召喚?なぜあなたがそこにいるの?
「お約束的展開?」ってレビュー多ければ、アンチヒーローものに変えていこうかと思っています。
プロローグ(大島ミミという女)
大島美海は巷にいう女子大生である。
趣味は野球。
背は165cmくらいであり、筋肉質な体ははっきり言えばスポーツをするには小さく、
同性からみれば少し背が高いぐらいか。
ミミは自分のことが好きではない。
私のことを褒める人間には出会ったことがない。
唯一私を褒めているとしたら、「あいつは顔だけ」って言われるだけだ。
その言葉は私のトラウマになりつつある。
そのトラウマは私の男嫌いを発症させたのかもしれない。
中学高校は女子校で最初から男と関わることがなかったし、
大学でもアルコールに弱い体質もあるし、マネージャーにされたくなかった私は男がいる野球サークルを嫌って
中学から一緒の友達に誘われた演劇サークルに入って小道具を作っていた。
出会いなど求めてこなかった。
そんな私にも出会いと運命が訪れた。
相手は大学のサークルの花形の男の子だった。
デートだってした。それが幸せだと感じられた。
今までそんなものがつまらないことだとしか感じられなかった私にもそれが分かった。
きっとそれが今の私の不幸なんだろうと思う。
私はため息をついていた。
裏切られた。そういう思いしかない。
吸った息は熱く燃える炎に吸い込まれていく。
今の私の周りを火が赤々と照らし、焦げたような匂いを発しながら私を囲んでいる。
この結末も私がいかに自制できない人間かを知っている人間なら予測できたのかもしれない。
ある意味野球で鍛えた体は性別の差も人数の差を埋めてしまった。
私は裏切り者たちを部屋に閉じ込めていた。
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自分の部屋には、裏切り者と女が縛り上げられている。
不思議なことに裏切り者は女をかばうように体をよじっているが、縛り上げられたためかそれは不可能だ。
「キチガイ女」
「狂人」
「人間のゴミ」
「先に私たちが付き合っていた」
そんな言葉が私に投げかけられている。
非常に腹立たしい。こんなことを思うのも私が短気な性分だからだろう。
それに裏切られたせいか嘘をついているのだと私は確信を持ってしまう。
もはや私に正論を振りまく気もない。
元々が短気極まりない私としては『地獄の苦しみを味わせたい』って願ってしまうのだ。
自分の彼女だった人間をキチガイ呼ばわりしながら怒鳴りつける彼らを見て、
その都度私は「好かれようとする努力を彼らにももう少しして欲しかった」と思った。
そして、消防車を携帯でコールし、自作の火炎瓶に火をつける。
そして彼らの最期のための餞別を用意する。
私はとびっきりの笑顔で笑いかけ、連中どもの足元に投げつけた。
投げながら彼女はふと大事だった高校生の時の友達に別れを思い出していた。
自分の双子の姉(中学は別だった)や、そして高校の女子野球部の仲間達のことを思い出す。
不思議なことに、友達を頼って相談できなかったと後悔があった。
トラウマは私の気持ちを小さくしていたのかもしれない。
彼女は火の回っていない2階の押入れから自分の野球道具と、
姉からの仕送りのお金が入った通帳とカードを取り出すと防火の機能がついた金庫にしまい外に放り投げる。
そして、最後には縛り上げた2人が逃げ出せないで燃えていることを確認すると、
2階の部屋で部屋が炎上するのを待っていた。
そして有毒ガスを吸い込み眠るように気を失ったのだった。
そして、まるで2日は寝ていたかのような気だるさと体の痛みを感じながら彼女はなぜか目が覚めた。
そして、彼女は目の前に人がいることに気がついた。
「おはよう、ミミ。体に痛みとかない?大丈夫?」
目の前には自分そっくりな自分の双子の姉である小百合の顔がそこにはあったのだった。
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久々に見た姉の顔を見て、驚きがかくせない。それに自分の体に痛みがあるのにミミの体には傷一つなかったからだ。それに姉が目の前にいると言う現実、そして起きてしばらくして分かったが中学に入る前にミミたちが住んでいた家にいるようだった。その目線を受けて、姉は察したのか話し始める。
「ざっと説明されたから、あまりよく分からないことも多いのだけど、私たち異世界に召喚されたみたい。」
「ざっくりすぎて分からないし、、ありえないでしょ、、って、だれが説明したのよ?」
「神様かな?さっきまでソファーに座ってたんだけど、、?」
見回してみると、どうやらここは私の家のリビングのようだ。
そして、私の双子の姉であるノキア姉が神様とやらがいたらしいソファーの上で落ち着いた様子でコーヒーを飲んでいる。
その神様は男だったのだろうか?女だったのだろうか?
