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第14話_委員長と同人誌

腐女子に認定された(≡ω)♪


――なんていう「高校生活がヤバくなる非常事態」は全力で避けたい。

いや、今、この瞬間が非常で緊急で非情な事態だった。


「えっと、この本、春星さんの持ち物なの?」

「ハイッ☆彡」

「それを何で、委員長ちゃんが持っているの?」

「ハイッ☆彡」

「いや、答えになっていないから……」

ちっ、誤魔化せなかったか。


「そう、その、えっと、色々かつ複雑で個人的な言い辛い事情がありマシテ……」

「理由があるの? 一応、聞いておくけれど……」

「そう! 異世界が悪いのデス!!」

クラスの空気が、ピンと張りつめたのがグスターにも理解できた。

さっきポロッと余計な事(機密情報)を言ってしまったせいだろう。


でも、グスターの口は止まらない。委員長のためにも止めちゃいけない。

「ほら、異世界サルベージのお仕事で使うんだ! 異世界に渡った人から同人誌のリクエストがあって、交渉を円滑にするために必要だったんだ! 委員長、本とかに詳しそうだから、無理にお願いして、グスターが感想を聞くために押し付けちゃったんだ。ごめん、委員長、グスターのせいで腐っていると誤解されて――「私は、腐ってませんっ!!」」


いつも通りの委員長の叫び声に、教室の中が、少しだけ明るくなる。

「グスターちゃんのせいか~」「仕方ないな」「異世界サルベージ部に委員長も巻き込まれていたのか」「大変だね~」

「みかん先生、異世界サルベージ業は、聞いたらいけない機密情報(・・・・)が満載なので、政府に消されたりとか、教員免許を剝脱されたりとかしたくなかったら、あまり突っ込まない方がいいですよ~?」

クラスメイトの一人が口にした言葉に、先生が苦笑する。

「ちょっ、ナニソレ、怖いわよ?」


「冗談では無いです」「俺達も巻き込まれましたから」「何とは言えないけれどね」「就職先が……人生が……」「わ、私は何も聞いていないです!!」「お、俺も何も聞いていないっ!!」

みんなの真剣な声に、先生の顔が引きつった。

「……ちょっと、どんな機密を春星さんが話したのか気になるけれど、聞かないでおいた方が良さそうね……」


先生が、小さく深呼吸をして、言葉を続ける。

「先生、勘違いしていたわ。委員長ちゃん、ごめんね、春星さんのお仕事に必要なモノなら仕方ないわ。でも今度からは、教室じゃなくて、部室に置いておくように!!」

若干引き気味だけれど、先生は分かってくれたみたいだ。


「ハイッ♪」「……はい」

「それじゃ、他の人の持ち物検査をしますよ!!」

そう言って、先生は教室を周り始めた。

ふっふっふ~♪ 人助け完了!!


でも、何でだろ? とても良い事をしたはずなのに、グスターの順番で「猫じゃらし(エクスカリバー2号)(100均のやつ。ちなみに1号は鈴木さんちの犬に破壊された)」が没収された。くっ、この聖剣が無いと佐藤さんちのツンデレにゃんこ(≡ω≡)が遊んでくれないのにっ!!


「勉強に必要無いものは、学校に持って来ちゃいけません!!」

「い、異世界サルベージ部で、つ、使うんだ……」

「じぃ~っ」

「スイマセン、嘘付きマシタ。佐藤さんちのにゃんこ専用デス」

「反省文400字で返してあげるから、レポート用紙に書いて、放課後以降に持って来てね?」

「ハイ、ワカリマシタ……ガンバリマス」


ぅうっ、えぐっ、世の中は理不尽だ。


 ◇


放課後、委員長がグスターの席の近くにやって来た。

「ん? 委員長、どうかしたのか?」

「……さっきは助けてくれて、その、あ、ありがとぅ」

デレた~~~~~っ!!

チラチラと視線をグスターにあわせながら、顔を赤くして言葉を口にする委員長に、何だかこっちも恥ずかしくなる。

「な、何のことだ? グスターは、別に何もしていないぞ?」


ぴこぴこ。ふりふり。

ぴこぴこっ♪


「……グスターさんって、嘘がつけないのですね。ケモ耳と尻尾が動いていますよ?」

「ち、違うんだ。これは、そう、違うんだ!」


ぴこぴこぴこっ♪


「くすくす」

可笑しそうに委員長に笑われてしまった。

でも、こんな委員長は、初めて見るかも?

