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皇子の初恋  作者: 雷炎
Chapter Two
9/14

Eight episode

今回はいつにもまして短いです。

森の中、その上大きな木の根元にいるとはいえ本降りの雨にムムもアヴァンもびしょ濡れになっていた。「止みませんね。」


「止まないな。ま、いい男は濡れてもかっこいいから大丈夫だろ。」

キランと歯を見せて笑うアヴァンにふぅ…とため息をつくムムは「はいはい。アヴァン皇子はかっこいいですよー。はいはい、かっこいいかっこいい。」と糸目でアヴァンを見ながら心無く言う。


「なっ!!全く、さっきまで泣きながらお礼を言っていたやつには思えないな!!」

ムムは顔を赤くしながら大声で反論する。


「だって!!アヴァン様さっきまではちょっとかっこよかったのにそうやってナルシストっぽい部分見せるから…まあ、ちょっとですけどね?ちょっと。」


「ちょっととはなんだ!!大分、いや、完全に完璧に今もかっこいいだろ俺は!!じゃあ、ムムがさっき俺に抱き着いてビービー泣いていた時に言っていた『おうじぃ…こわかったぁ…たすけてくれてぇありがとぅ…おうじ、ちょぅかっこぃい…あぃしてるぅ…』って言うのは何だったんだ!!」


「記憶に改ざんが見られますが!?身体強く地面に打ち過ぎて変なの聞こえてますよね!?私そんなこと言ってないし!!帰ったら一緒にお医者さんに診てもらいましょうね~頭。」


「頭限定!?」

そんな下らないやり取りをしている間に雨は止み、夕日がさす。

二人は同じ馬にまたがり、ゆっくりと城を目指す。


「アヴァン様?」


「どうしたムム。」


「初めに会ったころに見た軽薄でどこか人を見ず、女を女とも思わずに口説き、(いだ)いたりするアヴァン様ではなく、先ほどのように無駄口をたたき、人を気遣い、ちゃんと面と向かって話していたアヴァン様が本当の本心の本物のアヴァン様だとしたら…私は大好きですよ?」


それを聞いたアヴァンは上手い言葉が見つからず、「そうか。」としか言えなかったが心臓は高鳴り頬の熱は耳まで届き、すぐ目の前にいるムムを抱きしめたい衝動に駆られていた。


そんなムムの顔は前に乗っているのでアヴァンは見えなかったが夕日のせいかそれ以外の要因でなのか

頬が赤くなっていた。

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