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Seasons In The Abyss   作者: oga
31/34

第31話 悪い夢


 セブンスマートで鳥追月夜に散々しごかれた後に廃工場に寄るが依然クリステンが1人でパソコンとにらめっこしていたので外Qでの情報を伝え新宿への帰路に着く。

 電車の中で鳥追月夜との手合せを反芻する、この際彼女が何なのかなどはどうでもいいし彼女に手も足も出なかったこともどうでもいい。ただ、彼女の言うように終盤の動きはかなり良かったはずだ、なのに何故1ミリも届かない、何が悪いのか、武器こそ自在に変容させてはいたがそれ以外の体術や剣術に関しては妖しげな術や超能力等は使用していなかったように思える、基礎能力値が違いすぎるのか、とにかく彼女がくれたヒントを何としてでもモノにしなければガーディアンズには太刀打ち出来ない。気持ちばかりが焦る一方だ。


「 トワ君 ゴメン ガーディアンズが接触して来たんだよね 」

 日が暮れて新宿に着くと瑠衣から連絡が入りもう事務所には誰も戻らないから今日は帰るように言われ仕方なく高田馬場までトボトボと歩いて帰っていると突然背後から五月雨の声がした。振り向くと見慣れないラフな出で立ちにフードを被った五月雨が少し間隔を開け後ろに付いていた。

「 シズクさん 」

 それから目立たないように人気のない場所に移動した。

「 どうしてそれを 」

「 心拍数だよ トワ君に打ち込んだ発信器は位置情報と心拍数をモニタリングするんだ 午後に東京駅周辺とセブンスマートで心拍数が上がってる セブンスマートの面子の前で心拍数が上がるのは別に不思議じゃないけど 東京駅では不自然だからね 直ぐに向かいたかったんだけど隊長と一緒だったから 」

「 そうなんですか お察しの通りです 採石場の例の2人が接触して来ました それが少しばかり厄介なことになっちゃって 」

「 厄介って 」

「 その場で即削除するつもりで不意打ちをかましましたが2人相手ではやはり 平衡感覚を奪われて そしたらヤツらは別に六礼参事官に従うつもりはないと 何か理由があるようです そして参事官の指示通り僕に協力すると 」

「 ちょっと待って なんか分かりにくいなぁ つまりトワ君が六礼参事官に素直に従えないのを承知の上で本来の指示通りにトワ君に協力するってこと 」

「 ヤツらの真意はわかりませんがそういう事です 僕が目の前に現れるガーディアンズをすべて狩ると言うと面白がっていました 」

「 信じるつもりかい 」

「 いえ ただ ヤツらは遠距離なら僕を始末するのは簡単な事だと 確かにその通りです 蝶でマーカーして狙撃するだけですからね でもまだ生きてます 僕が生きてる間だけは信用出来るのかなって 」

「 トワ君ってもしかしてドM体質 まあいっか とにかく1人で無理しないで 君の泥舟には僕も乗船してんだから しかし昼間に接触して来るとはね 接触は勤務時間外と睨んで高田馬場に部屋借りたのに 」

「 そうなんですか 」

「 そだよ 言ったろう 監視するって あと女の子とデートする時は事前に申告しといてね 心拍数上がって踏み込んだら事故っちゃうから それともドMのトワ君は見られた方が興奮するのかな 」

「 ヤメてくださいよ それよりその格好なんか意外に似合ってますねぇ その辺のチンピラみたいですよ 」

「 チンピラって 別に普段着なんだけど 」

「 そうなんですか 無理して変装してるのかと 」

「 いやいや トワ君ってあれでしょ 高校時代外出時も常に制服着るタイプっしょ 」

「 それ どんなタイプなんですか 普段着くらい持ってます 」

「 持ってても着ないタイプ 」

「 んな訳ないでしょ 」

「 あと 色が着いてる服は着ないタイプ 基本 白 黒 グレー 頑張ってカーキかベージュか藍色 」

「 頑張んなくてもいいです 」

 少しだけ当たってるのがなんかくやしい。

「 とにかく僕は出来るだけ夜間は近くにいるからガーディアンズと接触した時はなるべく時間を稼いで 」

「 わかりました 」

 それから五月雨と別れてから自室へと辿り着いた。

 本当にこれでいいんだろうか、五月雨の真意がいまひとつ分からない、だが、それは五月雨も同じだろう、彼も僕の真意は分からない、分かるはずないのだ、もとから僕は真意など持っていないのだから。


