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第13話_久々の学校

「はぅあ~、久々の学生生活は癒される~ぅ♪」

1時間目の授業が終わった後の休み時間。

机に突っ伏して、佐藤さんちのにゃんこのマネ「のびのびにゃんにゃん(≡ω≡)ノシ」をしていたら、委員長が話しかけてきた。


「だらけていますよ、グスターさん。まぁ、今日は授業を真面目に聞いていたみたいだから、グスターさんにしては関心ですが」

「ん? その『しては(・・・)』って言い方、何気に褒めていないよな?」

「もちろんです。私がグスターさんを褒めるとでも?」

委員長がグスターから視線を外す。

「いや、そんな期待はしていないから(≡ω)b」

「いらっとくるドヤ顔ですね?」

「あははっ、バレタ♪」


「で? 何をそんなに疲れているのです? グスターさんが、どうしてもって言うのなら、私が話を聞いてあげなくも無いですよ?」

「委員長~、熱でもあるのか? 気持ち悪いぞ?」

「きもちわる――っ!! 失礼な!! もう、あなたなんて知りませんっ!!」

「あ~、もうすぐ授業が始まるぞ?」

グスターの言葉を無視して、委員長は教室から出て行った。

2時間目ギリギリに委員長は帰って来たけれど、目を合わせてくれなかったのは――少し非道いと思うんだ。


 ◇


2時限目が終わった後の休み時間。

「委員長、聞いてくれ!! 最近、異世界に潜りっぱなしだったから、学校が唯一の息抜きなんだ!!」

「……知りませんよ、そんなこと」

「しゅ~ん、グスター撃沈……。チラ、チラ、チラッ?」

「いらっと来ますね、グスターさんは! 口で可愛く言っても、無駄です!」

「あはは♪ 可愛いって褒めてもダメだぞ?」

「褒めていません!!」


「ツンデレってやつだな? グスターに惚れたのか?」

「――っ!!!」

「あ、あれ? 委員長、どこ行くの?」

「お手洗いです!」

「あ、それじゃ、グスターも一緒にお花を摘みに行くぞっ♪ 1階に行くか? 2階に行くか?」

「グスターさんはどちらに?」

「ん~、1階の方が空いているから1階に行く! 近くの花壇にハルジオンの花が咲いていたから、ついでにそれも摘んでくる♪」

「じゃ、私は2階に行きますので、ここでお別れですね」


「えっ、なっ、ちょ、ツッコミは? 『花壇の花を摘んじゃダメデス!!』とか『ハルジオンは雑草デス!!』とかいうツッコミ期待していたのに――って委員長、2階に行くの!? グスターと一緒に連れショ――「ちょっ、何を言おうとしているのですか、あなたは!?」――え? 連れ――「そんなこと、しませんっ! 早くしないと、休み時間、終わっちゃいますよ!?」」

そう言うと、委員長は行ってしまった。


「漏れそうなのか? 委員ちょ――「違いますっ!!」」

委員長、意外と地獄耳なんだな~♪


 ◇


3時間目の休み時間。

次の時間が選択科目の美術だから、教室を移動しようと思ったのだけれど――委員長は気付いたらいなくなっていた。さっさと1人で行っちゃったらしい。


「グスターちゃん、一緒に行こう♪」「美術だよね?」「ケモ耳触らせて♪」

クラスメイトの女子に誘われる。

一通り耳をモフモフされた後、教室を出る。

「それにしても、グスターちゃんは凄いよね~」

「何がか?」

「あの委員長に話しかけられるんだから」

「ほえ?」

「ほら、委員長って、ちょっと話しかけづらいじゃない? いつも本ばかり読んでいて、話しかけても『はい』とか『そうですね』って返事しかしないし……」


「そうか? 委員長は面白いぞ?」

「え?」「そんなこと無いよ?」「無い無い♪」

「いやいや、委員長はツッコミに切れとコクがあるから、絶対にお笑い芸人の才能があると思うんだ♪」

「あははっ、グスターちゃんは凄いね~」

「委員長相手に、そんなこと言えるなんて勇気があるよ? あの人、ちょっと怖くない?」


「いやいや、委員長は真面目そうな顔をしているが、実はツンデレなんだ」

「??? 委員長、ツンデレ、なの?」

「ああ。佐藤さんちの猫々(ねこねこ)にゃんにゃんと同じなんだ♪」

「なにそれ、可愛い~♪」

「ねこねこにゃんにゃん?」

「そう、猫々にゃんにゃんだ!! あいつもツンデレだから、グスターの煮干しを、今日も3匹しか喰わなかったけれどな♪」


 ◇


4時間目が終わって、お昼休み。

なんと、委員長の方からこっちにやって来た!!

