私の女友達はモテる。
勢いで書いた作品です。甘い目で見てください。
私の女友達は、モテる子ばっか。
そして、
私の男友達は、ヘタレばっか。
「実は俺、清水のこと好きでさ。協力してくんない?」
「…志帆が好きなの?あんたには無理じゃない?」
「ひどっ!まだわかんないだろ!それとも、清水って、好きな人、いるのかな…。」
「今はいないと思うけど…。」
「じゃあ!」
「でも!協力するとしても、情報流すだけだから。アプローチは自分でしてよね。」
「助かる!ありがとミナミン!」
「はいはい。くっついたら何かおごってよ。」
男友達からの呼び出しはいつも、告白ではなく、協力願い。
確かに志帆可愛いけどさ。人気のない所に呼び出されたら、ちょっとは期待するじゃん?
「ミナミン!清水に誕プレあげたら、すげー喜んでくれた!ありがとー!」
「はいはい、よかったねー。」
「扱い雑じゃない!?…まあいいや。あのさ、それで、今度デート誘いたいんだけど、何がいいかな?」
「それくらい自分で考えろ!」
高校生だし。青春とか少し憧れる部分もあるし。容姿も学力も運動神経も愛想も、平均よりは上だと思う。ヘタレに振りまく愛想はないけど。
私の女友達が可愛いのは認める。見た目も中身も。モテるのはわかる。私だって、男だったらああいう子と付き合いたいし。
「ねえミナミン!実はさ、山田とデートしてきた!」
「へえ、楽しかったっぽいね。」
「うん!なんか思ってたより紳士っていうか、優しくて。人混みで庇ってくれたときとか、キュンときちゃった!」
「…好きになった、とか?」
「…かも。」
私は女の子を見る目は確かだ。女友達にハズレは一切ない。いい子ばっか。そして、私と気が合う。
報われない恋よりかは、両想いになるとわかっている恋をしてほしい。幸せになってほしい。だから、つい協力してしまう。
男友達も、ヘタレではあるけど、悪いやつはいないから。友達同士でくっついてくれた方が、私としては安心だし。仲裁させられる事が多いのは大変だけど。
「焦るな!テスト期間終わって、もう一回デートしてからの方が絶対いいよ!今は勉強に集中!バカは嫌われるよ!」
「うう、わかってるけど…。早く言いたい!抑えられない!」
「でも、こんなタイミングで、もし万が一付き合えたとしても、テストあるんだから、連絡もろくにとれないでしょ。」
「確かに!」
「テスト終わって、お疲れ様会でもすれば?誘いやすいんじゃない?」
「そうだな!ありがと、ミナミン!」
おせっかいだな、とは思う。でも、驚くほどに告白成功率は高い。というか、10割なんだよね。私が協力したカップルは、必ず付き合っている。計4組。山田と志帆がくっつけば、5組になるな。
私のおかげかは正直わかんないけど、4組とも付き合いは続いている。別れなかったのは、確実に私のおかげ。喧嘩やすれ違いの仲裁、頑張ったもん。
「あの、俺達、付き合うことになりました。」
「おーマジか!なんかイイカンジだと思ってたけど!山田と清水が!」
「おめでとー!お似合いだよー!」
「ミナミン!山田に協力してくれてたんだってね。ありがと。」
「どういたしまして。志帆が幸せそうで、よかったよ。」
「ありがとうミナミン!マジ女神だわ!」
「山田、調子乗んな!志帆泣かせたら、許さないからね!」
友達が幸せそうだと、私も嬉しい。よかった、と思える。
でも、羨ましく感じてしまう。私もあんな風に、想われたい。
告白かと思いきや、協力願いでした。っていうのは、もう5回も経験済みな訳で。少し諦めモード。まだ高校生だけど、もう高校生だから。
「相変わらずのおせっかいだな、南。」
「うるさい。面倒見がいいと言ってくださいー。」
「ホント、良すぎるだろ。自分はどうなんだよ。好きなやつとかいねーの?」
「いないわよ、悪かったわね。そっちこそモテるくせに、彼女作んないの?」
「うーん。面倒くさい。」
「黒瀬も相変わらずねー。」
私の事を好きだと言ってくれる人がいたら、すぐ好きになっちゃいそうなくらい、ちょろい女だと、自覚している。言われた事ないけど。
でも、協力してると、すごく思う。あんな熱っぽい目で見つめられたら、誰だってくらっときちゃうんじゃないかな。そんな目で見つめられた事ないけど。
「よっ、南。なんか久しぶり。」
「黒瀬。クラス違うし、1ヶ月ぶりとかかもね。」
「…ちょっと放課後、時間もらえない?話あるんだけど。」
「…いいけど。」
「じゃあ、迎え行くから、教室で待ってて。」
「はーい。」
自分から恋をするのは怖い。片想いは怖い。相手が私を好きになってくれるとは限らない。
それに、恋は盲目だ。協力してて、好きな子以外見えてない、と思う事は多い。でも何故か、好きな子の気持ちは他の人よりもわからない。的外れな事を考えて、自爆しかねない。そこを私が抑えてあげる。
私も誰かに協力して、盲目で苦しい所を助けてほしいけど、協力してもらうという事は、その人には自分の気持ちを教えなきゃいけないという事で。
人に言うだけでも、かなりの勇気がいると思う。私には、無理だ。
「…この辺で、いいか。」
「…どうかした?こんなとこまで連れてきて。」
「あー、うん。ちょっと、な。」
「…話、あるんだっけ。」
「…おう。」
「…何?」
「…ちょっと、待って。悪い。」
「いいよー。別に予定も無いし。」
私は嘘つきだ。臆病だ。ヘタレだ。男友達より、ずっと。
私は、ちょろい女だと思う。告白されたら、その人を好きになるだろう。
でも、どうせ告白されるなら。誰かが私を想ってくれるというなら。
「…好きだ。」
私は、黒瀬がいい。
「…へ?」
今、なんて言った?聞き間違い?主語が抜けてるよね?
