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アクアリネアへようこそ  作者: みるくてぃー
終章 未来への道筋
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第102話 私が真犯人!?

 少し状況を整理しよう。

 レイヴン元公子が公王様を殺害しようとした事件は、既にトワイライト公国の中では周知の事実。その上で公妃様がレイヴン公子に毒のナイフを渡した真犯人を特定すべく、公王様は未だ毒に侵され生死の狭間を彷徨っていると公表された。

 私は勝手に未だ帰れないのは、公王様は実は既に助かっており、それを外部へ漏らさない為の処置だと思っていたが、実はレイブン公子に毒のナイフを渡したのは私で、突き詰めれば裏で操っているのはアレク公子ではないのかと、そんな噂が原因だったのだという。


 いやいや、なによその真犯人に都合がいいだけのニセ情報は。


「それじゃ私が帰れない本当の理由は……」

「表向きは取り調べ中のうえ、身柄を抑えている。って事になっているわ」

「……」

 今更ながら自分の呑気さを反省しなくてはならないだろう。

 私のせいでアレクの足を引っ張るどころか、反乱の意思ありとして窮地に立たせてしまっている。

 どうやらアレクが私が治めるアクア領にいた事は、既に家臣たちにも知れ渡っているらしく、レイヴン元公子の低迷さを狙い、私と共謀してこの国を乗っ取ろうと策略しているのでは? と、ありもしないニセの噂が広まっているらしい。


「勿論私も陛下もそんな噂を信じてはいないわ。だけどタイミングよく貴女がここに居て、この公城で事件が起こってしまったの。その事実から何を連想させるのか、貴女ならわかるでしょ?」

 この城の中で私だけは完全な部外者だ。しかも私は知らなかったとはいえ、公国の第二公子であるアレクと密接な関係を築いていた。

 実際は雇い主と契約社員の間柄だったとはいえ、遠くの地で聞いていた者たちにとっては関係のない話だろう。当然私とアレクを嵌めようとしている者にとっては。


「お姉様も御存じですよね? お兄様があまり家臣たちからよく思われていない事を」

「えぇ、だから幼い頃からよく城を空けていたのよね」

 この前セレスから聞いた話では母親が平民だった事から、アレクの物心がつく頃には命の危険を感じるようになり、旅の商人に紛れて各地を回っていたのだという話だった。

 結果的にそれで私と幼い頃に出会う事になったのよね。

「最近はレイヴン義兄様の素行の悪さから、アレクお兄様を次期公王に、って声も上がっているんですが、正直その中の何人が本気でおっしゃっているのかすら、わからない状況で……」

「まぁ、いきなりは難しいわよね」

 今は周りの波に乗り遅れてはいけないという雰囲気だけで、アレクを推している家臣も中にはいるだろう。

 現状アレクを次期公王に、という話も単純にレイヴンでは王は務まらないとの消去法に過ぎず、本音を語らせれば王族の血を引いた別の家系から、なんて考えの人間もいるかもしれない。


 もし今回の事件を利用して、アレクも一緒に排除しようと考えた者がいたとすれば? セレスはアレクの実の妹という点から、策謀に加担していたとか理由をつければ簡単に排除も出来るだろうし、年頃の男児がいれば無理やり結婚させて国を乗っ取る、なんて事もできるだろう。

 公王様も生死を彷徨っている事になっている訳だし、仮に助かったとしても、今からじゃ全身に広がってしまった毒の後遺症で、そう簡単には復帰ができない。


 …………あぁ、そういう事ね。

 先ほど公妃様はこうおっしゃられた。『恐らく今日明日辺りに動きがある筈だからもう暫く我慢して頂戴』と。そして今日は陛下がヨルムンガンドの毒に倒れてから6日目。本来なら明日明後日には毒が全身に周り、命を落とされているという状況に差し迫っている。

 つまり陛下に残されたタイムリミットは僅かしか残されてはおらず、救うには今日明日で解毒薬を用意しなければという意味だ。


「一つお伺いしてもいいですか?」

「何かしら?」

「公妃様は既に黒幕が誰かをわかっていらっしゃいますよね? ただ今は証拠がないから相手が動くのを待ち続けている」

 これがもし全て黒幕が仕掛けた罠だとすれば、私がここに来たのだって計画の一部だろう。そうでなければアレクを糾弾する理由も作れず、単純にレイヴンの排除しか意味をなさない。

 そして私をここへと呼んだのは公妃様ご本人。

 さすがに地方の田舎領主を公妃様が知っていたとはおもえないので、恐らく私を推薦した人間が必ずいるはずだ。


「流石ね。貴女の推察どおり、黒幕の検討は既についてあるわ」

 やっぱり………。

 如何に私の事を信じてくださっているとはいえ、ここまで自由にさせてもらえる訳がないと思ったのだ。

 私は過ごしていた場所は言わば公王様と公妃様が暮らすプライベートエリア。公子であるアレクは勿論、トワイライトの家臣ですらそう簡単には立ち入れない場所なのだ。そんなところで行動範囲は限られているとはいえ、かなり自由な生活が認めらていた。

 セレスはまぁ、日頃から人知れず公妃様をお茶を楽しんでいたという事なので、知らされていない裏のルートでも存在しているのだろう。


「その真犯人、お聞きしてもよろしいでしょうか?」

「えぇいいわよ。ただあくまでもまだ検討している段階だと理解してね」

 それだけ口にすると公妃様は一息をつき、一人の家臣の名を教えてくださる。

「私と陛下が黒幕だと考えているのはドルジェ卿という人物。貴女の事を私に推薦し、アレクが貴女の治める領地に出入りしていたと噂を流した本人。そして陛下にとっては従兄弟にあたる人物よ」


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