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第29話_シナモン王都

ミント達に見送られながら、ペパーの村を旅立って15日。

ふっふっふ~♪ ついに、やって来ましたシナモン王都。グスターの健脚にかかれば、魔王軍よりも早く王都に着くことは可能なのだっ(≡ω)♪


とりあえず、魔王軍がこの王都を落とす計画らしいから、逃げるように王様に伝えておこう。その上で、委員長率いる魔王軍を無傷で倒して、委員長と話し合いをしたい。

おにーちゃんのことを考えると気持ちがもやもやするけれど、委員長を手放したらいけないことだけは、鈍いグスターも分かっている。

何とかして委員長を説得して、2人で元の世界に戻るんだ!


そんな決意を持ちながら城塞都市の門を通り抜けようとしたら、門番らしき2人の兵がグスターの進路を塞ぐように槍を突き出した。

「ちょっとそこの獣人、止まれ!」

ぴき。


「聞こえていないのか? ――って、良く見たら美形だな」

「よし、詰所に来い。俺達が可愛がってやろう。胸は無いけれど、暇つぶしにはなるだろう♪」

ぴきぴき。


「可愛がってやると言っているんだ、聞こえないのか!?」

門番の1人がグスターに手を伸ばした。

ぴきぴきぴき♪


「汚い手で触るなッ! お前ら、歯ぁ喰いしばれ!」

手を伸ばした兵を殴ろうとした瞬間、グスターの殺気を浴びて、周囲の兵達が腰を抜かす。

うん、殴るまでも無かった――のは良いんだけれど、おっさんのお漏らしは見たくなかったよ……。

「ぅあああああっ!!」「バケものだっ!!」

叫びながら、警笛を兵が鳴らした。


失礼な、グスターは化け物じゃない。

でも、こんな低俗な奴らと会話をしたくないから、無視して街の中に入る。

わらわらと蟻のように城壁の隣にある詰所から兵が出てくるけれど、殺気をぶつけるだけで「ビクンビクン!」ってなって失神する。……うん、正直、魔物よりも気持ち悪い。


城壁の上にいる兵から、矢と攻撃魔法が降ってきた――けれど、自動展開の魔法障壁がそれを防ぐ。視線を上に向けると、「ぐぅ!」とか「がぁ!」とかいう野太い声とともに、こっちに対する殺気が消える。


遠巻きにこっちを見ている一般市民は巻き込まないように気を付けながら、王城に向かって歩いて行く。


直後、フラッシュを焚いたみたいに、空が明るく何度か光る。

それが合図だったのだろう、丘の上に見える王城から騎馬隊がこっちに向かって駆け出してきた。


 ◇


ちゃちゃっと騎馬隊を撃退した後、王城からやって来たのは全身甲冑を着た30名程の集団。

うん、でもさ、上位の兵士や騎士ならば、多少は「会話が出来るかな~」と思っていた頃も、グスターにはありましたよ。


「こ、これ以上近付くな! 近付いたら、おっ、お前の同族が、死ぬことになるぞ!?」

奴隷の首輪と金属の鎖で繋がれたボロボロの「獣人族の男女や子ども」を盾にして、その首筋に剣を添えているのは、この国の正規騎士団(・・・・・)の皆さん。


どこからどう見ても、正義の味方には見えない。

盗賊とかテ■リストだろ? さっきまで獣人族を虐待していたのは、乾いていない獣人族の傷跡と血を見れば分かってしまう。女の人達なんて、目がうつろで死んでいるし。


……うん、魔王軍が来るから「命が惜しいヤツは逃げろ」って言うつもりだったけれど、グスターの認識が甘かった。タライロンに支配された世界を滅ぼす――いやミント達の話だと「虐げられし者」をその手で助ける――魔王軍の方にこそ正義があった。


魔王軍がここまでやって来るのは、あと3日後。

それまで、グスターは待てそうにない。この怒りは、抑えられそうにない。

過度に異世界に干渉することは異世界サルベージの規則で制限されているけれど、どうせ消える国なんだ。消えなきゃいけない国なんだ。

ここでグスターが介入したとしても、何も問題は無いだろう。


だから今すぐ、この国のシステムを壊すと決めた。

邪魔するモノは、全て薙ぎ払う。

殺しはしない。そんな生ぬるい(・・・・)ことじゃ、許されないから。


「お前ら、覚悟しろよ?」

グスターの笑顔と言葉で、周りの空気は凍った。


 ◇


こうして――シナモン王都は、おっさん達の鼻血以外は流れずに、たった5分でグスターの手に落ちた。

事実上の「無血開城」ってやつだと思う。


グスターは、やればできる娘なんだ(≡ω)b

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