は本当はゆっくり入りたかったんだけど、今日はシャワーで済ませてしまった。頂いた花だけは、ちゃんと生けた。でも、そこで力尽きた。私は嘉くんに抱き抱えられて、寝室で落ちたのだった。




 結婚記念日のお話を最後に。嘉くん、流石に疲れて帰って来た麻衣を襲う狼ではありません。



 疲れて眠ってしまった、麻衣の寝顔を見つめて、嘉隆はそのこめかみに口付けた。きっと、結婚記念日を気にして、無理して帰って来たのだろう。それが、嘉隆にとって嬉しい。

 愛している以上に愛されているんだな、と認識させられる。柔らかい唇に口付けて、嘉隆は、麻衣を包み込む様に、優しく抱き締めた。その温もりを感じて。



 後日談でも、折を見て、嘉隆くんsideの過去話として、後書きの続きでも書けたら良いなと思います。最近、嘉隆くん視点のお話書いていませんね。

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