第11話_魔法講座とパワーレベリング
ふっふっふ~。
異世界のルール講座のテストは100点だった!!
異世界魔法理論講座も理科の授業を覚える要領で、85点をとれた!!
そして、いよいよ魔法の実践講座。大魔導師グスター様の伝説が始まるのだ!!
――とか、思っている時もグスターには有りました(Tω)
「何で魔法が発動しないんだ……? メニューのステータス情報じゃ、MPはまだ余裕があるのに」
星屑落下でMPが全部切れたから、ラズベリにMP回復薬をもらって飲んだのだ。
ちなみにアレは、もう二度と飲みたくない代物。めっちゃ、苦かった。
「……(気合いが足りないんじゃない?)」
「いえいえ、グスターちゃんは気合いが入り過ぎていますよ。もっと、肩の力を抜いてみて下さいな」
ヴィラン先輩とラズベリが、全く反対の勝手なことを言っている。
仕方無い、良い所取りをしてみるか。
「ああ、分かった。肩の力を抜いて、気合いを入れるぞ!」
すーはーすーはーと深呼吸をする。
「それじゃ、炎槍の詠唱を始めて下さい」
ラズベリに言われた通り、50メートル離れた的に向かって魔法を放つ用意をする。
「火の精霊よ、炎の槍となって敵を穿て――炎槍!!」
ぽしゅっ?
そんな音を立てるだけで、炎槍は発動しない。短い詠唱なのに、間違えていないのに、発動してくれないんだ?
ちなみに、水槍も雷槍も風槍も氷槍も土槍も光槍も闇槍も、試してみたけれどダメだった。
グスター、魔法の才能ないのかな?
魔法使いになりたかったのに……必殺技とか欲しかったのにッ!!
ぅうぅぅ~。異世界のいぢわるっ!!
「ぼっとして、びゅっとして、あっちの的が、ば~んってなれ――炎槍!!」
ボッ! びゅっ! ドガァン!!!
「「えっ?」」
「出来た♪ 出来たぞ!!!」
「……(いや、今の適当な詠唱だったから)」
「でも、グスターの詠唱で、発動したぞ?」
うん、ちゃんと魔法が発動したのだ♪
「なんで、今ので発動するのですかね?」
「……(分からない。威力も普通の炎槍じゃなかった。かなり強力)」
「どうしましょう?」
「……(どうしよう?)」
「何のことだ?」
「……グスターちゃん、試しに、他の魔法も同じように使ってみてくれますか? それで発動するのでしたら、魔法の適性試験は合格とします」
「どの属性でもいいのか?」
「ええ」
「んじゃ、教えてもらった全属性を試してみるぞ♪ ――ぼっとして、びゅっとして、あっちの的に飛んで行け! グスターの使える色々な属性の槍よ!!」
自分でもかなり適当な詠唱だと思うが、無事に水槍、雷槍、風槍、氷槍、土槍、光槍、闇槍、その他、色々な槍が50メートル先の地面を穿つ。
虹色の槍や、回復属性の槍なんかも出来ていたから、魔法って不思議なんだな♪
「……」「……(信じられない)」
「ん? どうかしたか?」
グスターの言葉に、ラズベリが我に返る。
「え? あ、えっと――魔法実技は、大丈夫そうですね。この調子で、弱いモンスターで実戦経験を積んでみましょうか」
「……(ラズベリ、いいの?)」
「戦力になるのなら、大丈夫でしょう」
ラズベリとヴィラン先輩が何か目線で話し合っているけれど、グスターにとってはそんなことはどうでも良い。
「やった~っ!! ついに、グスターの戦いが始まるんだな!!」
「……(不思議だけれど、まぁ、良いか)」
「あとで詳しく調べましょう、時間は、たっぷりあるのですから♪」
◇
社務所からかなり離れた草原の真ん中。
具体的には、グスターが吹き飛ばした鎮守の森の4つ先にある、別の神社の鎮守の森。
ぱっと見た感じ3kmくらいの距離で、実際移動したら15kmも離れていたんだけれど、ばっちゃんに教えてもらった縮地の要領で、足に魔力を流して走ったら、あっという間に着くことが出来た。
「……(いきなり長距離の瞬動が使えるようになるなんて、グスターさんはやるね♪)」
「忍術を、教わっていたと言うだけはあります」
「うむっ♪ ばっちゃんは、凄かったんだ!!」
「それじゃ、この勢いで、朝の3時までパワーレベリングしましょうか」
「え? 流石にソレはきついぞ? 明日も学校だし、睡眠時間が欲しいかも」
グスターの言葉に、ラズベリがにこっと笑う。
「大丈夫です。休憩や睡眠、食事はしっかりと摂る計画ですから」
分からない、という表情をしていたのだろう、ヴィラン先輩が補足してくれた。
「……(グスターさん、不思議そうな顔をしているね? こっちの疑似異世界が、地球と比較して60倍で時間が流れることを忘れていない?)」
ちらりと時計を見る。
現在時刻は20時ちょっと過ぎ。こっちの異世界にやって来たのは、18時前だったから、実質、あっちの世界ではまだ18時過ぎくらいだろう。
「えっと、地球の時間で朝の3時まで修行をするのか?」
「はい、そうですよ♪ 疑似異世界なら、睡眠時間は毎日6時間は確保できる計算になりますでしょう?」
ラズベリに言われて気が付いた。
疑似異世界の時間は地球の60倍だから、単純計算で9時間×60倍=540時間=約22日間。
わぁい、いっぱい修行ができるね♪
……って違う!!
ちょいとハード過ぎじゃないデショウカ!?
「ラズベリ、いきなり22日間も異世界に潜るのは――」
「ほらほら、さっそくゴブリンが現れましたよ? グスターちゃんの魔法で倒して下さい♪」
「ちょ、ラズベリ!」
「ん? 早くしないと、危ないですよ?」
にこっとした笑顔。それだけでグスターは理解した、拒否権は無いのだと。
「う、ううっ……。ぼっとして、びゅっとして、ゴブリンAが、ば~んってなれ――炎槍!!」
試しに青い炎をイメージしてみたら、バーンってなりマシタよ、消炭も残らずに。
「うんうん、この調子で魔法にアレンジを加えながら、倒していきましょう♪ MPの効率を考えないと、魔力切れになるから気を付けて下さいね?」
「……(にっがい魔法薬で良いのなら、たくさんあるよ? と、ほら、またゴブリンが♪)」
「う、ううっ……。ぼっとして、びゅっとして、2つに分かれて、ゴブリンAとBが、ば~んってなれ――分割炎槍!!」
「……(おお~、炎槍を2分割するなんて聞いたことがないよ)」
「どんどん行きましょう♪ いけると思ったら、近接戦闘もアリですからね?」
なんでだろう、ラズベリもヴィラン先輩も嬉しそう。
グスターの戦いは、これからだ(泣)