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綾音さんと補修ラーメン

 先日やった小テストの点数が良くなかったので、補修のプリントを渡されたのだけれど。補修を受けなきゃいけないってことは、その程度の英語力しか持ち合わせていないって事で。

 殆ど空白のまま唸っていたら、綾音さんが教えようかと声を掛けてきた。なんて優しいんだろうか綾音さん。

「私週番だから、教室の鍵閉めなきゃいけないの。…このままじゃ、下校時刻過ぎちゃうでしょ」

 綾音さんはちょっと迷惑そうである。言われて周りをみれば、他に生徒が残っていなかった。皆終わって帰ったのか、凄いな。


 隣の席の綾音さんは英語が得意らしい。


 スラスラと英文を読み上げて、意味を教えてくれる。ただまあ答え迄は教えてくれないようだ。発音が綺麗なので、帰国子女だったりしてと聞いてみると、困ったような、何か言いたげな変な顔をした後で、恥ずかしそうに教えてくれた。

「英会話、習ってるから」

 おお凄い。予備校とか通ってる生徒はそれなりにいるみたいだけど、受験とか関係なく勉強事をしてるのは素直に凄いなと思う。

「綾音さんは留学したりするの?」

「う、うん。まあちょっと考えたことあるかなってくらいだけど」

 どこの国に行きたいのか聞いてみたら、イギリスとかフランスとかだそうだ。もしくはロシアだって。

「フランスとかロシアって留学できるんだ」

「え、そこからなの?」

 留学といえば朧げながらもアメリカというイメージしかない。綾音さんはちょっと呆れた顔をしていた。

 まあ自分はそういう事に縁はなさそうなので、日本語話せれば充分だもんね。

「…そういうのは、現国で補講受けない人が言える言葉だと思う」

 何故それを知っているんだ、綾音さん。学校の勉強は苦手なんだよね。学校は嫌いじゃないのだけど。

 ついでに英語だけじゃなくって、他の補講用プリントも教えてもらおうかな。

「…胡桃くん、この前のテストで赤点だったのって…」

「赤点は三教科かな。あとはギリギリ回避したから」

「プリント出されてる時点で回避は出来てないんじゃ」

 ほぼ全教科のプリントを見て、綾音さんに授業は真面目に受けなさいと怒られてしまった。今日は授業中に寝てないはずだけど。

 綾音さんに手伝ってもらいながら、なんとかプリントを進めていると、先生が教室に入ってきた。

「なんだ胡桃、めずらしく真面目にやってたか」

 めずらしいとは失礼な。

 先生は綾音さんの存在に気が付いて、面倒見てくれてありがとうとお礼を言っていた。先生がそんなに感謝する程、不真面目だっただろうか。

 綾音さんからの視線がちょっと痛い。

「下校時刻はとっくに過ぎてるから、気をつけて帰るんだぞ」

 先生に教室を追い出され、綾音さんと二人で昇降口へ向かう。そこでようやく、綾音さんが早く帰りたかったのを思い出して、申し訳ない気持ちでいっぱいになった。

「ごめん、長々と付き合わせちゃって」

 綾音さんは別に構わないけどと、気にした様子もない。綾音さんの家まで送っていく事にする。流石に暗くなってきたので、一人で帰すのは悪いし。


 綾音さんの家への帰り道には商店街があった。揚げたてのコロッケを売ってるお肉屋さんとか、焼鳥の匂いとかカレーとかもう、誘惑の多い地帯である。

 お腹空いたなとラーメン屋の前を通り掛かったところで、綾音さんのお腹がぐううと鳴った。

「寄り道してかない?」

「えっ、…でも今月、お小遣いあんまり残ってないから…」

「今日のお礼にご馳走するから」

 綾音さんの背中を押して店内に入る。美味しそうな匂いが広がっていて堪らない。

 食券制だったので特製ラーメンを二人前選ぶ。ついでに味玉を追加しちゃおう。

 どうやら綾音さんとラーメン屋の店長とは顔見知りらしい。席につくと綾音ちゃんの彼氏かとからかってきた。綾音さんは慌てて、学校の友達だからと言っている。

「ははは、焼豚サービスでのせたげるから」

 店長は笑いながら綾音さんを宥めている。揶揄われたからなのかプンスカしながらも、綾音さんは席に座った。

「店長さんはあんなだけど、…ここ美味しいんだよ」

 たまに家族で食べに来るんだそうな。綾音さんご贔屓のお店とは、味に期待大だな。

「…ねえ、胡桃くんは。…学校好きなの?」

 そこから疑問になるわけ。学校は好きなんだけどな、まあ病欠以外でも休んでたりするけども。

 最近は綾音さんが構ってくれるから、楽しいし。

「な、なんて事いうのよ、もう」

 出てきたラーメンはボリューム満点で、綾音さんの言う通り美味しかった。ちょっとニンニクが効いてて、癖になりそうな味だ。

 先程まで怒っていたのに、綾音さんは上機嫌でラーメンを啜っている。美味しそうに食べる綾音さんは可愛いな。

「替え玉頼む?」

「……うん」

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