綾音さんとブラックコーヒー
目的の水着も買えて一安心すると、急にお腹が空いてきた。
綾音さんもなんだか疲れてるみたいだし、ここは一つ栄養補給しよう。今日は午後からギャルさん達と遊ぶし。
何か食べたいと言うと、綾音さんがフードコートに行ってみよと案内してくれた。のだけど、その途中で、甘い匂いに足を止めてしまった。
「ただいまドーナツの食べ放題やってまーす。この夏の期間限定でーす。甘いのからお食事系のドーナツ、各種揃ってますよー」
テイクアウトも出来るドーナツ屋さんの入り口で、店員さんが呼び込みをやっていた。綾音さんが凝視してるけど、ちょっと体を揺らしてフードコートはあっちと別方向を指差した。
「今、夏限定爽やか生クリームフルーツドーナツ、出来上がりましたー!」
「うっ…ぐっ…」
ご丁寧に店員さんはベルを鳴らして、ドーナツの出来上がりをお知らせしてくれている。早く行こうと言いつつ、綾音さんの足は動いてない。
ぶつぶつと綾音さんから聞こえてくる。なになに、今日はまだ色々と食べる事があるだろうから、ここでカロリーをとるわけにはいかないとかなんとか。
カロリー問題、まだ抱えていたのか、綾音さん。
「カロリーオフの豆乳ドーナツ、出来上がりましたー!!」
「はうっ!?」
魔性の囁きカロリーオフが。
「綾音さん」
「な、なに!?」
「ドーナツは好き?」
しばらく迷った後で、コクリと頷いた。うん、知ってた。
買い物に付き合ってくれたお礼に奢らせてと言ったら、最初は遠慮してたんだけど。
「はーい、特盛クリームサンドドーナツ、出来上がりましたー!!!」
気が付いたらテーブルの上には、お皿いっぱいのドーナツが並んでた。なんか綾音さんは最後の抵抗っぽく、ブラックのアイスコーヒーを頼んでたけど。コーヒー飲めるのだろうか。飲んでるの見た事ないけど。
幸せそうにドーナツをパクついてる綾音さんだったが、アイスコーヒーを飲んで撃沈してた。やっぱり。
「ううう、く、クリームの甘さで中和すれば、きっとなんとか」
無理な気がする。どう見たって無理な気がする。
なので自分のロイヤルアイスミルクティと交換した。なんとなく無理な気がしてたので、綾音さんが好きそうなのを頼んでおいたのだ。あとコーヒー飲めるし。
ロイヤルアイスミルクティには生クリームも乗ってるので、綾音さんはその魅力に滑落してた。
「うぅぅ、美味しい」
最後の悪あがきに豆乳ドーナツ多めに食べてたけど、他にも色々とドーナツ食べてるから、プラスにしかならないと思う。