 その日、悪夢を見た。


 悪夢というものが何なのかは分からないが僕の場合は子供の頃から決まっている。それは猿に追いかけられる夢である。それが本当に猿かどうかは分からない、ただ猿に追いかけられた悪夢を見たという記憶だけが残るのだ。うなされて目覚めた時点ではどんな夢を見たのか覚えているんだと思うが後から考えると思い出せない、いつもの猿に追いかけられた夢を見たという曖昧な記憶だけが残る。子供の頃に高熱を出した時に見た夢なんだと思う、実際のところ そんな夢など見ておらず、何かの拍子にその悪夢の記憶だけが蘇っているだけなようにも思えるのだが定かではない。子供の頃に見たその夢が余程恐ろしい夢でトラウマになってしまっているのだろうか。だが、精神的に追い詰められているのは確かなようだ。限界を超えた時、悪夢の中から猿が這い出してくるのだろうか、その猿はどれほどに恐ろしいものなのだろうか。


「 どしたの 顔色悪いわよ 」

「 昨日悪夢にうなされたみたいで最悪な気分なんだ 」

「 みたいでって何なのさ 」

「 ルイは夢ってハッキリ覚えてる 」

「 覚えてる時もあるしあんまし覚えてない時もあるかなあ 」

「 その あんまし覚えてない方の夢だよ 見た記憶はあるんだけどそれが本当に昨日見た夢なのかハッキリしないんだ その悪夢を子供の頃から繰り返し見てる気もするしそうじゃない気もする 」

「 大丈夫なのトワ君 今度 おまじないしてあげよっか 」

「 何のおまじない 」

「 悪夢を見ないおまじないでしょ 」

「 そんなのあるの 」

「 あるわよ お母さんが教えてくれたの 」

「 じゃあ今教えてよ 」

「 ダメ 」

「 ケチ それでターゲットは 」

「 ルイちゃんに任せなさい 顔認証システムで引っかかったわ中央線の東小金井近辺で複数回識別されてるの この場所は鎌池が昔訪問医をしていた星の子学園のあった場所よ 」

「 事件で閉鎖した児童施設だったっけ 」

「 そう で その建物がまだ残ってるみたいなの 一応国有地なんだけど誰も管理してなくってゴースト化してるんだと思うわ 」

「 ゴースト化って 」

「 どこが管轄してるのかわかんなくなっちゃうのよ だから管理する人もいなくて長年放置されてしまう 場所が住宅地や商業地から外れた場所だから問題がなければ気にする人もいない そこは元々公に出来ない事件があったみたいだから当時は一般的な処置が出来なかったんだと思うわ そしてそのまま忘れられた 」

「 なんか適当すぎない 」

「 そういう場所は結構あるのよ 問題がない限り後回しにされちゃって人事異動があってを繰り返してるうちに知ってる人すらいなくなったりして場所の幽霊になっちゃうの 」

「 で 鎌池はそこにいるの 」

「 可能性は高いわ 他に鎌池は小金井と接点は見受けられないもの ガーディアンズに狙われてるのを知っていて身を隠すなら打ってつけの場所でしょ 」

「 わかった 」

「 現地で部局長とイチミンに合流する手筈よ 外Qで必ず押さえるわよ 」

「 ハム特は 位置的に中間地点だけど 」

 小金井市は新宿とセブンスマートのある魔境西東京の真ん中くらいに位置している。

「 流石に目立ちすぎるわよ いくら外れてても一応中央線沿線の大住宅地の町よ ハム特の面子は警察臭が強すぎて浮いちゃうわよ その点ウチは部局長とイチミンは見た目胡散臭い不動産屋みたいだし私たちは単なる地味なカップルにしか見えないでしょ 」

