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皇子の初恋  作者: 雷炎
Chapter Two
8/14

Seven episode

待っていた方がいましたら遅れて申し訳ありません…。

アヴァンの視界に暴れ馬が時に、馬は丁度馬場の柵を軽く飛び越えているところだった。

皇子も慌てて馬小屋から馬を出しムムを追いかける。

追いついた時には城外の森を走っておりムムはまだ馬にしがみついているが、振り落とされる手前であった。


「ムム!!聞こえるか!?返事はしなくていい、今から俺の言うことをしてくれ!!」

必死な皇子の声はムムに届いていた。もちろん返事はできないが、助けに来てくれたという事実だけで嬉しかった。

「ムム!!まず、前の手綱を強く引いてまっすぐ見るんだ!!体制を立て直してくれ!!馬は止まりはしないだろうが、失速はするはずだ!!」


ムムは言われた通りまっすぐ見ようと恐る恐る目を開け、なけなしの握力で手綱を引きながら体勢を立て直した。馬は少し嘶くとほんの少しだが失速した。

横を見るとアヴァンがぴったりとくっついて並走している。


「ムム、このままその馬が走り、急停止した場合握力を使い切っている今のお前は振り落とされてしまうだろう。怖いかもしれないが、こっちへ飛んでくれ!!」

フィクションの世界でしか見聞きしたことのないようなことを提案してくるのでムムは首を横に振る。


「ムム、信じてくれ!!必ず受け止める!!」

確かに距離はないのだが、手綱を離す?走っている馬に飛び乗る?冗談にしか聞こえないくらい怖い。「ムム!!」アヴァンの大声に奮い立たされたムムは手綱を離し、アヴァンの胸に飛び込んだ。

ムムはそのままアヴァンの腰につかまろうとしたのだが、もう握力がなく馬から落ちる。


アヴァンはそんなムムを咄嗟に庇い、ムムを抱きかかえる形で落馬する。

アヴァンの乗っていた馬はその場に止まったが、ムムの乗っていた馬ははるか先まで走って行ってしまった。


「いっ…ムム!!大丈夫か!?」

アヴァンがムムの顔を見るとムムの目には涙がたまっていた。

そのままムムは地面に倒れたままのアヴァンを抱きしめ「皇子…怖かった…こわかったよ…」と力のない腕で抱き着いたまま震え泣いていた。アヴァンは少し驚きはしたがすぐに背中をゆっくりとさすった。


泣き止み、冷静になったムムはしきりに「ありがとうございます。」と「迷惑をかけて申し訳ありません。」を唱えた。


「ありがとうございました。本当に、ありがとうございました。命の恩人です。お怪我、痛くないですか?ほかに痛いところは?」


「いや、擦りむいただけだ。命の恩人だなんて大げさな…」


「擦りむいて…私のせいで…あ、ここには痣が…」

ムムが今度は自責の念で泣きそうになるので慌てて「大丈夫」と連呼する。


「骨も腱も無事みたいだし、歯もかけてない。心配いらないよ。」

なおも悲しそうな顔をするのでアヴァンは少しお道化ることにしてみた。

「いやしかし、本のようにはいかないね、本当は馬の上で抱きかかえてそのまま帰ろうとしたのに、カッコつかないや。」


ムムがクスリと笑い、アヴァンが内心やったと喜んでいると大降りの雨が降ってくる。

「はぁ、このままじゃ帰れないし泥水で汚れて本当にかっこつかない。」


「…今日のアヴァン様はとってもカッコよかったです。いつもは…かっこいいですけどあれですけど。」


「あれってなんだよあれって…余計だ。」

ムッとするとまたクスクスと笑う。

その笑顔を見てアヴァンはホッとする。

「皇子、本当にありがとうございます。私を落ち着かせるためにお道化て見せてくれたのでしょう?平気だからと言って、助けていただいた恩を忘れるつもりはありませんが、十分平気なのは伝わってきました。」


「そうか…それはよかった。ま、実際体に異変は無く平気だったし…。それに、いつもテンションの低いムムがいつも以上にテンションが低く暗い顔をしているのを見るのは嫌だったんだ。」


「ご心配をおかけして重ね重ねすみません…でも、いつもテンションが低いは余計ですよ皇子?」


「ハハ、そうか。それはすまない。」


「あ、あそこに大きな木がありますよ。あそこで雨宿りさせてもらいましょう?」


「そうだな。」


アヴァンの乗ってきた馬も歩かせながら二人は近くにあった大きな木の下で雨宿りをすることにした。

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