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 ぶつぶつと不平不満を零しながらも、ティナは案外真面目に、ネリーから次々と出される「課題」に取り組んでいるらしい。

「もうさあ、あの人、まるであたしを親の仇みたいな感じで扱うんだけど。立つもの座るのも、『そうじゃありません!』っていちいち甲高い声で叫ぶもんだから、耳が痛くってしょうがない。やっぱりあれくらいの年齢になるとヒステリーが酷くなるのかしら。村にも年がら年中怒ってるようなおばさんがいたけど、ネリーさんほど怖くなかったと思うわ。ああいうのって、いつかある日突然ぱたっと倒れたりして危険だから今のうちに改善を──」

 そのネリーがいないのをいいことに、ティナの流れるような愚痴は留まることを知らない。

 ネリーの代わりに扉近くに立っている若い侍女が、さっきから下を向いて笑いを堪えている。ネリーは他の侍女に対しても厳しいという評判だから、半分くらいは胸がすくような気分でいるのだろう。

「あの侍女頭は昔から、クリスティーナ王女を目に入れても痛くないほど大事にしていたからな。どうしても抑えきれないものがあるんだろう」

 別にネリーの弁護をする気はないが、俺はそう言った。


 蝶よ花よと誉めそやし、自分の生き甲斐で自慢でもあった、愛らしい王女。

 ずっと独身を貫き通して仕事に人生を捧げてきた孤独な侍女頭が、なによりの宝物で主人でもある王女に、何を投影して、何を満たしていたのかは、なんとなく想像がつく。

 その王女が自分にさえ何も言わずに王宮を出て行ってしまったことで、ネリーが喰らった痛撃、襲い来る罪悪感や恥辱、失望などは計り知れないものがあるだろう。

 ……だからって、その憤懣を、この代役の娘にぶつけるのは間違いだとは思うが。


 というようなことを俺が考えている間にも、ティナはべらべらと口を動かし続けていた。

 つい今しがたまでネリーに対するぼやきであったその話は、なぜか「長寿の秘訣はやっぱり早寝早起きらしい」ということに中身が変わっている。いつの間に、どんな過程を辿ってそういうことになったのかは、さっぱり判らない。

「その点、ここでの生活はきっちりしてるわよね。朝も夜も、何時に起きて何時に寝る、っていうのが決められてて、眠くなくてもベッドに押し込まれるんだもん。ていうか、そもそもそんなに身体を動かすこともないのに、そうそう早く眠れるわけないと思わない? そりゃあ毎日毎日変なことばっかりやらされて、疲労感はあるけど」

「今しているのも、その『変なこと』の一環なのか」

 やっとそれについて問いただす機会が巡ってきたので、次の話題に移行しないうちに俺は素早く言葉を挟んだ。実を言えば、ずっと聞きたくてたまらなかったのだが、このお喋りのせいで、どうにもきっかけが掴めなかったのだ。

「あ、これ?」

 と、ティナが自分の頭の上を指差した。

「そうそう、そうなのよ! だからネリーさんがさ、あたしの背中がいつも曲がっていてみっともないから、コレを常に乗せておけって」

「…………」

 なるほど、と一応納得した。


 ──だから、分厚い本を頭に乗せてソファに座っている、という間抜けな図になっているわけか。


 この部屋に入ってティナのその姿を目に入れた途端、いよいよ頭のネジが吹っ飛びでもしたかと、一瞬本気で不安になった。

「常にか」

「常によ。立つ時も移動する時もなのよ。ちょっとでも気を抜くと落ちちゃって、本の角が足の指に当たったりして、痛くてしょうがないのよ。脳天にまで突き抜けるっていうか、目の前がチカチカ光るっていうか、木にぶつかったら積もっていた雪が落ちてきて慌てて掴んだ枝がボキッと折れて頭に当たった時みたいっていうか。わかる? そういう、不意をつく痛み」

