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猫の歌

作者: 豆々駄

 myau.myau.

(ほらほらまたはじまった)

 △△△△△△△

(愛して愛してもっともっと)

 △△△△△△△

(苦しいのお願いだから)

 △△△△△△△

(死にたい、猫になりたい)

 myau

(馬鹿言うなよ)

 myau

(あんたたちは素晴らしい才能を持ってるんだろ?)


 らりらりる ラリらりる

 リリラリるりら シャラるりら


 nmyau

(大丈夫さ)

 nmyau

(僕らが言ってることなんて彼らには分からないから)




 *




 黄色い瞳をした黒猫が言う。

「キミいがいをアイせない」


 心の美しい人間のリジーナ。

 黒猫を抱いて優しく諭す。

「魚を捕まえるのは誰かしら?あなたたちにお家を作ってくれたのは?私は皆が愛おしい」


 碧の瞳の白猫が言う。

「ヒトをアイせないのはツミなのかな?」


 白猫を撫でて優しく語る。

「罪ではないわ。けれどとても悲しいこと。愛は素直。底はあるけれど頂はない。できることなら、いつか月に帰るその日まで私は皆に愛に満たされていてほしい」


 橙色の瞳の灰猫。

「アイはかえってくるの」


 灰猫に優しく笑いかける。

「えぇ、必ず。あなたたちが私に愛を返してくれたように。だって神様は運命を与えてくださった。甘い口付け。愛を返す必要がないのなら口付けなんていらない、そうでしょう?」




 *




 そう言ったでしょ?リジーナ。

 君はひどく素直で、そして残酷にもお人好しとして生まれてしまった。

 ねーぇ、リジーナ。聞いてよ。

 君の姉が僕らを殴る。

 ボールのように蹴って、ゴミのように投げる。

 しまいには鬱陶しいから死んでしまえなんて言うんだよ。


 僕は歌うよ。低俗な歌。




 らりrariる ラリらりる

 リリラリruりら シャラるrira


 myau

(ヒトのことなど知りもしない)

 nmyau

(ヒトのことなど知りたくない)




 *




 愛は返ってくるって、何でそう思っちゃったの?

 あなたは姉に裏切られた。

 王子に見初められたあなたの代わりに結婚式にでるんだって。

 白いベールなんてつけちゃって。

 あなたの母親も何も言わない。

 王子も全く気づかない。


 代わりに歌うよ。真実の歌。




 myau

(王子様は誰と結婚するの?)

 myau

(ベールをあげれば全てが分かる)

 myau

(本当の花嫁は屋根裏で)

 myau

(ここにいるのはニセモノさ)


 rariラリru ラリraりる

 りriraりruりら シャラrurira


 nmyau

(あーあ。どうにも嫌な話だね)

 myau

(手を取り合って踊ろうか)

 myau

(笑って歌って果てようか)

 myau

(夜が明けそうにないけれど)




 *




 王子は気づいたよ。

 姉にお前は醜い奴だって非難してた。

 顔も醜ければ心も醜いのかって。

 リジーナの容姿に惹かれて性格すら知らない男が何言ってんだかって白猫は怒ってた。

 ごめんね、リジーナが嫌いなわけじゃない。

 でも愛って何なんだろうね。

 民衆の前で非難された姉は誰からも愛されなくなったよ。

 姉が歌ってた。


 愛して愛してもっと

 苦しいのお願い助けて

 私を強く愛して抱きしめて

 嗚呼 猫になりたい

 私はただ愛されたかっただけなのに



 ねぇ、猫は人間に愛されているの?

 自分たちは愛を返さないといけないの?

 少しだけ、ほんの少しだけ思う。

 愛は不公平だなって。

 見えない愛の大きさをさ、どうやって測ればいいの?


 やっぱり自分たちはリジーナしか愛せない。

 でもリジーナは王子にも愛をあげるんでしょ。

 ほら、こんな身勝手な愛がどうやったら満たされるの?

 リジーナが嫌いなわけじゃないよ。

 でも歌わずにはいられない。



 rariraリru ラリrariru

 りrirariruりra syaラrurira


 myau

(ひとりぼっち、そうでしょ?)

 myau

(きっと、ずっと)

 myau

(愛し方なんて知らない)

 myau

(誰も分からないんだ)




『嗚呼、なんて…』なんて、

 嘆くのは溶ける花を摘むのと同じようで。

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