対等な関係を求めて、たばこをやめてもらうための、口実に戸惑う
喫煙の話題があります。未成年ではないので、大丈夫かなと思いますが、一応注意書きします。
秋が深まって来た十月、飲みに誘われるようになってから、浅生くんがたばこを吸う事に気付いた。どちらかというとたばこは苦手かな。父も兄もたばこは吸わない。お酒は飲むけれど、そのためなのか気付いたら気になってしょうがなかった。
どれくらい吸うのかは分からない。飲みに行った際に隣りに座った時に微かに気付くくらいだ。決して私の前では吸わないので、気付かなかった。
「麻衣?」
「浅生くん、あのね、お願い聞いてもらっても良いかな」
「お願い?」
「うん、私ね、たばこ嫌い。だから、えっと、もし良かったらなんだけれど」
吸わない者からしたらすぐに気付く事だ。多分、消臭しっかりしているつもりでも、分かってしまう。それが、お店なら特に。困った顔させたいわけじゃない。困らせているな。
「ごめん。気付かれていないと思ってた。君が嫌ならやめる」
「あ、違うの。えっと、違わないのかな、やめるのってすごく大変な事でしょう? だからね、私も何か、浅生くんのお願い聞くから。それじゃあ、だめかな。私がお願いしているんだから、浅生くんにもなにか、見返りが必要だと思うの」
浅生くんの目が大きく開かれる。望んでいない話だったようで、更に困らせているなと思う。はっきりと告げられた言葉に、申し訳なさが先立って、私はその言葉を飲み込んだ。たばこをやめるって、大変だよね。
知り合いのお父さんが病気になった事があって、お医者さんにたばこをやめてくれ、って言われたらしいけれど結局、やめられなかった。家族も再三やめるように言ったらしい。でも、だめだった。そのくらい、たばこは怖いものだ。
「だって、麻衣は変な事言ってないよ。本当は、もっと早くやめるつもりだった。東京出て来て、ストレスも少しはあったのか、その頃から吸うようになって、やめ時をすっかり、忘れていた」
「いいの? 無理はしないでね。たばこってやめようと思ってもやめれないっていうから。そう言う人、いっぱい見て来たから。だからね、少しでも、たばこをやめるためのモチベになるならって思ったの」
「じゃあ、仕事が一緒だった時、どこかに出掛ける時、こないだのような格好してくれる?」
「こないだって、ワンピース?」
「うん、あれは可愛いし似合っていたから、また、見たいな」
それくらいの事なら、と思ったが念を押しておく事にする。盛大に褒めるのだけはやめてくださいと、それを守ってくれるなら、と私は了承したのだった。それと一つ突っ込んでも良いですか。どこかに出掛けるって、確定なんですね。
そして、浅生くんは、私のお願い通りに、たばこをやめてくれた。浅生くんの身体の事も考えるとやめてもらって良かったと思う。




