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虹の架け橋  作者: 藤井桜
新婚編
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君の声で歌って、空に届く様に



 ギターを手にしたのは、歌いたかったから。仕事で曲を作るなら、仕事部屋に行くのだが、今日はちょっと違う。夜なので騒音が心配なので、弦は軽く弾くだけ、そして、(よし)くんの帰りを待っていた。仕事部屋だと、帰っても気付かない事が多いので、ここにいる。防音設備がしっかりしているのは、良し悪しだなと思う。いつも、帰ってもお出迎え出来ないのが申し訳ない。

 近くのテーブルには、お酒が置いてある。今日はゆっくり飲みたかったので、ワインだ。夕ご飯をスタッフの人たちと食べてくるって、朝出る時に言っていたので、今日は簡単にうどんをネギと一緒に卵とじにして食べた。なので、怒られる事は無い。うん、ちゃんと、LINEで画像も送ったよ?


 『君の声で、君のすべてで…』、昔から好きだった一曲で、ロックがメインのユニット『surface』さんのバラード曲だ。男性目線で、彼女が好き過ぎて、ちょっと暴走気味の男性の気持ちを歌った歌詞だ。この曲、私の誕生日に近い日に発売され嬉しかった思い出がある。嘉くんの誕生日の一日前でもある。そして、高校の文化祭で、(あらた)くんにお願いして、歌わせてもらった。その二人はボーカルとギターのユニットで、初期の嘉くんと遥くんの様な感じだ。新くんもかっこいいギターを弾けるって、喜んでくれたので、あの時は、私の希望を言って良かった。


 小さく口ずさんだ矢先に、LINEのメッセージが届いた。時計を見ると九時を回っていて、嘉くんのこれから帰ります、のメッセージだった。仕事が長引いた様でその分、夕食も遅くなった様だ。朝に、そう告げて行ったので、夕ご飯は準備していない。

 まぁ、冷蔵庫の中身と相談すれば何か作れはするんだけれど、今回は食べてくる事を選択した様だ。最近は、きちんと、仕事の付き合いもしていて、遥くんなんて、昔の嘉くんからは、ずいぶん変わったと驚いていた。


 歌いたくなったのは、今日がその『君の声で、君のすべてで…』の発売日だった日だからだ。そして、その人たちの曲、『素直な虹』に感銘を受けて出来た曲が私の『虹』だからだ。その人たちのは、ちょっと切ない別れ歌なんだけど、私の方は違う。別れたけれど前向きに進む女性目線の曲だ。返歌って言ったらかなり古風なんだけど、なんか、そう言う事こっそり試して見たかった。更に返事は返ってくる事はない。それは、私にとって、自己満足だ。その事は、まだ、嘉くんには言えていない。どこかのタイミングで言えると良いな。



 続けて、その『素直な虹』を口ずさむ、その途中で、嘉くんが帰って来た。いつの間にか、時間にして、十五分ぐらいの時間が経っていた様だ。『君の声で、君のすべてで…』『その先にあるもの』『素直な虹』の三曲ほど、彼らの曲を歌っていた。歌う私に向かって、人差し指を口元に当てて、これは、このまま歌ってって言っている。聞かれるのは、少し恥ずかしいけれど、私はこのまま歌を続ける。滅多に歌わない、と言うかこの歌だけは嘉くんの前では初めて歌ったかもしれない。歌い終わり、充足感と高揚感の余韻を残しながら、歌い終わると、嘉くんが小さく拍手してくれた。



「この曲は、あの人たちの? 麻衣が高校の文化祭で歌ったセトリに入っていた人たちの歌」

「うん、すごくヒットした曲ではないし、高校の時に歌った曲の方がヒットした。でも、この歌が好きなんだ。優しくて、切なくて、でもちょっとだけ前向きになれるそんな別れ歌。そんな、別れ歌なんてきっと、この人たち以外に歌える人いないよね、って思うんだ、嘉くんは会った事ある?」

「いや、ジャンルも少し違うし、彼ら、俺たちのデビュー後には解散していたよね。また、活動再開した様だけど、会わないね。なので、会った事はないかな、麻衣も?」

「うん、ここ五年ぐらいだから、私が公に出る様になったのって。だから、憧れは憧れのまま、こうして、歌っているだけで幸せなんです。今日はね、その人たちの私が一番好きな曲が発売された日だったから、歌ってたの。もちろん、明日は嘉くんの誕生日だから、嘉くんの曲で私が好きな曲歌うよ」

「麻衣の好きな曲なんだ、そこは」



 そう言って、嘉くんは笑う。一番売れた曲でも、有名な曲でもなく私が好きな曲、それが何かはもう知られている。『my(マイ) way(ウェイ)』に決まっている。ギターも引けるしね。これは、遥くんのギターがゆっくりしたテンポなので私でも弾ける曲の一つだ。『夢のカタチ』は遥くんはギター弾いていないので、メインになるところもないので、私でも弾ける。こっちのギターは中山くんでこの曲はドラムが入らない。



「麻衣って、本当に虹が好きだよね」

「好きだよ、小さい頃から、空を見上げて探すのは、虹だったからね。そして、嘉くんは星だね」

「やっぱり、気付くもの?」

「レーゲンボーゲンには、星を歌った歌はそんなに多くないけれど、嘉くんの歌はそうじゃない。ソロアルバムもだし、レーゲンボーゲンのアルバムに入っていた、嘉くんのソロは、星の歌があったから、そして、星に詳しかったから、そうじゃないかなって思った」

「麻衣にもあるよね、星の歌、『星の夜想曲』と『アンタレス』も? 俺たちの星座の一等星だよね」

「うん、『星の夜想曲』は私の作詞作曲ではないけれどね。『アンタレス』は蠍座の一等星、有名だから私でも分かる」

「夜に、空を見上げて探す星は、いつも、きらきらしていた。それだけで、ワクワクして、いつまでも見ていたよ。夏は特にそうだった。賢人も星が好きで一緒に空を見上げて、自由研究はいつも星についてだったね」

「情景が思い浮かぶね」



『星に願いを』を嘉くんが突然、口ずさむ。英語の曲だ。この曲は知っている。嘉くんは星に何を願っていたのだろう。この季節、流星群が空を流れる。きらきらと。私の願いは空に届くと良いな。みんなの幸せを星に願うのだった。



 surfaceの『君の声で君のすべてで…』と『素直な虹』『その先にあるもの』は全部、私が好きな曲です。彼らの有名曲は『さぁ』とかでしょうか。

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