綾音さんと水着
綾音さんと買い物に行く日。楽しみ過ぎて眠れなかったせいで、危うく寝過ごすところだった。
慌てて着替えつつ、金魚のエリザベスに餌を上げた。自分はご飯抜きでも良いけど、エリザベスにご飯抜きはダメだ。
ぷくぷくと口を動かして食べてる様子がやっぱり綾音さんを思い起こさせて、可愛いなあ。見て和んでると、姉から時間大丈夫なのと指摘されてしまった。危ない。
電車で行った先、待ち合わせ場所にて綾音さんを探すと、おお発見。遠目からでも綾音さんどこにいるかわかるなぁ、なんでだろ。和み可愛いからかな。
綾音さんは買い物に来て慣れてるからなのか、迷う事なく歩いて行く。さすが綾音さん。
「この時期は、水着売り場って拡大してるから。ほら、あそこ」
指さした先には、色とりどりの大量の水着が。あの中から選ぶの、どうすれば良いんだろう。
「え、私も男の人の水着ってそんなにわからないから」
男でもわからない。こういう時は店員さんに助力を願おう。一人でゆっくりみたい時もあるけど、なんの知識もない時はプロの力が必要だ。
ちょうど声をかけてくれた店員さんに、海に行くので水着見に来た事を話すと、ニコニコとした顔で対応してくれた。接客のプロだ。色々と種類がある中で、綾音さんが真剣にどれが似合うか見てくれたので、とてもありがたい。拝んでおこう。
「そうそう、今は男女で同じ柄とかもあるんですよ」
ほらと店員さんが持ってきてくれたのは、綾音さんがこれがいいんじゃないと選んでくれたのと、同じ柄の女性用水着。
「うーん、でも綾音さんには赤とかピンクが似合いそう。あ、白も可愛いかも」
「色違いパターンもありますよ」
「ちょ、ちょ、ちょっと…!」
「あ、コレなんて可愛いよ、綾音さん」
店員さんが出してきた水着は、下の部分がひらひらとしたスカートみたいになっていた。正しく綾音さんに似合いそう。
「いや、でも、く、胡桃くん。これじゃ私たちお揃いになっちゃう…」
お揃いじゃダメなのだろうか。可愛いのに。
仕方ない、せっかく綾音さんが選んでくれたけど、自分のは違うのにしよう。
「え、そうじゃなくってね! それは絶対胡桃くんに似合うから、それは買って! …え、私、でも、そのこれって…、いや胡桃くんとお揃いが嫌ってわけじゃないから。そのむしろ私とお揃いでいいのっていうか…、かかかか、買うから、買います! 買います!!」
口をパクパクさせてる綾音さん、餌を食べてる時のエリザベスみたいで可愛いなあ。