委員長って、笑ったら可愛いんだな(≡ω)


委員長が言葉を続ける。

「その、私も――異世界サルベージ部へ見学に行っても良いですか? 良かったら、グスターさんと同じ部活に入ってみたいんです!」

「???」


「異世界で、同人誌を欲しがっている人がいるのなら、こんな私でも力になれると思うんです。その、異世界に行った人には、漫画やアニメが好きだった人もいるのですよね? 私が同じ立場だったら、読んでいた漫画の続きが気になりますし、教えてもらえるなら知りたいと思いますし――」

委員長の言葉で、グスターの頭の中で電球が点灯した。

「委員長は天才だな♪ 早速、異世界トレジャー・サルベージ部に行くぞ!!」

「え? ええ、分かりました」


 ◇


「――ということで、債権回収の対価に漫画やアニメの最新情報を伝えるのは、友好的なサルベージを長く続けていくのに有効だと、私とグスターさんから提案させて頂きます」

グスターのアイディアを委員長が綺麗にまとめて、ラズベリ達の前で発表してくれた。


いわく、得られる莫大な利益と比べたら、元手は数万円とタダ同然。

いわく、新巻が出るごとに新しい資源を要求することが可能になる。つまり、長期的な視点でサルベージが可能になることを意味する。

いわく、転移&転生者には、元オタクだった人間が多い。潜在的なニーズがあると思われる上、彼らと共通の話題を持つことで、より一層の友好関係を築くことが可能になる。

いわく、課題がいくつかある。1番大きいモノは「異世界に日本の文化を持ち込んで良いのか?」という課題。日本政府の許可が必要になると思われる。


ずっと大人しく話を聞いてくれていたラズベリが、ゆっくりと口を開く。

月桂樹(みちつき・けいか)さん、素晴らしい提案を、まずはありがとうございます――と言わせて下さい」

「いえ、こちらこそ……いきなりだったのに話を聞いて下さって、ありがとうございます」


緊張している委員長に、にこっとラズベリが微笑む。

「今まで、漫画とかアニメを有効活用する案も、出るには出ていたのですけれど――」

「けれど? 何か、不都合なことでもあるのか?」

グスターは待ちきれなくて、つい聞いてしまった。

ラズベリが苦笑する。

「――いいえ、不都合なことは何も無いですよ。ただ、今までアニメや漫画といった方面に詳しい人材が、うちの会社にはいなかったんです♪ わたくしも実ちゃんも、漫画とか小学生以降は読んでいなかったですし、アニメもあまり良く分からなくて……」

「……(恥ずかしながらボクも、昔の少女漫画くらいしか知らないんだよね)」


「だから、桂樹ちゃんに手伝ってもらえると嬉しいです。ちなみに、日本政府の許可は大丈夫だと思います。すでに漫画を使ってサルベージの交渉をしている会社もいくつかあるみたいですから、政府に『どの程度までなら情報を渡して大丈夫なのか』ということさえ確認を取れば、すぐに実行可能だと思います」

ラズベリの言葉に、委員長がほっとため息をつく。

「それは良かったです。断られたら、私が異世界トレジャー・サルベージ部に貢献できることが無くなるところでしたから」


小さく、くすりっとラズベリが笑う。

「桂樹ちゃんは、異世界トレジャー・サルベージ部に入ってくれるんですよね?」

「はい、主木先輩。グスターさんには助けられましたし、私自身が異世界に興味があるんです。その……魔法とか……使ってみたいですし……」


「うんうん、それじゃ――適性試験を受けてくれますか?」

「……(全ては、そこからだね。適性が無いと、異世界サルベージ活動は危険なだけだから。その場合、後方支援になるけれど、良いよね?)」

ヴィラン先輩の言葉に、一瞬だけ不安そうな表情を浮かべたけれど、委員長はきっぱりと宣言する。

「は、はいっ、頑張ります!!」

ラズベリとヴィラン先輩が笑顔になる。


委員長、がんば~(≡ω)ノシ

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