「 地味なカップルって 」

「 何 私が彼女に見られたら迷惑なの 」

「 べ 別にそんなこと言ってないし 」

「 ……もういい さっさと行くわよ 」

 それから2人で事務所を後にして新宿駅から中央線で東小金井に向かう、曳井と御国は先に車で向かっているとのことだ。瑠衣の言うように2人で歩いていると周りからは恋人のように見えるんだろうか、まあ男女が2人で歩いていたら大抵恋人同士なんだから違うと思われる方が問題があるのだが、意識してしまうと何だか妙に気恥ずかしい。

 東小金井の駅から目的地までは歩いて30分ほどの距離だということである。

 中央線沿線はどこも駅周辺こそ街らしく栄えてはいるのだが10分も歩くと住宅地へと姿を変えていき20分も歩くと低い家ばかりになり緑の比率も増えてくる。東京に住んでいると駅から徒歩15分まではまあ便利な場所だがそれ以上になると不便な場所と見なされることが多く自転車を使えば5分程度なのだが駐輪スペースを確保しなければならないし何かと面倒なのだ。

「 結構静かな場所なんだね 」

「 中央線としては中途半端な場所だからね 少し手前の吉祥寺なんか若者に人気の街だし 少し先の国分寺は接続駅だし 新宿に直通って以外それほど利点がないのよ 家賃的には穴場みたいよ あとジブリがあるわよ 」

「 ジブリってトトロのジブリ 」

「 そうそう ハヤオのジブリよ 」

「 でも 家は沢山あるのに人がいないんだけど 」

「 平日の午前中ですもの みんな家の中で家事してんでしょ それかワイドショー観てるか ゴジラが踏み潰したらアリンコみたいにうじゃうじゃ出て来るんじゃないの 」

「 それもなんか怖いよ 」

「 住宅地なんて虫の巣みたいなもんでしょ 」

「 時々思うんだけど自分の見えない所で他の人たちは本当に生活とか活動とかしてるのかなって 」

「 何よ それ 」

「 だから自分の視界から出たら停止してしまうんじゃないのかなって 例えば僕の目の前にいるルイは喋って動いて生きているけど僕の視界から外れたルイは停止して固まったまんまなんじゃないのかなぁって 」

「 自分勝手な男だなぁ 別にトワ君の見てないとこでも私は喋ってるし動いてるし生きてるわよ 自分を中心に世界が動いてるわけじゃないのよ そんなだからすぐフラれるのよ トワ君の見てないとこで彼女は他の男に会って喋って笑って抱かれるのよ 自分の視界にいない時が一番重要なんでしょ 常に意識して電話やメールで束縛しとかなきゃ 何が見えないとこで停止して固まってるよ バカ トワ君って一緒にいない時は彼女でも一切何してるとか気にしないでしょ 女性はそういうの敏感よ そんな時に他の男が現れたら即奪われちゃうわ 」

「 別に彼女の話じゃないんだけど それに気になるからそんなこと考えるんだと思うし 見てないとこがどうなってるかが不安なんだ 」

「 メンドくさッ どうもなってないわよ トワ君こそ私の見てないとこで何してんのよ どうせやらしいことしてんでしょ 」

「 やらしいことって 僕はルイの見てないとこだと彫像みたいに固まって死んでるのかも知れない 」

「 はいはい 勝手に死んでなさいよ あっ 部局長たちだ 」

 見ると前方の自販の前でタチの悪そうなスーツ姿の2人組が缶コーヒーを飲んでいた。


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