「ついにデレたな、委員長♪」

頭を撫で撫でしてやろうと思ったのに、ふいっとかわされてしまった。

「――っ、やっぱり、グスターさんが噂の元凶でしたか!!」

「元凶? うわさ?」

「委員長は『ツンデレ☆ねこネコにゃんニャン♪』とかいう風評被害に遭っているんですよ!!」

「委員長――」

「何ですか? 謝罪しても、受け入れませんよ?」

「いや、イントネーションが違うと思って。『ねこネコにゃんニャン』じゃなくて『猫々にゃんにゃん♪』だ!!」

「……そう、それは良かったですね」

それだけ呟くと、委員長は教室を出ていった。


 ◇


5時間目。委員長は帰ってこなかった。

女子情報網によると、気分が悪くて保健室で休んでいるらしい。

……心配だな。


5時間目が終わったら、お見舞いに行こう!!


 ◇


「はぅあ~、久々の学生生活は癒される~ぅ♪」

5時間目は自習だから、気兼ねなく机に突っ伏して、佐藤さんちのにゃんこのマネ「のびのびにゃんにゃん(≡ω≡)ノシ」が出来る。


右耳を動かして、次に左耳を動かして――尻尾ふりふり、ふ~りふりっ♪


「ああ、もうっ、可愛い!!」

「グスターちゃん、集中できないから、可愛い動作禁止!!」

「そうだよ、授業中とか、めっちゃ気になるんだからねっ!」

「ほえ?」

気になるって言われても、グスターは普通にしているんだが?


「それでさ、朝から気になっていたんだけれど……『久々の学生生活は癒される』って言っていたけど、昨日も普通に学校来ていたよね? どうして『久々』なの?」

「あ、そのことか。よくぞ聞いてくれた! ラズベリの人使いがとっても荒いんだ!! ブラック企業も真っ青なくらい、労働時間が長いんだ!!」

「ラズベリって、いちご先輩のこと?」

「そう、名前が『主木いちご』だから異世界で使っている偽名がラズベリって言うんだ」


「へぇ~、知らなかった♪ 今度、ラズベリ先輩って呼んでみようかな?」

「あ、それは止めておいた方がいい」

「何で?」

「今の話、一応、うちの会社の企業秘密というか機密事項だから♪ 下手に話すと、ラズベリにお仕置きされるぞ?」

「――っ、ちょっ、そんな大切なこと、ぽろりと漏らさないでよ!!」

「あはは~、すまん♪ みんなも聞かなかったことにしてくれよな?」


「……まぁ、仕方ないな」「聞かなかったことにする」「主木先輩に怒られるのは、ご褒美――「あんた、また私に〆られたいの!?」――いや、げふんげふん!!」


「ところでさ、労働時間が長いって……グスターちゃんは、いちご先輩を『放課後に手伝っているだけ』なんじゃないの?」

「ああ。こっちの時間で3時間くらい異世界に潜っている」

「??? それで長いとは言わないんじゃない?」

クラスのみんながこくこくと首を縦に振る。


「そう思うか? そう思えるなら、うちの部活に入部してくれ! 異世界は、バラツキがあるけれど、平均して地球の60倍の早さで時間が流れるんだ。――だから、異世界時間換算だと3時間が60倍で180時間になるんだ。毎日、放課後に3時間分、お仕事なんだ……otz」

「うぁっ、何それ!?」

「180時間って、約1週間じゃない!!」


「ぐ、グスターちゃんにとっては、今日は1週間ぶりの学校だったのね?」

「そうだ。学校生活は、とても素晴らしいと思い知ったよ……」

「……部活、辞めようとは思わないの?」

「ケモ耳&尻尾の件があるから、辞めようにも辞められないんだ。一生、ケモ耳を抱えて生きるのは、ちょっと辛い。ケモ耳熟女はまだ許せるが、『ケモ耳ばあちゃん』とかなると、もう妖怪の仲間だからな……」


「あ~」「何となく、大変なのは分かった」

「ところでさ、部活? 会社? の時給を聞いても良い?」

「……。地球時間での時給で『7500円+歩合』だ。事務をしている敏腕弁護士や会社経営者のおばちゃん達と同じ時給なんだぞ☆」

「うっ、数字のマジック――恐ろしい」

「3時間×7500円÷180時間だから……」

「時給125円?」


教室がシンとなった。

「……私、異世界が地球の60倍の早さで時間が流れるって知らなかったけれど、将来的に異世界サルベージ業者にだけは、就職するの止めてお――「あ~、ごめん、一応、日本政府指定の重要機密の1つだから、時間の流れが違うこと、聞かなかったことにしてくれ。迂闊に外で話したら、色々な圧力かけられるかも? テヘっ☆彡」


