表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
虹の架け橋  作者: 藤井桜
新婚編
203/415

ご当地パンとその犯人



 実家からの荷物が届いた。冬場は野菜が少ないので、基本、加工品が多いのだが、その隙間埋めにパンを入れるのやめてもらって良いですか。犯人は絵美だな。そんな事するのは、絵美しかいない。



「あはは、何で、パンが詰まってるの」

「絵美だと思う。抗議する」

「ぶち面白いから良いんじゃない? お礼言っておいてよ」

「えー、パン潰れるじゃん。それに、消費期限が勿体ない。明日中に五個なんて食べ切れないよ?」

「明日、遥に持って行く? それか、冷凍するとか」

「冷凍庫がお菓子で埋め尽くされておりますが?」

「遥、最近忙しくて来なかったものね。じゃあ、明日、事務所に持って行くよ。冷凍庫のも持って行く途中で、溶けて食べ頃になるんじゃない?」

「お願いしても良いですか」

「うん、良いよ。それと、おやつにしよう? それって、甘いやつだよね」



 私が手に持っているパンの一つを取る。ピーナツクリームが入っている。気仙沼(けせんぬま)地方ではお馴染みのコッペパンだ。『気仙沼パン』って呼ばれていて親しまれている。



「遥好きそうだよね」

「あ」

「どうしたの?」

「犯人、絵美じゃなかった」

「どう言う事?」

「気仙沼パンを入れた犯人は(あん)だった」

「あれ、杏ちゃん実家に戻ってたの?」

「うん、ほら、おばあちゃんの命日が近いからね」

「あー、なるほど。麻衣は行かなくて良いの?」

「流石に遠いからねー。今、ツアーの準備で忙しいし。悠兄の誕生日の時に、仏壇に手を合わせて来たよ」



 おばあちゃんが亡くなったのは、二月末の事で、平日は仕事の都合があるので難しいので、うちの家族は農家で平日でも構わないんだけど、命日に近い日曜日にする。顔の広い人で親戚から近所の人、民謡仲間なども来るので大掛かりだ。本当は行きたかったけれど、仕事が優先なので、しょうがない。



「絵美に怒られた。このパンは杏が遥くんのために入れたらしい」

「全部、遥の分?」

「いや、そう言うわけじゃないよ。遥くんに三本あげちゃおう。これ、迷うやつだ。全部、味が違う。嘉くんは何が食べたい?」

「定番のやつ?」

「ピーナツクリームね。私は、ブルーベリーにしよう」



 私が絵美とLINEのメッセージのやり取りをしている間に、嘉くんは荷物を片付けてくれた。いつもありがとうございます。味は他に胡麻クリームといちごクリーム、いちじくクリームなんて言うのもあった。色々な味が出ているのね。



「広島のご当地パンは知ってる?」

「くりーむパン?」

「あはは、まぁ、八天堂のそれもパンって付いているね。あ、そうか、気仙沼パンと似てるか。甘いパンって言う点では同じ様な感じだね」

「違うの?」

「こないださ、沖さんたち、アンデルセンに行ったって言ってたよね。そこのパンだね」

「あそこ、パン屋さんなのね」

「それと、麻衣も食べたよね。美術館行った時に。あそこのカフェもだよ」

「そんなに身近なパン屋さんなのね」

「更に言うと、俺がスーパーで買ってくるパンもだよ」

「アンデルセンって入ってないよね」

「系列が一緒で、タカキベーカリーのだね。本当は地元で食べたいんだけどね」



 パンにこだわりが無かったので、気付かなかった。うちで嘉くんが出してくれる食パンはタカキベーカリーのだったらしい。ちなみに、ジャムも広島のメーカーの『アオハタ』だって言ってた。ヨーグルトも広島の企業『チチヤス』で、朝食が広島のメーカーのものばっかりだったりしていたらしい。

 気付かない事多すぎて、私には興味が無い事だったんだなと気付かされた。莉子さんも昔、そうだったのかな。そう思うと莉子さん、ごめんなさい。



「そのパンね、トースターで焼いて食べると美味しいんだよ。気を付けないと中のクリームが熱くて舌を火傷するけど」

「色々と危険な食べ物だ」



 うん、確かにそうだね。カロリーも高いし、いっぱい食べたくなっちゃうし、急いで食べると火傷しちゃうなんて、本当に危険な食べ物だ。



「食べ終わったら買い物に行こう」

「そうだね、少し動いた方が良いよね。今夜は何にするの?」

「さっき、箱の中身整理していた時に、見つけたんだけど、これ、何て言う魚?」

「ああ、メカジキだ」



 冷蔵で送ってよこしたな、と思っていたんだけどこれが入っていたからの様だ。切り身になっちゃうと、見た目だけで何の魚か、判断つき難いよね。今年最後だからって、他に牡蠣も入っていた。そろそろ、生で食べられる時期は終わるけれど、牡蠣はこれからの時期も食べられるんだけどね。実家からの牡蠣は基本、冬場しか送ってこない。それと、生食用ではなく、加熱用ばかりだ。嘉くんのお腹の心配してくれているわけではなさそうだけど。



「メカジキはニンニク醤油で焼くのが美味しいね。牡蠣は、明日、遥くん呼んで鍋にしようよ」

「じゃあ、それで。明日は、事務所だから、買い物は今日しちゃおう。明日の分も買ってしまおう」

「私行っても良いんだよ?」

「今日中に常備菜も作っておこうと思っている。俺も三月のデビュー記念日の事で忙しくなるから、作って冷凍とかもしておきたい。麻衣も忙しいのに、無理はしないで。来週から、ツアー始まるでしょ」

「そうなんだけど、気を遣ってくれてありがとう。最近、遥くんも、忙しいって言ったばかりだったね。じゃあ、その買い物もするんだね」

「そう言う事」



 今日は、午前中は、事務所でツアーのための打ち合わせがあった。これから、二人とも忙しくなるだろう。帰りも遅くなり、疲れちゃうとご飯を作る気力も無くなってしまう。なので、あらかじめ作って冷凍しておく様だ。


 おやつに気仙沼パンを食べて、私たちは買い物に出掛けた。スーパーにちゃんとタカキベーカリーのパンが置いてあった。期間限定なのかな、瀬戸内レモンの食パンがあったので、今回はそれをチョイスした。


 メカジキは気にしないと食べないよね。これは、牡蠣と並んで気仙沼の冬の味覚だ。ニンニク醤油で焼いたメカジキはとても、好評でした。残ったものは、粗熱を取って冷凍事行き、忙しい時に活躍してくれそうだ。




 昔は気仙沼パンという名称は無く、給食でもよく出ていて、好きなパンの一つでしたね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