 わかるか。

「……今は下ろしてもいいんじゃないか?」

「だめよ。ネリーさんにうるさく言われてるもん」

 だからそのネリーがいない今は、そんなことをしなくてもいいんじゃないか、と言いたいのだが。

 文句は止まらなくても、言われたことには従い続ける。これが田舎の娘の純朴さ、愚直さということなのだろうか。それともティナという娘の個人の資質なのか。どちらのこともよく知らない俺には、判断がつけがたかった。

「それでロイド、あたしに何か用があったんじゃないの?」

 ようやく、話の本筋に入れるらしい。ここまで来るのに、結構な時間を消費した。

「ネリーがいると、余計な横槍が入りそうだからな。今のうちに、あんたに話しておいたほうがいいと思って」

 だからわざわざネリー不在のこの時を見計らって来たのだ。近衛隊員は基本、特別な事情でもない限り、王女の私室には入らないことになっている。

「なにを?」

「──この件の、もう少し詳細な内容を」

 やや声音を抑えて言うと、ティナはぱちぱちと目を瞬いた。

「それは、あたしが知っておいたほうがいいことなの?」

「たぶん」

 あるいはランス隊長は、その必要はないと考えているかもしれない。ネリーはもっとはっきりと、そんなことまでこの無関係の娘に話すことはない、と眉を上げて怒るだろう。

 しかし、ここまで関わらせておいて、ティナを何も知らないままの状態にさせておくことなど不可能だ。この娘は案外目敏いところもあるし、理性的に考える頭もある。少なくとも、物事に対して盲目ではない。操り人形のように動かせるようなタイプじゃない。

 ティナの護衛を任されているのは俺だ。だから俺は俺の判断で、この娘にはなるべく事実を伝えるべきだと考えた。

「じゃあ、座ってよ。あ、お茶淹れようか」

 人を使う、という発想がそもそもないのか、率先して立ち上がろうとするティナを手で制す。同時に、扉近くにいた侍女が、「わたくしが」と静かに頭を下げて楚々と動き出した。

「あ、ごめんね。ありがとう」

 ティナが礼を言って、上げかけた腰をまた下ろす。彼女が動くたび、頭の上に乗っている本が、ぐらぐらと揺れて危なっかしい。

 部屋を出ていく侍女が小さく噴き出す音が、俺の耳に届いた。

 その笑いには明らかに軽蔑じみた含みがあった。ネリーとはまた別の意味で、ティナは侍女たちに受け入れられていないんだな、と気づく。

 無理もないか。このどこか律儀なお喋り娘は、田舎の小さな村でならともかく、王宮内ではあまりにも場違いに浮いた存在だ。

 複雑な気分を顔に出さないようにして、俺も向かいのソファに腰かける。どこもかしこも豪奢なこのソファに、こうも何度も自分の尻を乗せることになるとは思ってもいなかった。

 ましてや、王女と差し向かいで座るなんてこと、許されるはずもない。

 目の前には、王女と同じ顔をした娘。別人なのは判っているが、あまりにも似すぎていて、こうして寛ぐ姿を見ていると、優雅にカップを口許に持っていく王女とダブって、少し眩暈がしそうになる。

 ……まあ、現在ここにいる「王女」の頭の上では、分厚い本がゆらゆらと均衡を保っているわけだが。

「まずはこの国の状況についてだが──」

 さっきの侍女とは違う理由で、自分も噴き出しそうになる。それをなんとか堪えながら、俺は口を開いた。



          ***



 キルヒリア王国は、世界のほぼ最北に位置する小国である。

 一年の三分の二ほどが冬と言われるこの国は作物が育ちにくく、飼育できる家畜も限られる。

 大雪が降るたび道が遮断されると、流通が成り立たなくなる。吹雪で閉じ込められれば、餓死者、凍死者があとを絶たない。厳しい気候の中、なんとか生き延びた者たちだけで細々と食いつなぐ、それがこの国の実情だ。ここが冬の国と呼ばれるのは、そういう寒々しい貧しさのことを指している部分もある。

