彼女の友達の関係性が謎すぎる
夏休み前に付き合うことになった、中学時代からの友人兼彼女の誘いで、今度海に行くメンバーと遊ぶ事になった。
自分以外は同じ高校の同じクラスだっていうので緊張していったら、イケメンが居た。しかも爽やか系好青年。
チビで陰キャな自分には眩しすぎる存在だ。自分じゃなくってこういう奴との方が、あいつとも釣り合うんじゃないだろうか。
ちょっといじけてると、あいつがイケメン君と笑顔で話してるのが目に入って、さらにいじけた。
「綾音と胡桃はまだかな」
「映画観てるって連絡来てたから、そろそろじゃないかな」
まだ待ち合わせ時間にはちょっと早かったから、遅刻ではない。しかし映画観てるって、早めに来て遊んでるのか、その二人。めちゃくちゃ仲良しだな。
綾音というのはあいつから名前がよく出るので、同じクラスの女友達だというのは知ってる。
「あ、来た来た、綾音! こっちこっち」
視線を向けてみると、なんか不良っぽい茶髪ピアスの男と、ポチャっとした目つきの悪いストレートな黒髪の女の子が。しかもなんか顔赤くないか、あの二人。
イケメン君が茶髪ピアスに話しかけてるけど、厳つい不良というよりは間延びした話し方でどこかボヤッとしているように見える。
すっごく嬉しそうに、綾音さんに水着選んでもらったとか報告してるけど。しかもイケメン君はよかったねと、慈愛に満ちた目で見てるし。何、お前らの関係性はなんなの。
というか綾音さんと茶髪ピアスはデートしてきたのか。指摘すると真っ赤になって綾音さんに否定されてしまったが、どうみたってデートしてるじゃないか。
否定されて残念そうにしてる茶髪ピアスの肩を、イケメン君が叩いてた。仲良いな、お前ら。
「あ、胡桃くんとは家が近所っていうか、小学校が一緒だったから」
幼馴染なのかと納得しながら言うと、イケメン君は言い淀んで茶髪ピアスを見た。え、何、知らない地雷を踏んじゃったの。もしかして何か事情があって疎遠になった系なの。
「幼馴染、うーん。小学校の時、おんなじ登校班だったんだよね。それくらいの付き合いだったから。高校で同じクラスになった時はびっくりしたけど」
「そうなの?」
そこでなんで綾音さんとあいつが驚くんだ。お前ら同じクラスなのに知らなかったのか。
「進藤君くらいしか胡桃と話しないし。学校あんまり来なくてその見た目、確実に不良じゃん。話してみたら、超天然っぽくて驚きだよ」
おい、流石に言い過ぎだぞと思ったけど、茶髪ピアスは気にした様子もなく、ぼっちだったもんねぇと笑ってる。怒らないんだ、ぼっちなのに堂々としすぎて驚きだ。
「ねーちゃんが高校通うなら茶髪にしていけば良いって言ってねー。あと友達が、舐められないようにピアスつけてけって進級祝いにくれたから」
逆効果じゃないかそれ。イケメン君も似合ってるよねって笑い事じゃないと思う。それを綾音さんが突っ込んでる。よく言った、綾音さん。
「でもせっかく友達のくれたものだし」
しょんぼりとする顔に、綾音さんがならそれなら仕方ないかと掌くるりした。綾音さん、負けるな。
「ね、面白いっしょ」
何が何だかわからない人間関係の渦に巻き込んだあいつが、ニマニマと笑ってた。




