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第8話_仮入部

放課後、ラズベリがグスターを迎えに来た。

「グスターちゃん、これから一緒に遊びましょ♪」

「あ、ラズベリだ♪ やほ~☆」


今日、クラスメイトから聞いたのだけれど、ラズベリは学園内起業をしたということで、かなりの有名人らしい。

文武両道を地で行きながら、リーダーシップがあって格好良いから、女子の間で人気があるとのこと。加えておっぱいも大きいしお金も稼いでいるから、全学年の男子および先生にも人気があるのだと、クラスの女子情報網で聞いた。

まさしく、最強おっぱい女子高生ってやつだろう。


そんなラズベリの登場に、クラス中がざわめき立つ。

「いちご先輩よ!!」

「女神だ! 女神がいる!! ――痛っ! 何するんだよ!?」

「いちご先輩に、何を(よこしま)な視線向けているのよ!! 恥を知りなさい、恥を!!」

「いや、あの胸に反応しないなんて、逆に失れぃ――痛いって!!」

「あんた最低ね!!」

「いやいや、他の男子に聞いてみろ。主木先輩の胸には『愛と勇気と永遠の夢』が詰まっているのだと!!」

「……」「……」「……」

「あれ?」

「『あれ?』――じゃないのっ!! なにを勝手な妄想を大声で叫んでいるのよ!? いちご先輩、本当にすみませんッ! これから、この馬鹿を体育館裏で処刑してきますからっ!!」

そう言って、男子生徒Aを引きずりながら、その幼馴染Bは教室から出て行った。

仲が良いって素敵だね。


「……グスターちゃんの同級生って、面白い子がいるのですね」

ラズベリが苦笑いを浮かべながら話を振ってきた。

「ああ、委員長はもっと面白いぞ?」

「委員長?」

「そうだ。本が好きなやつで、お笑い芸人の才能があるんだ♪ だよな、委員ちょ――って、委員長、どこに行った?」

(みちつき)さんなら、図書委員の仕事があるからって言って、図書室に行ったよ?」

「そうなのか。ラズベリにも会わせたい面白いやつなんだけれど、すれ違いだったか。また今度だな♪」

「ええ、わたくしも楽しみにしておきます」

「うむ♪ 楽しみにしておいてくれ!」


 ◇


ラズベリと廊下を並んで歩きながら、じっくりと観察する。


たゆん♪ ぽゆん♪ たゆん、たゆん♪

「……??」


ぱぽゆん♪ たゆん♪ ぽにゅ、ぽにゅ、にゅん♪

「??? グスターちゃん? そんなにじっくり見られると、女同士とはいえ、流石に恥ずかしいんですけれど……?」


もきゅもきゅ♪ ぺたぺた♪


「はぅぁ~」

「グ、グスターちゃん? 廊下の真ん中で、いきなり自分の胸を触って、どうしたのですか?」

「いや、ラズベリみたいに、おっぱい大きくならないかな~って思って、確認してみたところだったんだ。一昨日と変わらず、小さいままだったけれど……」

ラズベリの胸をじっと見つめる。

その半分、いや4分の1で良いからグスターに分けて欲しい。

そしたら、グスターの胸は2倍になるのに!!


