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綾音さんと金魚掬い

 いっぱいドーナツを食べれて幸せそうな綾音さんは、お腹をなでなでしてた。美味しかったもんね、ドーナツ。

「うん、美味しかった。…でも、食べ過ぎちゃった」

「美味しかったならそれで良いじゃん」

「そうかな」

「うん」

「前にお姉ちゃんが買ってきてくれたのも、ここのドーナツなんだよね」

 おおいつぞやの、幸せ地獄か。綾音さんがスペシャルなパンを我慢をした切っ掛けの、お姉さんのお土産ドーナツ。

「あの時食べたのは限定品だったのかな。チョコクランチが掛かってるクリームドーナツ、美味しかったんだけど」

 ドーナツの種類はいっぱいあったけど、そういうのはなかったな。

 夏休みが終わったら多分メニューも変わるだろうし。また来ようと言ったら、綾音さんは力強く頷いた。

「次までにブラックコーヒー飲めるようになる」

 ふんすと決意してるけど、多分無理だろうな。次はココアかホットミルクティとか頼もうと思う。


 ギャルさん達との待ち合わせまで時間があるので、ぶらぶらと見て回ることにした。

 目についたペットショップで子犬と子猫を見て和む。

 綾音さんは犬派なんだって。でもお姉さんがアレルギー持ってるから飼えないそうだ。アレルギーなら仕方ないけど、将来結婚とかして家を出たら犬を飼いたいと言っていた。

 結婚しなくとも一人暮らししても飼えるんじゃなかろうか。

「……私一人だったら、散歩とかサボっちゃいそうで…、あと食べさせ過ぎるかもしれないし…、それから」

 殆ど何も出来そうにない。綾音さん面倒見いいのに、いや面倒見良過ぎるからなのか。お世話を焼き過ぎるのか。

「胡桃くんの家は何か飼ってるの?」

「金魚のエリザベス。お祭りの夜店でねーちゃんがとってきたの」

 随分と長生きしてるものだ、エリザベス。猫でいえば猫又くらいになってるのではないかな。

 でも可愛いからエリザベスが妖怪でも良いや。

 金魚の餌を買おうとレジへ並ぶと、デカデカと花火大会のポスターが目に入る。綾音さんが金魚掬いやってる姿を想像すると、なんか良いかもと思ってしまった。

 綾音さんは花火大会とか行くのかな。

「その日は家族でおばあちゃん家に行くから」

 それは仕方ない。綾音さんと金魚の組み合わせを見たいなと思ったけども。綾音さんと一緒に金魚掬いとかやりたかったんだけど。

 そろそろエリザベスにも、新しい仲間を増やしてあげたいし。

 ペットショップで買っても良いんだけど。金魚掬いの金魚は、なんとなくあのお祭りの雰囲気を家にも持ち帰れるような気がして、そっちのが好きなんだよね。

「金魚掬いやりたいの?」

「うん」

「うちの近所の商店街でも、ちょっとしたお祭りやるよ。…多分、金魚掬いも出ると思うけど」

 おおそれは行きたい。

 日にちを聞いたら綾音さんも予定ないって言うので、行く約束をした。綾音さんとお祭り楽しみだな。


「……あれ、私一緒に行く事になってる?」

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