第21話 再起動
「 よおぅ 」
「 あっ 砂叉丸 わるい なんか僕たちの都合で 」
「 まあ貸しにしといてやるよ 」
「 で スナ丸君 なんか分かった 」
「 五月雨雫は現在三鷹の隔離施設に囚房中だ この施設は表向きは政府の囚人用の病理施設なんだが管理はどこがやってるかイマイチわかんねえ 警備システムが厳重で俺らでも潜り込むことは不可能だ 」
「 鳥図切って忍者の一族なんでしょ 」
「 忍者じゃねぇよルイ 隠密の家系だ 」
「 違いがわからないわよ でもスナ丸君たちでもムリだと真桑隊長の言うように打つ手がないわね 」
「 ただ 判ったこともあるぜ ガーディアンズが何人か収容されてるみたいなんだ 」
「 ってことは超能力者用の施設の可能性があるってことね 被験者として研究してるのかも 怪しいわね 」
僕と瑠衣は中野のカラオケボックスで砂叉丸と密談を交わしていた、瑠衣の提案により砂叉丸に協力してもらうことにしたのだ、砂叉丸はこれを快く引き受けてくれた。もちろん御国にも曳井にも伝えてはいない。こんなことをしていていいんだろうかとも思うが何もしないよりマシである、このままでは五月雨は何らかの処置を受けてしまう可能性が高いし、何より僕自身 事態を把握しておく必要がある、これ以上 六礼や国神にいいように掻き乱されるのは沢山だ、先に知っておけば何らかの対処が出来るかもしれない。
「 問題は誰がその施設をコントロールしているのかだね 」
「 んじゃあ 職員を拉致って聴きだすか 」
「 ダメよスナ丸君 私たちが探ってるのバレちゃうじゃない 」
「 めんどくせぇえなあ そん時は政府の犬なんか辞めて二人でウチに来いよ おまえらならツク様は受け入れてくれるはずだぜ 」
「 そういうわけにもいかねぇんでがんすよ 」
「 まあ とりあえずもう少し探って見るわ 百目のネタにもなりそうだしな 」
「 あっ それイケるかも 」
「 何がイケるのよトワ君 」
「 だから百目に謎の施設としてスッパ抜いてもらう 」
「 いいアイデアだけど時間が無いわよ 雑誌が出る頃にはもうシズク君洗脳されてるわよ 」
「 そっか 」
「 そうでも無いぜ 別に雑誌じゃなくったっていいんだろう 」
『 スクープ! 東京三鷹に政府関連の謎の施設 超能力研究施設か? 』
翌日、ネット上のウェブ版電脳百目奇譚にこの記事が載る。記事の内容はオカルト都市伝説てんこ盛りの如何にもな内容でまさに百目奇譚の本領発揮である。
「 やってくれたな ルイ おまえが斑咲と何やらコソコソしてると思ったら 」
「 はてさて 何のことやら 」
「 とぼけるな 」
「 だって部局長 好きにしろって言ったじゃん 」
「 言ったじゃんじゃないだろう 」
「 あのぉ それ僕のアイデアなんです 」
「 斑咲 おまえ 配属1ヶ月ちょいで何で悪い方にすっかり順応してんだよ 適応力ありませんみたいなツラしやがって 辻斬り事件がやっと解決したんだぞ おまえら俺の心の休息を奪ってそんなに楽しいか 」
「 まあまあ部局長 落ち着いて 血圧上がりますよ 」
「 はぁぁっ イチミン おまえも公安にちょっかい出してんだろ クレームが来てんだぞ 目立たないようにやれって意味がわからんのかこのポンポコポンコツどもが 」
「 あちゃ 完全にキレちゃった 」
「 おまえらが百目なんか使うからだぞ 」
「 イチミンだって クレームって何やらかしたのよ 」
「 ちょっと口の軽そうなヤツ締め上げただけだよ あとヤツらの資料室を少し物色しただけだ 」
「 で なんかわかったの 」
「 いや ただ 対ガーディアンズの特殊チームが存在するっつう噂が2年ほど前から公安内で都市伝説化してる こいつらが実はエスパーだとよ 」
「 雫さんが配属されたのと同時期ですね 僕 雫さんの話に違和感を感じてたんですけど 」
「 ほう その心は なんぞやトワ君 」
「 雫さん適性検査に引っかかったって言ってましたよね 一体何の適性検査なんですか 軍だってそんなエスパーが引っかかるような適性検査なんて僕が知る限りやってませんでしたよ 」
「 ナイストワ君 そっか その時警察内でエスパー適性検査が行われたんだ ガーディアンズに対抗するためのエスパーチームを作る為の シズク君はそれに引っかかった だけどシズク君の能力はエスパーキラー チームに入れたらチームが機能しなくなる それで仕方なくハム特に配属したんだ 」
「 いいぞルイ それなら繋がるな じゃあ貴様らが押さえた施設は超能力を研究する公安絡みの秘密裏の施設で正解だ そこで独自のエスパー適性検査も開発されたんだろう そして五月雨はそこに収容された 何もされない訳ないよな 最悪洗脳どころかモルモットだぞ 」