 これでは特産品でもなければ国として立ちゆかない。しかし大地からの恩恵はほとんど望めない。なのでキルヒリアでは、昔から工芸に力を入れてきた。

 幸い、国内には、寒さに強いタリという木が多く自生していて、材料には事欠かなかった。またタリは、耐久性と耐水性に優れ、加工しやすく、時間が経つたび色に深みを増して艶が出てくるという性質を持っている。木目も美しく、工芸品にするには殊の外適していた。

 しかしいくら材料があり、職人を育てようとも、それを買ってくれる相手がいなければ話にならない。作った工芸品を食料や衣服に代えるためには、まず売らねばならないのだ。

 キルヒリアの場合、最大の商売相手は、隣国のアズガルド、ということになる。アズガルドはキルヒリアの三倍近くの国土を有し、気候はキルヒリアと似たり寄ったりだが、交易が盛んな国だ。

 キルヒリアはおもにアズガルドと取引をして、自国で作った工芸品を売り、金品を得る。キルヒリアの工芸品はそれなりに有名なので、あちらにも利はあろうが、その重要度の比率は決して水平ではない。

 アズガルドにとってキルヒリアは数ある取引相手のひとつに過ぎないが、キルヒリアにとってアズガルドは文字通りの命綱であり、生命線だ。

 キルヒリアが最も怒らせてはならない国、それがアズガルドなのである。



「……はあ。それくらい、あたしだって知ってるけど」

 俺の話を聞いて、ティナは少しぽかんとして口を開けた。

 そりゃ知ってるだろう。ここまでは、この国の人間なら子供だって知っている常識だ。

「そのアズガルドの王家には、子供が三人いてな」

 俺は無視して続けた。

「三人とも男だ。いちばん上の王太子が、そろそろ四十になるってところ。なかなかの切れ者らしいし、国王が引退を表明でもすりゃ、すぐに跡を継いでも問題ない。もう妃もいて子供も二人いる。それから一歳違いずつで、第二王子、第三王子と続くわけだが……唯一、いちばん末の第三王子だけが独身なんだ」

「へえ。一歳違いずつっていうと、その方ももう三十後半くらいよね? 王族にしては、ずいぶんご結婚が遅いのね」

「理由があってな」

「どんな?」

 屈託なく首を傾げるティナに、少し躊躇する。アズガルド王国の末王子については、他の国でも上のほうはよく知っている事情があるのだが、それはあまり大っぴらに口に出せる種類のものではない。

「つまり……容姿がな」

「うん」

「あまり、恵まれていない」

「というと」

「一言で言うと、大変な醜男なんだそうだ」

「…………」

 ティナがきょとんとしている。俺はさらに声の音量を抑えて続けた。


「背は一般の成人男性の半分ほどしかなく、そのわりにブクブク太っていて、顔はパンを叩いて潰したような感じ。子供の頃病気に罹って頬には酷い痘痕が残っているし、目は左右に離れ、鼻の孔は上を向き、唇は辛いものでも食べて腫れあがってるのかと思うほどに赤くて分厚い。その上口から出てくるのは、カエルを車輪で轢いたような濁っただみ声で、聞いた者の背中をゾクゾク冷やすんだとか」


 ティナはちょっと呆れたような顔をした。

「……よくそこまで他国の王子さまを悪しざまに言えるね」

「俺が言ってるんじゃない。そういう評判なんだ」

 しかも、実際に第三王子を見た人間はみんな、それが決して誇張ではない、と断言するというのだから驚く。ここまで何もかも悪い方向に揃うというのも、かえって珍しいくらいじゃないかと思うのだが。

