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虹の架け橋  作者: 藤井桜
本編
19/718

赤と青に出会って、一年の節目と(レーゲンボーゲン)二人の記念日



 彼らと知り合って、こうして、お互いの部屋を行き来するような仲になるとは思っても見なかった。意気投合するまでは、長いが一度、話や趣味が合うとのめり込んでしまうのは、昔からの私の悪い癖だ。

 仲良くしてもらえる事が嬉しくて、その関係をあやふやのまま終わらせたくない。もしも、その関係が終わるなら、きっと、私からではない、と思っている。


 あの時、あの番組で二人に会って、一年が経っていた。一緒に飲みに行くし、休みの日は、一緒に映画を見たり、音楽を聴いたりとまったりとした時間を過ごす。若い頃のように遊び歩く事もなく、優先順位は仕事だし、そんな時間が流れる事が心地良い。

 ただ、人目につく事は避ける、その事だけ三人の共通認識だった。仮にも、芸能人だしね。


 その日は、休みのはずだった。朝普通に起きて、日課の散歩に出掛けて、朝食を取って、まったりとした時間を過ごしながら、レーゲンボーゲンの二人にデビュー十六周年のお祝いのメッセージを送った。

 生放送があるって言うので、録画しながら、見ようと思う。

 もし、うちに来る予定なら、お祝いするよ、と言ったら、浅生(あそう)くんから、絶対に行くと、と言う返事をもらった。それなら、部屋を掃除しないといけないな。これ、生放送では、見れないな。三時ごろの番組だっけ。掃除が終わって、軽くお昼を取っていると、莉子さんから、事務所に来る様に言われた。


 莉子さんに、突然の仕事を頼まれた。事務所側でも、レーゲンボーゲンの記念日を、把握していた様だ。レーゲンボーゲンの二人のデビュー十六周年の記念日なので、莉子さんから手渡されたのは、白い箱。中身の想像は付く。ケーキだろう。それほど、大きくはないので、ホールではなく、カットされたものなんだろう。

 今夜、うちに来て、お祝いしようと、約束はしている。ケーキを買う予定はなかったので、気の利く莉子さんに感謝だ。きっと、うちでお祝いするのだろう、と認識されている。届けたいと思っていたのだが、今日は、事務所を離れられない用事があるので、ごめんね、と謝られた。


 部屋から事務所までは電車の乗り換えもないので、楽な距離なので、問題はない。十六周年のお祝いと言うよりは、私にとっては、出会って一周年のお祝いだと思っている。十五周年とかの節目のお祝いでもないからね。


 今日の二人は、打ち合わせも含めて、一日中、TVの生放送に出演中だ。夕方には解放されると言っていたが、どうなるか分からないので、一度部屋に戻って、ケーキを冷蔵庫に入れた方が良いかもしれない。

 今日が、記念日なら事務所でも、番組でも、何かするはずだと思うんだけど、どうなんだろう。まぁ、十五周年で色々とやってるので、やらない可能性もある。


 時計を見ると、午後の三時を過ぎたところ、メッセージでは、絶対に行くって、言われたので、きっと本当に来るのだろう。二人は時間に正確で、約束の時間に遅れる事は滅多にない。まぁ、仕事で遅れる事はたまにある。それは、私もだ。

 流石に、こっちに来る際に何か買って来ると言う事はないので、自分で調達しておかないといけないな。私だけだったら、お酒だけで十分だ。


 とりあえず、近所のスーパーに出掛ける。買うものは、それほど、多くはない。実家から、色々と送られてくるからだ。莉子さん、忙しそうで、手伝ってもらえないのは、残念だ。

 料理は出来ないことはないので、軽くつまめる、おつまみを作る事にする。


 料理の完成と共に、二人がやって来た。すごく、嬉しそうな、浅生くんと、どこか疲れている様な古川くん。聞くと、番組の打ち上げを蹴ってきたらしい。

 元々、そう言った類の飲み会には、ほとんど参加しないようで、私もなんだけどね。今日は、デビュー十六周年の記念日だったのに、断ったのが、少し問題だったようだ。去年は、大きな歌番組だったので、打ち上げはなく、うちの事務所とやりましたね。休止前も、特に打ち上げに参加していたわけではなかった様だ。


 ここまで、送ってくれた、沖さんは苦笑している。いつもの事で、この話は終わったらしい。沖さんも誘ったんだけど、事務所に戻って、まだ仕事あると言う事で、戻って行った。お疲れ様です、莉子さんも何だけど、マネージャーの仕事すごく大変そうで、ほんと、申し訳なく思う。


 その、人付き合いの悪さ、どうにかしろよ、と古川くんに突っ込まれている。それ、私にも刺さってますよ、古川くん。



「ごめんね、番組の方は見てないの。一応、録画してるんだけど、色々と準備しちゃってた」

「まぁ、歌ってトークして、ケーキ食べて終わった感じかな」

「ケーキいらなかった?」

「買ったの?」

「いや、うちの、事務所から」



 結局、番組側のケーキはみんなで分けたら一切れ分しかなかったらしくて、古川くんは不満気だった。なので、さっきまでは、疲れた様な顔してたんだけど、ケーキがあるって言ったら浮上して来た。ああ、莉子さんのケーキこのためか。



「料理は麻衣が作ったの?」

「簡単なおつまみがメインだけどね。もしかして、お腹空いてる?」

「うん、少し、お腹に入れてから、お酒飲みたい」

「じゃあ、ちょっと、待ってね。パスタで良かったら茹でる。クリームソース残ってたはずだから、あと、牡蠣もあったから作って来る」

「手伝うよ」



 疲れているから良いよ、って言ったんだけど、浅生くんが立ち上がった。古川くんは、普段なら率先して手伝ってくれるんだけど、今回は邪魔だと思った様で、声は掛けてくれなかった。ここは、掛けてくれて良かったのに。



「食べ終わったら、洗い物手伝うから、ちょっと、休ませて」



 気を遣ってくれたらしいんだけど、いやいや、気を遣ってもらわなくても、良いのですが。パスタが出来上がって、席に着くと、ようやく、お祝いの乾杯が出来た。イタリアンなので、ワインだ。一杯だけ乾杯して、まずは、料理をお腹に入れるようだ。

 普段なら、食べないんだけど、作ったのは、牡蠣のクリームパスタにしたので、少し食べた。どれも、好評な様で良かったです。一人暮らしが長いので、料理は一応出来るんだけど、それも、莉子さんが心配するからね。



 レーゲンボーゲンの新曲『旅路の果てに』は、四月から始まるドラマの主題歌になっている。ドラマを見る予定は時間的に無理な気がするし、あまり、ドラマを見る事がないので、どうしようか悩んでいる。録画しても良いが、溜め込んで見ない自信がある。一話だけ頑張ってみようかな。

 ドラマって、昔の自分を思い出すので、あまり見ないのよね。


 主題歌を歌っているけれど、二人が出るとかじゃないので、全話追いかけて見るまではしなくていいかなと思っている。二人もぜひ、見てくれって言っているわけじゃないし、というか、浅生くんは、ドラマの事一言も言ってはいない。古川くんの表情もいつもより固い様な気がする。


 彼らは、二十一歳の時にデビューして、今、三十七歳。私もその三年後に十五周年を迎えると思うと、ここまで来るのがあっという間だったような気がする。二人は、去年、再始動したばかりで、十五周年記念のベストアルバムなどは出さなかった。二十周年の時には何かするのかな。



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