「 砂叉丸が午後から施設に突撃取材をかけるらしいんですが 僕も同行してもいいですか 」
「 あっ 私もそれ乗った 」
「 仕方ねえ 俺も行ってやる 」
「 ……おまえら 俺の話聞いてないだろ 何一番目立つ計画堂々と立ててんだよ まさか正面から乗り込むつもりなのか 」
「 虎の穴に間違えて入っちゃった的なあれですよ 部局長 武器の携帯許可をお願いします 」
「 ……ルイ いいかげんにしろよ 許可出来る訳無いだろ もういい おまえらのせいでイライラMaxだタバコ買って来る 通常業務に戻れ 」
そう言い残し乱暴にドアを開け御国が出ていく。
「 ボスの許可も下りたし準備しましょ 」
「 あれで許可下りたの 」
「 武器庫のロックわざわざ外してタバコを買いに行くマヌケなボスを演じてくれてるんだから あのめんどくさい性格どうにかなんないの 」
「 そう言うなよルイ 平成育ちのオールドタイプなんだから 回りくどい事大好きなんよ 」
「 合わせなきゃのこっちが大変よ そんなだから結婚出来ないのよ 」
そう言いながら瑠衣が隠し部屋の武器庫の扉を開ける。
「 海乃さん なんかすみません 」
「 まかせるっスよ 班長はさすがに顔が知られ過ぎてるからここは俺の出番っスよ 」
砂叉丸に合流すると百目奇譚の海乃大洋が同行してくれるとの事だった。本物の雑誌記者が混じってくれるのは心強い限りである、砂叉丸も百目奇譚の一員とはいえあまり記者には見えない、僕ら素人と一緒だといつボロが出るか分からない。
「 海さんもイケメンカメラマンとして結構有名じゃないですか 高校の友達でファンの娘がいましたよ 前にアイドルと噂になってませんでした 」
「 何年前の話っスかルイちゃん 噂ってあの刺されそうになったヤツでしょ 」
「 もしかしてあの人気モデルタレントのストーカー殺人未遂事件か あれって相手海乃だったんだ 俺 あの娘のファンだったんだぞ しばらく鬱になったんだからな 」
「 知らないっスよカラムーチョ 年末のテレビのオカルト特番に班長の命令で駆り出されて共演して少し仲良くなっただけっスよ そしたらいきなりストーカー化して殺されかけて 」
「 イケメン過ぎるのも困りもんだな 」
「 嫉妬の負け惜しみにしか聞こえないわよイチミン 」
「 うるせえ 」
「 俺も可愛い娘に殺されかけてみたいっす 」
「 あらスナ丸君はまひるちゃんに頼めばいつでも殺してくれるじゃん 」
「 いやいやルイ 本当に死んじゃうじゃんか 頼んだ1秒後には地面に落ちた首で自分の体を見上げてるよ それより作戦は 」
「 とりあえず突っ込んで相手の出方次第だな いざとなったら襲撃して五月雨を奪還する あとは部局長がなんとかしてくれるだろう 」
「 それならさすがに百目の名前は使えないっスね スナ丸 百地のプレート用意して あと車のナンバーも変えといて 」
おんぼろのワゴン車を運転しながら海乃が指示を出す。砂叉丸がタブレットを操作して作成した首から掛けるネームプレートを全員に手渡す。プレートには百地出版月刊ピンクピーチ編集部と書かれていて自分に似た誰かの顔と見知らぬ名前がプリントされていた。
「 ピンクピーチって実在する雑誌ですよねえ 僕見た事ありますよ 」
「 トワ君でも見ることあるんだ ちょっと意外っスね 」
「 うわっ どんな雑誌だよ ピンクピーチって嫌な予感しかしないわよ 不潔だわ トワ君にはがっかりよ 」
「 いやいやルイ たしか根も葉もないゴシップ誌だったと 」
「 エロ成分若干高めのね 」
「 …… 」
「 あれはウチの裏の顔 月刊を謳ってるけど実際には年に二回くらいしか刊行してない ヤバい取材する時用の百目のダミー出版社なんだ まあ袋綴じのピンナップの仕事は楽しいよ この前撮影スナ丸に手伝ってもらったら鼻血が止まんなくなって輸血して大変だったっスよね 」
「 うわっ おいスナ丸 」
「 ……あ あれはその前に稽古でツク様にぶっ飛ばされたのが原因だかんな 海さん 」
「 鳥追店長代行って強いの 」
「 おまえ本当に何も知らないんだな新人のトワ君 」
「 最高剣士左々原鈴音 ツクヨちゃんのもう一つの顔っスよ トワ君 」
「 国神だろうが辻斬り魔だろうが瞬殺だぜ 」
そう言えば平成ノ宮で龍の巫女は鈴音姉様と呼んでいたのを思い出す、鳥追月夜に関しては断片的な情報ばかりでまったく把握しきれないんだから砂叉丸に何も知らないと言われてもなんかムカついて来る。
「 さて 到着したっスよ 鬼が出るか蛇が出るか 中身は見てのお楽しみっスね 」