 とにかく、そういう事情で、アズガルドの第三王子は未だ伴侶を持っていない。どこに話を持ちかけても、なんやかんやと理由をつけて断られてしまうのだという。

「それで今回持ち上がったのが」

「ここの王女さまとの縁談、ってわけ?」

 ティナは話の呑み込みも悪くなかった。俺が頷くと、はあー、とため息のような声を出した。


 ここで重要なのは、アズガルドにとって、キルヒリアとの縁組に大したメリットはない、ということだ。


 なにしろ相手は、こちらが手を振りほどこうとしても縋ってくるような貧しい小国だ、政略にもならない。それくらい、立場は格段にアズガルドのほうが上にある。本来なら、もっと今後の利益になるような相手と縁を結びたかったことだろう。

 しかし、いつまでも第三王子を独り身のまま放置しておくわけにもいかない。アズガルドは正式に使者を立て、ルヴォルト第三王子と、キルヒリアのクリスティーナ王女との結婚話を打診してきた。というか、正確に言うと、ねじ込んできた。

 王女の父親であるキルヒリア国王には、断るという選択肢など存在しなかった。いくら過保護なまでに可愛がってきた娘であろうと、最大の取引相手と秤にはかけられない。王女を取ったら、その時点で王は国と国民を失う。

 そういうわけで、王女と第三王子の縁組は、内々にはすでに決定していたのだ。この結婚にまつわる諸々の約束事や条件なども交わされて、それに王は署名をした。もう後戻りは出来ない。長い冬が明け、春が来た時に、国民にも大々的に公表されるはずだった。

 問題点は、ひとつだけ。


 ……クリスティーナ王女本人が、断固としてこの結婚を拒んだ、ということだ。


 嫌だ嫌だと泣くわ叫ぶわ、普段はただ微笑んでいるだけの王女が、人が変わったかのように騒いで暴れた。

 幼い頃から夢見がちだった王女は、自分の夫になる男にも、美しい夢を育んできたのだろう。うっとりと頭に描いていた人物像と第三王子とでは、どこをどう探しても共通点は見つけられなかったらしい。ましてや相手は、そろそろ四十に手が届くかという年齢の、他国にもその醜さが知れ渡るほどの人物だ。

 若く美しい王女には、その現実が耐えられなかった。

 とはいえ、いくら泣いて抗議しようと、認めてくれなきゃ食事を摂らないと頑張ろうと、国王は折れるわけにはいかなかった。王妃も、王宮内の誰もが同情しても、この決定ばかりは覆せない。

 仕方ない、あれのことはしばらく放っておけ、いずれ頭が冷えたら王女も受け入れるしかないと覚悟を決めるだろう──と、王がため息交じりに投げ出した、そのすぐ後で。

 王女は、近衛隊の男と手に手を取って、王宮から逃げだした。




「ははあ……」

 他に言葉が見つからないのか、ティナが困惑したように眉を下げた。

「ということは、このまま王女さまが見つからないと、ちょっとまずいんじゃないの?」

「非常にまずいんだ」

 ランス隊長も、今頃は不眠不休で、王女捜索の陣頭指揮を執っていることだろう。

「もっとまずいことに、アズガルドの大臣が、もうすぐキルヒリアに来ることになっている。表向きは慶賀を述べるため、今後の打ち合わせのため、ということになっているが、おそらくこちらの様子を探ろうというのが目的だろう。今までにも、第三王子の婚約者候補だった女性が、目を離したスキに自害した、なんていう話があるくらいだからな」

 どこまで事実なのかは不明だが、アズガルド側がかなり慎重になっているのは否めない。やって来た大臣は、王が通り一遍の挨拶をするだけでは、到底自国にすんなり帰ってはくれないだろう。

「じゃあ、もしも王女さまが逃げちゃった、なんて話が知られたら」

「最悪、戦争になるかもな」

 低い声で出した俺の言葉に、ティナは驚いたように目を見開いた。

 キルヒリアと戦争したところでアズガルドが勝つのは判りきっているし、国土が荒れるだけで得るものはさしてない。この貧しい小国を呑み込んだところで、あちらは余計な荷物を背負うようなものだ。