「…ごめん。えと、もう一回、言ってくれる?なんか、聞き間違えたっぽくって。」
「…好き、つった。」
「…誰、が?」
黒瀬は、かなり容姿が整っていて、勉強も運動も学年で一番だし、クールだけど優しくて、昔からモテモテだ。
小学4年生の時に転校してきて、同じクラスで気が合って、すぐに仲良くなった。それから、ずっと同じ学校。
告白されてる所は何度か見た事があるし、バレンタインのチョコの量も半端無い。でも、彼女や好きな人がいるとは、聞いた事がない。
「南が。」
小4の冬。日直を一緒にして、途中まで2人で帰った。普通に嬉しくて、楽しくて、でも思ったより外が寒くて。
マフラーが私の首に巻かれた。手袋も勝手に右手につけられて、左手はそっと握られた。
黒瀬は、冬の冷たい空気に首をさらしながら、「あったかいな」って言って、笑ってた。左手が熱くてしょうがなかった。ずっと無言で歩いて、なのに、なんだか心地よくて。
私の家の前で、マフラーと右手の手袋を返して「ありがとう」って言ったら、また「あったかいな」って言ってマフラー巻いて、手袋つけて、帰っていった。
手を繋ぐのも、マフラーや手袋の貸し借りも、小学生の私達にはそこまで特別じゃないはずで。
ただ、黒瀬の笑顔だけが、特別だった。
「…嘘、だ。」
「…嘘じゃない。」
「…絶対、嘘。だって、好きな人いるなんて、聞いてないし。」
「…本人には、言いづらいだろ。お前おせっかいだから、協力する、とか言ってきそうだし。さすがにそれは、堪えるし。」
「…何それ。そんなの、まるで、私のこと、好き、みたいな。」
「ああ。好きだよ。俺は、南が好きだ。」
「…何それ。」
「…南は俺のこと、どう思ってる?この先、好きになる確率、どのくらい?」
「…何、それ。」
「…困らせて、ごめん。好きなんだ。」
「…ホントに?」
「ホントに!本当に、好き。付き合いたい。ずっとずっと、好きだったんだ。」
あのいつもクールな黒瀬が、すごく真剣な目で、熱っぽい目で、私を見ている。
信じても、いいのかな。
これまで告白されてきた可愛い子達ではなく、私を選んでくれたんだって。本当に、私に、恋をしてくれているんだって。
信じても、いいのなら。
「…私も。」
「…は?」
「…私も、好き、です。」
「っ!南!」
「っちょ!黒瀬!?」
ぎゅっと抱きしめる黒瀬から、速まった鼓動が聞こえてきて、ようやく、実感する。
ずっと、怖くて、逃げてた。きっとこれからも、逃げ続けていたと思う。
黒瀬が、そんな私を、捕まえてくれた。想ってくれた。
私が唯一、想われたいと思っていた人が。
私も、この気持ちが伝わりますように、って思いながら、黒瀬の大きな背中に手を回す。あの頃は、そんなに背は変わらなかったのに。今はずっと大きくて、男の人って感じだ。
「…南。好きです。俺と、付き合ってください。」
「…はい。」
両想いって、奇跡だと思う。
私の周りでは、その奇跡が5回も起こっていたけど、それって本当に素晴らしい事なんだ。
だから、私にもその奇跡が起こるなんて、思っていなかった。
「やっと!?遅すぎでしょ!」
「ずーっと両想いだったくせに!ていうか、付き合う前からイチャイチャしてたじゃん!」
「え!してないよ!する訳ないじゃん!」
「いやいや、してたよ。仲良すぎだし、黒瀬とか、ずっと周りに牽制してたろ。」
「まあな。」
「嘘!?」
「つーか今告ったのも、あの先輩が南を狙ってる、っていう噂聞いて焦ったからだろ?あの人イケメンだもんなー。」
「え?あの先輩って誰?何の話?」
「ミナミンは相変わらず鈍いよねー。」
「黒瀬以外とのフラグは、無意識のうちに折っちゃうからねー。」
「え!ホントに何の話!?」
ずっと自分の心に嘘をついてきた。自分は恋をしていない。恋人になりたい人なんていない。そうやって自分の気持ちをごまかしてきた。
でも、思い返せば、私って割と努力してた。黒瀬の誕生日は明らかに他の人のより大切にしてたし、女子力上げるために料理や裁縫、スキンケアにも力を入れてた。服やメイクも黒瀬の好みを無意識かわかんないけどリサーチして、それに合わせて選んでた。
黒瀬の隣に、自信を持って立てるように。黒瀬とつりあう人になれるように。頑張ってた。
あくまで無意識だった。と思う。たぶん。
「南。」
「黒瀬。」
「一緒に帰ろ。」
「うん。」
そして、付き合い始めて、お互い忙しいからデートは全然できてなくて、変わった事はまさかのひとつだけ。
付き合う前からイチャイチャしてた、って本当だったかも。恥ずかしい。
「ほら。今日寒いだろ。」
「…うん。ありがと。」
隣を歩く時は、手を繋ぐ。私の左手と黒瀬の右手。まだ慣れなくて、熱くてしょうがない。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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