表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/2

願い事

かつてこの世界には、たしかに神様がいた。


どんな願いも叶えてくれる、すごい神様が。

頭の中で声がする。



「なんでも一つだけ、願い事を叶えてあげましょう」

「じゃあその権利を百個にしてください」

「わかりました。なんでも一つだけ、願い事を叶えてもらえる権利を、百個、ですね」

「左様」

「かみさまじかる!!!」

「え?!」



目を覚ますと、目の前に魔法少女チックな格好をした少女が立っている。



「だ、誰?ここ僕の部屋なんだけど…」

「神様です!あなたの願いを百個叶えるために人間になりました!!!」

「どっひぇー!?」

「なんでも願いを叶えられる力は、もう無くなりました! 代わりになんでも願いを叶えてもらえる権利×百個が、あなたの元には残ったのです!必ず叶うとは限りませんけどね!」

「ななな、なんだってえー!? さっきのは、夢じゃなかったのか!?」

「左様」

「そんなバナナ…。僕は願いを無駄遣いしてしまったのか…」

「あえて言います、否であるとっ!」

「え!?」

「私にできることなら百個まで、なんだってしますよ!」

「例えば?なにができるの?」

「普通の人間の女の子にできることなら、大体なんでもできる筈ですよ!」

「普通ってなに?たとえばお菓子作りはできる?幼馴染みのミカンはできないけど…」

「まっかせてください!はい!!!」



胸を張って返事をしてみせた少女は、満面の笑顔のまま両の手のひらを差し出してくる。



「その手はなに?」

「材料費とレシピをください!それでなんとか!」

「そこ、神様の力でなんとかならない?」

「もう人間なので無理ですね、はい」

「なん……、だと……?」

「ワタシは犠牲になったのだ…、願いの犠牲にな…」

「つまり…、どういうことだってばよ!?」

「ですからー」



少女はおもむろにグーを作ると、それを僕の前に差し出す。



「これが、願いを叶える力です。なんでも願いを叶えられる力ですが、その効果は一回きりです!使うと無くなります!」

「はあ」

「そしてあなたは願いました!願いを叶えてもらえる権利が百個欲しいと!叶いました!」



少女は握っていたグーを、ぱぁっと爆発の真似事のように広げ、ひらひらと儚く揺らしてみせた。



「だから無くなったんです、願いをなんでも叶える力は。 残ったのは2つ。“なんでも願いを聞いてもらえる権利が百個”と、“なんでも願いを叶えようとする気概が百回分”です!」

「つまり?」

「できることはなんでもします!!!」

「じゃあ…、キスして?「「却下!!!」」」

「早いよ…」



そんなこんなで、僕と神様だった女の子の、不便極まりない願い事解決ライフが始まった。



「例えば、たくさんたくさん働いて、僕に貢いでほしい、っていうのは?」

「戸籍が無いから無理ですね!」

「じゃあキス」

「気持ち悪いから無理ですね!」

「ならなんならできるのさ、役立たず」

「えーっと……、……肩揉み?」

「幼児からおじいちゃんへの誕生日プレゼントレベル!!!なめてる!!!」

「誕生日は年に一回しか来ませんよ!?それをいつでもなんて最高じゃないですか!誕生日なめんな!」

「幼児ならな!!!お前元神様だろうが!!!」

「ああん!?」

「おおん!?」

「もうやだ、出てきます!」

「おう出てけ出てけ!役立たずをタダで置いとけるほど、我が家の土地代は安くないんだよ!」

「はい願い1個ー!!!最低のスタートーっ!!!!」

「おおん!?」



時に喧嘩して、時に仲直りして、時に一緒に笑って、時に一緒に泣いて。



「なんか今まで、あっという間でしたね!」

「あぁ…そうだね」

「ちなみに願い事…、あと、一個ですよ?」

「知ってるよ」

「かれこれ40年も温存されてる訳ですが、あなたは一体、なにをお望みで?」

「わざわざ言う必要があるのかい?」

「願いを百個叶えないと、私は神様に戻れませんから。それは困りますよ」

「でも、もう神様みたいなもんじゃないか? 君はこの40年間、ひとっつも歳を取っていないじゃないか」

「ですねー!あなたはこんなにシワができて、白髪だらけになって、おじさんになってしまったのに」

「はは」

「…あの」

「なんだい?」

「100個目のお願い、当ててもいいですか?」

「やぁ、どうぞ」

「……死ぬまで一緒に居て欲しい、ですよね?」

「ぶっぶー。 キスして欲しい、だよ」



そう言いながら、僕は不意をついて彼女と唇を重ねる。


すると彼女の体は、たちまちの内に光の粒に溶けて、天高くへと昇っていってしまった。



「僕が先に死んだりしたら、君は悲しむだろ?その優しい性格だって、充分知ってるさ。 …う、ゴホッ!ゲホッ!! …はぁ、はぁ……、はぁ……! 楽しかったなぁ…、この、40年間………。 神様、ありが……とう………」



…そんな、素敵で悲しくて、やっぱり嬉しいような、寂しいような、複雑な出来事があったから。


神様は、容易く人の願いを叶えることをやめて、それから、人自身の力で人を幸せにできる可能性を、信じるようにもなりました。


そうして生まれた今の世界を、あなたはどう思いますか?

評価&ブクマ&感想、ありがとうございます!


今回は前回とは全く違う感じを狙って書いてみました(´∇`)


SSってやつですかね。

前回のを気に入ってくださった方には“なんか違う…”という印象を与えてしまうかもしれませんが、個人的には満足の子です。


いやぁ、しかしブクマに評価に感想、やーっぱ嬉しいです。


これからもまた違ったタイプの文章を投げていきます!なにがどう変わってくやら?まだ自分でもわかりません(´∇`)


とにかく楽しく書きたいです。それを楽しんでいただける方がいたら、それこそが最高ってやつですね!


ぼくは、ぼくの願いを自分で叶えますよー!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