 ……しかし、こればっかりは、判らない。こちらも人間なら、あちらも人間。面子を傷つけられれば、怒るのは当然だろう。

 ましてや相手は、兵力を備えた「国」だ。


 ティナがこっくりと大きく頷いた。

「うん。大体、わかった。じゃああたしは、万一の時のための備えなんだね。アズガルドの大臣さんが、ほんの少しでも王女さまの姿を見たいって言った時に、あたしがちょっとだけ顔を出せばいいんでしょ? ちゃんとこの王宮の中に元気で過ごしている、ってことを証明するために」

「──まあ、基本的には、そうだな」

 そんなに簡単な話で済むものかどうかはいささか怪しい、と俺は踏んでいるが、少なくとも王が「大至急、王女の代役となれる人間を探せ」なんて馬鹿げたことを言いだしたのは、それが目的だっただろう。

 その時、もう少し強硬に反対していれば、と悔やまれる。


 まさか本当に、王女にそっくりな顔をした娘が見つかってしまうとは。


「じゃ、ネリーさんの言うとおり、もうちょっと優雅になるように努力しないとね。……あ、落ちた」

 力強く拳を握った拍子に、頭に乗せていた本が落下した。むずかしい……とぶつぶつ言いながら拾い上げるティナを見て、苛立ちにも似た気持ちが胸に込み上げる。

 どうしてこの娘は、ここまで単純なのか。

 ランス隊長は間違えた。やっぱり彼女をここに連れてきてはいけなかったんだ。

 ──ティナは、こんな王宮なんて場所にいるべき人間じゃない。

 ほとんど顔には出さなかったはずなのに、ティナはそのわずかな変化に気づいたようだった。

「そんなに暗い顔しなくても。みんなで探してるんでしょ? きっと、王女さまもすぐに見つかるよ。まだ十八なんだし、好きな人と結婚できないのが悲しくてしょうがない、っていうのもわかるな」

 王女と同じ顔をしたティナが、同情するように言う。

 俺は黙ってほんの少し苦笑した。

 それはそうだな。うら若き乙女が醜い男の生贄に。もしかしたらそれは、「可哀想な話」なのかもしれないな。


 ティナのように毎日汗水たらしして働いて、何に対しても努力することを忘れない、懸命に生きている一般の民であればな。


「そういえばあたしの弟もさ、あ、エディっていうんだけど、もっと小さい頃はお姉ちゃんをお嫁さんにするって言ってくれてて、けどもう大きくなったらそんなことも言わなくなっちゃって、ちょっと寂しいっていうか、そのうちあの子も恋人を作ったりするのかなって思うとそれも寂しいような気がするんだけど、でもその時はやっぱり喜んであげるべきよねえ」

「……あんたの弟も、そんなによく舌が廻るのか」

 自分の内側のものを振り払うようにして訊ねると、ティナはあははと笑った。

「ううん、あたしと反対に、すっごく物静かなの。……あの、ちょっと体調がよくないことが多いのもあって、あんまり長く話すと息が切れちゃうのよね。エディにもよく、お姉ちゃんの口が動かないのは僕が眠ってる時だけだね、なんてことを言われてさ」

「……そうか」

 なんとなく、判った。

 そういう環境だったからこそ、ティナは人一倍お喋りをするのだろう。あまり話も出来ない病弱な弟が、不安にならないように、心細い思いをしないように。

 弟のために、弟の分まで、ティナは精一杯賑やかに話し続ける。



 クリスティーナ王女の微笑みは、雪をも溶かす春の花、と言われていた。

 俺はその賛美の言葉があまりピンと来なかったが、ティナの明るい笑顔を見て思った。

 これは確かに、花だ。

 ──強く逞しく、雪の間からも顔を覗かせて、見る者の心を和ませるような花。






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