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第27話_森の出会い

走って、走って、走って――もう走れない……と草原に倒れ込む。

草の匂い。土の匂い。鳥の声。

そっと目を開けると――


「ぅにゃぁあぁっ!?」


カマキリが羽を広げて臨戦態勢、グスターの顔の前で。

思わず飛び起きて距離をとる。


「ぅうぅっ、ちびっこいくせして凶暴なんだよなぁ、こいつ」

正直、カマキリは苦手だ。いかにも肉食ですと言った大きな鎌は怖いし、何を考えているのか分らない瞳は不気味だし、獲物をバリバリ食べる様子は……キモイの一言(Tω)

台所の黒い悪魔「Mr.G」と同じくらい、グスターの中では要注意指定の生物だ。

そんなことを考えつつ、カマキリを見ていたら――


バタバタバタ!

「ぎにゃぁあぁっ!?」


飛んだ! 飛びやがった!

しかもこっちに向かって!!


「「ぃやぁああああぁ!!」」

グスターの声が森に響き渡った。

……ってあれ? 今、グスター以外の誰かの悲鳴が重なっていたような?

「助けて! 誰かっ!!」

森の向こうから、切迫した女の子の声が聞こえた。


 ◇


瞬動で声がした方向に移動する。

小学校高学年くらいの女の子が、3匹の巨大なカマキリに囲まれているのが見えた。

……(Tω)ノシ

カマキリさん、でか過ぎるよぉ。


でも、女の子を見殺しにするという選択肢は無い。

アイテムボックスから、くないを3本取り出して、カマキリの首を狙って投擲する。

魔力で強化されたくないは一直線にそれぞれのカマキリの頭を落として、森の奥へと消えた。女の子の危機は過ぎ去った。

と思った瞬間、おぞましいモノが目に入る。


「「ぃやぁああああぁ!!」」

再び響く絶叫。悲鳴。金切り声の阿鼻叫喚。

首を落としたカマキリの手足が、わしゃ■■■(自主規制)しているのだ。ひっくり返った黒い悪魔のように。


「ぅうっ、ふぇぇっ……」

グスターが近づけないのを察してくれたのだろう。腰を抜かした女の子が、泣きながら地面をはいずってこっちにやって来る。

「ぅぅぅ……」

女の子が涙を目にいっぱいためながら、カマキリの死骸の横を通り抜ける。

いまだに動きを止めない死骸に近付くのは嫌だけれど、瞬動で女の子に近付いて抱きかかえる。そして、とりあえず150メートル程離れる。

いつまでもわしゃ■■■(自主規制)動くモノを視界の中に入れておきたくないのだ。


「た、助けてくれてありがとうございます」

腕の中の女の子――多分、人族――が、少し疲れたような笑顔でグスターにお礼を言った。ん? あれ? 人族? なんで、こんな魔王城が近い場所にいるのだろう?

「グスターは、たまたま通りかかっただけだ。それよりも、1つ聞きたい。なんでこんな場所に人族がいるんだ?」

「えっと、グスターさんっていうお名前なんですね? 私は、ミントという名前なのですが――その、私は、お母さんの薬草を採りにここまで来ました」

「薬草? わざわざ、魔王城がある場所の近くまで、危険をおかしてか?」


グスターの言葉に、ミントが不思議そうな顔を作る。

「魔王城? えっと、魔王様のお城は、とってもとっても遠い場所ですよ? ここから、馬で1週間くらいかかると思いますけれど……?」


ん? あれ?

泣きながら走っていたから気付かなかったけれど――グスター、かなりのスピードで走っていた? いや、うん、そうだな……走りながら周りの景色が白っぽくて明るい(・・・・・・・・)なぁ~とは感じていたんだが――いや、考えるのは止めておこう。

衝撃波とかの概念は、異世界だから無いのだ!! ということにして。


取りあえず、右手の腕時計を確認する。――おぅふ! あり得ない。

グスターの時計がおかしくなっていないのであれば、15時間くらい走っていたみたいだ。

我ながら、魔法で強化された自分の体力が恐ろしくなる。

「グスターさん、どうかしましたか?」

不思議そうな表情でミントに声をかけられた。


ここで迂闊なことを言って気持ち悪がられるのは嫌だから、話を誤魔化そう。

「ん、いや、何でもない。それよりも1つ聞きたいのだが――ミントは魔王を崇めているのか? 今、魔王様(・・・)って言ったから」

「はい♪ 魔王様のことは大好きです! だって、私達の村をタライロン帝国の支配から解放して、新しい村に移住させてくれましたから!!」

「???」


「魔王様はすごいのですよ! 最初は怖い人かなって思っていたのですが、強くて、優しくて、きれーなお姉さん達をいっぱい連れてて、格好良いのです!! お父さんやお母さん達も、魔王様のことが大好きなんです!!」

「そ、そうか……」

きれーなお姉さんをいっぱい侍らせているんだな。うん、死刑。


――じゃない。もう、グスターはおにーちゃんのことは忘れるのだから。

「ぐ~ぎゅるるぅ~♪」

グスターのお腹が鳴った。

「グスターさん、お腹が空いているのですか?」

「そうだな、そう言われてみたら――めっちゃ空いているな」

「それじゃ、これから私の家に来ませんか? その、助けてもらったお礼をしたいんです!」

ミントに言われてちょっと考える。

異世界の住人と個人的に交流しても良いものかどうか。


頭の中で天使と悪魔が戦いを始める。

「お腹空いているんだろ? 素直に、もらっておけよ?」

「そうです! お腹が減っていたら、何も出来ませんよ?」

うん、満場一致で「食欲には勝てない」という方向で可決された(≡ω)♪


「グスターは、たくさん食べるぞ。良いのか?」

「もちろんです♪ 腕によりをかけて頑張ります!」

「ん、それじゃ、よろしく頼む」

「はいっ♪」

こうして、グスター達は、ミントが住むペパー村へ向かうことにした。


ちなみに、カマキリの魔物は丈夫な武具が作れるから、それなりに貴重な素材らしい。一瞬、魔法箱(アイテム・ボックス)に収納することも考えたけれど――わしゃ■■■(自主規制)している物体を魔法箱に入れるのは無しだなと思ったから、放置することにした。

グスターがいらないって言ったら、ミントが「もったいない」と言い張って聞かなかった。

結局、後で村の人に回収してもらい、カマキリの代金をグスターが半分もらうということになったのだけれど、まぁそれは些細なことだ。


「グスターさん、本当に半分で良いのですか?」

「うむ、別に良いぞ? グスターは元々捨てるつもりだったし、それがお金になるのなら、半分でもお得だからな♪ それよりも、ご飯はよろしく頼むぞ♪」

「はい、もちろんです」


さぁ、村へ向かおう!! 美味しいごはんが待っている(≡ω)♪

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