「や~め~て~!!」「圧力って!!」「ちょ、俺は聞いていないぞ!!」「わ、私も!!」


「ふふっ、冗談だ♪」

「はぁ~、冗談かぁ♪」

「一瞬、本気にしたよ」

「――って言うのが、冗談だからな? マジでこのことを外で話すと、就職どころか人生が色々な意味で不利になるって聞いたぞ? いや、『終わる』だったかな?」

「「「ぅああぁあっ!!」」」


「――っ! あなた達、何を騒いでいるんですか!? 授業中ですよ!!!」

「あ、委員長♪ お帰り!」

「やっぱり、元凶はグスターさんでしたか」

委員長が教室の中に入って来る。


「委員長、気分悪いの大丈夫か?」

「……。で、何を騒いでいたのです?」

「えっとだな、異世界では――「グスターちゃん、ダメっ!!」「被害者をこれ以上、増やすわけにはいかない!!」「委員長、逃げて!!」――ってことらしいから、委員長には言えない」

「そうですか、私だけ仲間外れにするんですね。良いですよ、別に……」

委員長の表情が暗い。心無しか、口元がぎゅっとなって、泣くのを我慢しているみたいだ。

って? あれ?


「委員長? 違うんだ! 仲間外れにしている訳じゃ――「うるさい! うるさい! うるさい! うるさい! あなた達なんて大嫌いですッ!!」――委員長? ――「ぐしゅ……こっち見ないでよ!!!」」


委員長が泣いていた。

でも、グスターは、声をかけられなかった。

「すまない、邪魔した……委員長……ごめん」

「ぅっく、ひっぅ、えっく……」

委員長が泣く声だけが、しばらくの間、教室に響いた。


 ◇


「やっほぉ~。6時間目は、みんなの担任の先生が、生物の授業をするぞぅ~♪ ――って、みんなどうしたの? 何か微妙に、お通夜みたいな雰囲気だけれど?」

「何でもありません」

「ちょっと、自分達の将来が――「言うなッ! 消されるぞ!!」」

「えっと?」

先生が不思議そうな顔を作る。でも、委員長が言葉を発した。

「先生、授業を始めて下さい」

「あ~、委員長ちゃんもそう言っているし、授業、始めるわよ?」


 ◇


授業が始まって15分。先生がパタンと教科書を閉じた。

「うん、みんな、何か隠しているでしょ?」

「いえ、何もありません」

委員長が否定するけれど、先生は首を横に振る。


「隠しごとは良くありません。――ってことで、緊急持ち物検査しちゃいま~す♪ みんな、机の上に鞄の中身を出して下さいな。拒否権は有りませんのであしからず♪」

「えっ、ちょ――」「持ち物検査とか聞いていない!!」

「やべぇ、俺、エロ本持ってきてる♪」

「セクハラ禁止!!」

「自分でバラす方が、ダメージ少ないだろっ!!」

「はいは~い、それじゃ始めるわよ~」


先生が笑顔で教壇を降りる。

委員長が不機嫌そうな顔で鞄を開けて、中身を机の上に出す。


「まったく、うるさいですね!! さっさと済ませましょう、授業が遅れます!」

「そうだね~、って委員長ちゃん? コレハ……ナニ?」

「はい? 何かいけないものでも入っていましたか?」

「いや、その、堂々と宣言されても――どんなに薄い本でも、漫画は持って来ちゃダメでしょ?」

「え? 薄い本(・・・)!?」

委員長が固まった。いや、教室の一部の男子と女子が固まっていた。

その横で先生が、漫画をぱらぱらとめくって――顔色を変える。


あ、コレはグスターも何となく分かる。

ジャパンの偉大なる創作物、BLってジャンルの同人誌だ♪

「こ、これは? 三青♂×2番目の神♂のカップリング?」

「あの、えっと、その……」

委員長が真っ赤になって、ぷるぷると震えている。


「委員長、意外だよね~」「ああいうのが、好きなんだ?」

「腐ってるって言うの?」「あ、ひどっ!」「それは無いわ」


委員長は、今にも、泣きだしそうな顔をしていた。

……。何だろう、この気持ち。

気が付けば、思わず立ち上がって、叫んでいた。

「その同人誌、グスターのデスッ!!」


みんなの視線がグスターに集まった。クラスメイトも、先生も、委員長の視線も。


さて、どうしよう。

このままじゃ、グスターは腐女子に認定されちゃう……(Tω)

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