惜別、そして
切り落とされた魔王の角が、重力に従って地面へ落ちた。
「ああルーナ、やっぱり君って最高! やっと長年の野望を叶えることが出来るよ!」
それを見届けた魔王は、興奮を抑えられない様子でルーナに礼を言った。
「喜んでいただけたようで何よりだわ」
それを聞いてルーナも満足そうだが、何とか止めようとしていた二人はあまりの出来事に愕然としている。
さて、と魔王が周りを見渡した後、いつもと変わらない調子で話し始めた。
「勇者に退治されちゃったから、これで魔王としては皆とはお別れだね。なんだかんだ言って楽しかったし、皆のことは好きだったよ。」
魔王はまずオセを見た。
「オセ、いままで僕の世話してくれてありがとう。けどもう少し僕のお願いを聞いてくれたら嬉しかったかな。次の魔王の言うことはちゃんと聞くんだよ?」
「バティン様……」
オセは魔王からお礼を言われて感激している。後半は聞こえていないようだ。
次にカイムを見た。
「カイム、君のお話はいつもとっても楽しかったよ。けど嘘はほどほどにね!」
「ありがとうございます」
カイムはいつものようににっこりと笑っているが、少し寂しそうだ。
次に勇者。
「リベルト君、短い間だったけど、大切にしてくれてありがとう。ちょっとは悪魔のことも好きになってくれたみたいで嬉しいよ。これからはそこのお嬢さんと仲良くね。」
「私は、君を最後まで守りたかった……!」
勇者は悔しそうに顔を歪めている。
一人一人に声をかけていくうちに、折れた角から魔王の体が砂のように崩れていく。
最後に魔王は私の方を見た。
「アモン、君はいつも僕の傍にいて、一番僕のやりたいようにやらせてくれたよね。純粋な悪魔じゃないから魔王への忠誠本能もそんなに強くないはずなのに、君が一番僕の言うことを聞いてくれて、嬉しかったんだ。ありがとう」
そんなことを言われて、私は何て返せばいいのかわからなかった。面倒くさいのが嫌でそんな態度をとっていただけであって、お礼を言われるようなことはしていない。
そんなことを考えていると、最後に魔王がとんでもないことを言い出した。
「ということで、次の魔王はアモンに決めたから! よろしくね!」
いい笑顔で、魔王が私を指さしている。魔王は指名制だ。魔王の言葉には言霊が宿っており、死ぬ前に指名したものに次の魔王の力が宿る。
つまり。
「は、はあああああ!!!???」
私はこれまで生きてきた中で初めて大声を上げた。そんな私を見ながら、満足そうに魔王であった彼は消えて行った。




