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皇子の初恋  作者: 雷炎
Chapter Three
12/14

Eleven episode

読者と作者は分かっている設定。わかっていないのはムムだけ。いつも短いのにさらに短いです。

雨の日、それは鬱々とした気分になる日、そんな時ムムはたまに一人屋根付きのテラスに出向き、お茶をする。今日の雨はひどく、ガラス張りの屋根には絶え間なく雨粒が降り注いでいた。

気温も少し低く、温かい茶が心にも身にも沁みる。


ふーっとお茶を吹き、一口すする。

マグカップを置いた時にはシュガーさんが音もなく正面に座っているではないか。


「うふっ、この前ぶりねムムちゃん。今日はお菓子はないの?」


「ええ、申し訳ないです。今日はただお茶を楽しんでいるだけで…」

実は私とシュガーさんはあの衝撃的な出会いから度々会って交流を重ねていた。

シュガーさんはこの後宮で出来た初めての友人と言ってもいいだろう。


「なら、一緒にこれを食べましょう!!」

マダムはポケットから飴をたくさん取り出す。

「雨の日に甘い飴をってね。」

マダムは軽いダジャレも似合うような美しい顔でぱちりとウインクして見せる。


二人が無言で飴をコロコロ舐めていると「ここにいたのか!?」とダンディーな40半ば程のおじ様が息を切らしてマダムに近寄る。

「あら、貴方。」

貴方と言っているところを見るにこの二人は夫婦だろう。


理由は分からないが、なぜだかそんな気がした。

二人はとてもお似合いだし、出している雰囲気がバカップルのそれだった。

「シュガー、君はまたこんなところで何を…と、失礼。お嬢さんもご一緒だったとは、これはすまない。私の名は…高名なので伏せておくがシャンさんと呼んでくれて構わないよ。」

私はぺこりとお辞儀をして「ムムです。」と名乗る。


シャンさんは「よろしくムム。」と笑いかけてくれる。

とてもおじ様とは思えないような人懐こい笑顔である。

「…と、シュガー、話に戻るがどうしてこんなところに!?」


マダム・シュガーさんはさも当然というように「お部屋からムムちゃんが見えたから走ってきたの。」と言い放つ。この雨の中窓を見ても何も映らないのだがシュガーさんには野生的な何かでも備わっているのだろうか…。


「君の部屋はこの後宮から大分離れているしなんでこの雨の中このお嬢さんが見えるんだ。野生人か君は。」

言いたいことはムッシュ・シャンさんが全部言ってくれ、内心拍手を送っていた。

するとシュガーさんは少し顔を膨らませて「だって、だってだってだって!!クーくんもアーちゃんも仕事で居ないし、私が趣味のお菓子作りしてると二人とも嫌そうな顔するから好きでもないお裁縫とか本読んでさ!!私もう嫌!!ムムちゃんからも何か言ってよ。」


突然痴話喧嘩のような会話内に放り込まれた。


____そっとしておいてほしかったのだが…この場合どうすればいいのだろう。

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