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第2話 婚約者、パートナーを断ってくる。鬼畜

「とりあえず学園のパーティもあったわよね?」


ナタリーが聞いた。


思い出してメリンダは憂鬱(ゆううつ)になった。



この学園は貴族の社交界の続きのようなもの。

王都にあって、入学は自由だったが、ほとんどが貴族か、貴族も一目置かざるを得ないほど裕福な商家の子弟ばかり。


従って、社交界の縮図というか、ダンスパーティもあったし、学園祭もあったりする。


学年ごとのミニダンスパーティは、他学年も参加できて、良いご縁を結びたいという家々の下心が透けて見える。


高位貴族になればなるほど、その手には乗るかと既に婚約を決めてから入学する者が増えるのだが。



ルイスの家は由緒正しい公爵家ではあったが、ここ数代は当主の突然の死去や、お家騒動のゴタゴタなどで、やや経済的に苦しい局面に立っていた。


ルイスの代は、父が美貌すぎて結婚が遅れに遅れ、四十代半ばにしてようやく年貢の納め時と結婚したが、女性問題で夫婦喧嘩が絶えず、母はルイスを産んですぐに実家の伯爵家へ戻ってしまった。完全に、父親の公爵の浮気が原因である。

従って、莫大な慰謝料を払わねばならず、余計に公爵家の屋台骨を()るがした。


さらに、公爵はその後、病に倒れ、半身不随に。


流石にザマアミロとまでは、言われなかったが、大体、似たようなことを言われた。


当時、ルイスはまだ十歳。

当然、領地経営などできる年ではない。


そこへ颯爽(さっそう)と現れたのが、母の公爵夫人だった。

イライラする古参の執事をよそに贅沢三昧(なにしろ籍はまだ残っていたから)、その後、どこかで見染めた若い貴族と再婚した。


「再婚なされば、公爵家の人間ではありません」


「私はルイスの母ですよ?」


見下げ果てたように、述べる元公爵夫人に対抗しきれなかった執事のセバスは、親族にあたる某子爵家に助けを求めた。



その結果、結ばれた婚約者がメリンダである。


メリンダの子爵家は裕福だった。


また、才覚があった。


元公爵夫人の出入りは制限され、金銭の支払いには監視が入った。


「その首飾りはルイス様と何の関係がございますので?」


メリンダの父の子爵がサックリ尋ねる。


「……婚約者のメリンダ嬢へのプレゼントよ!」


「メリンダはまだ十歳。そのようなものをつけるにはまだ早すぎます」


「将来つければいいわ」


「そこまでおっしゃるなら、いただきます」


夫人は眼光鋭く、子爵を(にら)んだ。


「私の元に送り届けてちょうだい。メリンダ嬢にお渡しするわ」


「ルイスから様のプレゼントでございましょう? ルイス様のところへ届くよう手配いたします」


「わからない人ね。私がプレゼントするのよ?」


子爵はがっちり宝石をつかんだまま、離さなかった。


「左様でございますか。では、男爵家のお支払いになるかと存じます。私はこれにて失礼いたします」




色々あって、婚約は継続し、ルイスはそれなりに子爵に(なつ)いた。


そしてやや身分違いなこの婚約は、よくわからないまま、継続し現在に至っている。


「事情はどこの家にもあるわよね」


陣頭に立って、私設応援団を指揮する公爵家御曹司ルイスをぼんやり遠くから眺めながら、メリンダは呟いた。


背が高く、美貌を誇った父に似て、学園男子のイケメン格付けでも常にトップテン内にランクインする彼だったが、どういうわけか結婚したいメンズ格付けでは常にランク外だった。


一応、このランキングはけっこう微に入り細にいっていて、五十位までランクがあるので、念のため。(五十位にも入らなかったと言う意味である)


メリンダの個人的感想では、このランキングは妥当である。


他の女に夢中な男なんか、男ではない。地球外生物だ。この世に存在していないも同然だ。従って……


「ダンスパーティは……」


これまで同様、壁の花確定だった。

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