「そ、そうですか。でも、男子生徒も見ていますから、そういうのは廊下でしちゃダメですよ?」

「グスターは気にしないぞ?」

「他の人が気にするんです! グスターちゃんは、ガードが甘すぎますよ?」

「そうか? 別に減るモノじゃな――「ダメです、先輩命令です!」――分かった、従おう♪」

うむ、先輩命令なら仕方がない。

だからラズベリ、ちょっと本気な様子で、じろりっと睨むのは止めてくれ……。


 ◇


ラズベリに案内されながら「異世界トレジャーサルベージ部」の部室兼事務所に向かって廊下を歩いていると、ゆっくりとラズベリが口を開いた。

「昨日の夜からずっと考えていたのですが――グスターちゃんが、うちの会社でアルバイトをすることを正式に許可します。一緒にお兄さんを探しましょう」


ラズベリに言われてから気が付いた。

そう言えば、正式な許可はもらっていなかったな。危なかった、すっかりバイトOKをもらっているつもりでいたぞ。焼き肉、おごってもらったし。

「……その表情は『今日、魔法の適性試験をしてから判断することを忘れていた』感じですかね?」

「え、ええと――それはまぁ、その、うん――置いといてくれ。でも、ラズベリ良いのか?」

「ええ。色々と考えたのですが、魔法の適性試験の結果がどうであれ、わたくしはケモ耳が生えたグスターちゃんを放り出すつもりはありませんから」

「ありがとうラズベリ! このご恩は、多分、忘れるまで忘れないっ!」


「ん? 忘れちゃうんですね?」

ラズベリに冷静に突っ込まれてしまう。なんだろう、ちょっと気まずい。

「え? いや、嘘付く方が不誠実だろ?」

「ということは、恩を忘れちゃうんですよね?」

「……」

「そして、忘れちゃうのですよね、わたくしのことも」

じとっとした視線のラズベリ。その口元がにやにやしているけれど、この言葉を言わずには済まされないだろう。はめられたともいう。

「あ~、もう――忘れないぞ! グスターは、ラズベリのことを忘れないっ!」

「ふふっ、ありがとうございます♪」

グスターちゃんは可愛いですね、って感じで、めっちゃくちゃ良い笑顔を返されてしまった。

くそぅ、ラズベリで遊ぶつもりが、弄ばれた(泣)


でも、ラズベリが言葉を続ける。

「なので、まずは『仮入部届け』を書いて、わたくしに提出して下さい」

「仮入部届け? 何で()が付くんだ?」

「ちょっとややこしいのですが――未成年が異世界に潜ることが原則として法律で禁止されているのは、グスターちゃんも知っていますよね? 危険が多い場所なので」

「知っているぞ。昨日、ラズベリに教えてもらったからな♪」

「でも、『魔力は10代のうちに訓練した方が大きく伸びる』という研究事例があるので、サンプルを作るという意味でも、法律の例外を作っておきたいというのが政府の思惑なのです」

「ふむふむ。それで?」


グスターがピンと来ていないことが伝わったのだろう、ラズベリが苦笑した。

「はっきりと言いましょう。法律の『抜け穴』として出来たのが、うちの会社です。生徒が代表者で、教育の一環として学園も出資している会社ということで、『部活動(教育活動)の一環としてなら、学生が異世界サルベージに関与することを許可する』としているのです」

「ふむふむ。それで?」

「……今の話、聞いていましたか?」

「聞いていたけれど、あまり理解出来なかった(笑)」

「……えっとですね、ちょっと待って下さい、噛み砕きます」

ラズベリが両手で頭を抱えて、10秒くらい考える仕草をして――ゆっくりと口を開く。


「そう――簡単に言っちゃえば『教育の一環(部活動)なら、異世界に潜ってもOK』なんです。それ以外はNG。うち以外の異世界サルベージ会社でバイトしても、異世界に潜ることは絶対に出来ないのです。法律的に『あくまでも教育の一環である』という言い訳が、グスターちゃんが異世界に潜るには必要なのですから」


「なるほど、言い訳が必要だから(・・・・・・・・・)入部届けが必要なんだな、理解した♪ でも、仮入部なのは何でだ?」

「グスターちゃんが、お兄さんの件が終わっても、仕事を続けてくれるのなら普通に入部してもらっても良いですよ? そちらの方が、わたくしも助かりますし」

「う~ん、悪いが、先のことは分からないな。おにーちゃんと会った後、ケモ耳と尻尾が無事に取れていたら異世界に潜ることは続けないかもしれないし、逆に取れていなかったら解決策を見つけるために異世界に潜ることを続けるだろうし」


「ですよね。だから、いつでも辞められるバイト扱いにするためにも、仮入部なんですよ」

「了解した」

「――ということで、話をしているうちに部室の前に、やって来ました♪」

「え? ここが部室なのか?」

ラズベリが部室と言った場所は、校舎の隣にある神社の敷地。

正確には、黒神島神社の「社務所」だった。


神社が部室って――テンション上がるぜよ(≡ω)♪

ちょっと時間があったので、投稿しました。

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