そもそも人間じゃない可能性もあるかもしれない。
もしかして、グロ路線の神様?少し吐き気がしてきた。
私はどうやら寝袋みたいなものに入っていたようだ。
ついでにこれも父の持ち物である...。正直、気色がわるい。
そして、いまになって思ったのだが、まさか、
「お姉ちゃんまさか、、」
「そのまさかでさ、、。昨日、海外に旅行に行っていたら飛行機が落ちちゃってさぁ...。ついでに聞くけど、ミミも?」
「........。(こくり)」
「言いたくないなら言わなくていいよ。ついでに死ね前に、飛行機が何かに攻撃されていたから色々と謎が多いわ。」
「お姉ちゃんはいつの間にか命を狙われるようなことしたのねぇ..。」
「うーん。始末が完璧じゃなかったのかしら?最初はミサイルで攻撃されたから、なんとかしたんだけどジャンボジェット内に小型核を積んであるって理不尽よね?誰かを敵に回したことはないわよ。敵になりそうなやつは早めに始末するのが私の流儀なの。命狙われてもやり返す自信はあるんだけど、さすがに私も空中では非力だったわ。」
こんな会話をしていてわかるように、ノキア姉は海外で傭兵業を生業にした凄腕さんである。銃は苦手らしいが、剣術や自己流の格闘術を使う武道マニアである。しかし、あの姉ですら死ぬとは軟弱な私は姉の後をついて軍隊に入らなくて正解だったのかもしれない。だが、どこかの小説サイトにある小説の通りなら姉一人で異世界はイージーモードだろう。
「神様はなんで私たちを召喚したって言ってた?」
「人間滅ぼして欲しいから、戦闘力の高そうな人を選んだっていってた。ついでになんでミミが召喚されたかって話は、私が『ミミが心配だから召喚されても何もする気はない』って言ったら、『姉妹ペアで召喚かぁ、面白そう』っていいだして、神様が勝手にねぇ。」
この神様とやらは、邪神と類で人間を滅ぼしたいらしい。
私が死ぬのに合わせて、召喚をしたとか...。
なにそれ、明らかにハードモードじゃない!
神様、どこにいるんだろう。私が何を好き好んで人間を滅ぼさなければいけないのか。
この前手に入れた黄金のバットがあれば神様を名乗るそいつを叩きのめしたいものだ。ぜひ。
しかし、会った時から私との再会が嬉しいのか、にこにことノキア姉さん(今私の前に紅茶とクッキーを置いてくれている気の利く人である。あ、これ美味しい。)が説明しているというのに神様が現れる気配がない。
決して我が姉は親切だが、説明用のNPCではない。
神様早う出て来なさい!っていうか本当は説明を聞き続けるのが短気な私には我慢ができない。
姉がいる時点でイージーモードなのだからルールブックはガン無視でもオッケーなのだ。
「ありがとうお姉ちゃん。もう説明はいいよ。なんかその神様とやらは読んで理解出来るようにまとめてなかった?」
「神様が私のパソコンに『異世界読本』っていうファイルを作って入れてたみたい。いつでもいじっていいよ。ゲストアカウントから見れるようにできたからいつでも気を使う必要性なんかないから。私の持ち物だけど触っていいわよ。」
神様よ。姉のパソコンいじるとかまじで肝が座っているな。
姉は他人に自分の持ち物を触られるのが何よりも嫌いなはずだ。
過去に私も怒られてやらないように念押しされてるし、今もニコニコしているはずなのに血管浮き出ている。
正直怖いから後回しにしておこう。とりあえず私がフォローはしておくべきだろうか?
「神様とやら、他人のパソコンまでいじるなよw。この部屋、異世界らしさはないしここ本当に異世界?結局、どうするのさ?これから?」
「この私たちの家は『天空の城』っていうダンジョンの名前でいつでも帰れるんだって。ドアに触れて、行きたい街の名前を言えば転移できるらしいよ。最初だけは転移の対象がないから、ドアをあけて20000mの高さからスカイダイビングだってさ。私に対する当てつけな飛行機ネタでこのダンジョン作ったんだって、笑えないよねぇ。」
何それ!恐いよ!そして姉は人差し指を立てながら説明を続ける。
「神様が特別に飛び降りるために、私たちに飛行のアビリティを付けてくれたから最低限レベル10になるまで家の中で練習しとけって言ってたよー。アビリティーの確認は目をつぶって手のひらを合わせるとできるみたいだよ。基本アビリティーの特殊発動は目をつぶった操作が多いみたいねー。そして、わた..」
「ちょっと待った。普通こういうレベル上げって簡単にできないよね?」
「今そのこと説明しようとしたんじゃないの。もう昔から焦って我慢ができないのね。私のアビリティーの一つにプリントっていう能力があるから私が一生懸命練習した飛行のスキルを練習の記憶と一緒に写し込める。最初は記憶を整理するために頭がかなり痛くなるみたい。10分ほどかかるけど練習する時間はもったいないから我慢出来る?」
正直、頭痛いのは嫌だが、痛みに耐えるのは苦手ではない。
仕方のないことである。私だってだだっ子じゃないんだからこのくらい我慢出来る。そのはずだ!
「じゃあ髪の毛よけておでこだして?」
「?」
昔、小さいころ熱があるかどうかはかるためにやる「こっつんこ」って奴である。
「『プリント』」
そう唱えると、記憶が高速再生されるように流れていく。
痛みも先に話に聞いていたからか大丈夫なようだ。
どうやら、飛行という技術は風魔法的な要素が入るものから、翼を作って使うものまであらゆる要素があり、姉の必死な訓練の様子が頭に刻み込まれていくのがわかるとともに、背景知識もたくさん私の頭に加わっていくのだった。
そして10分後
「うわー。こんなにもらっちゃっていいの?」
「いいのいいの。私たちは、人間滅ぼすんだからこんくらいやらなきゃねー。」
「そうだねー。」
彼女の知識と綿密な計算能力をもってすれば人間を滅ぼすことができると踏んだらしい。
姉の話を聞いて行くと異世界の人間がなんで神様に嫌われたのか手に取るようにわかった。
つまるところ、邪神様とやらの眷属たちがほぼ全部絶滅さられてしまったからだ。
もともと神とやらは生物やエネルギーをかたどったものであり、人間を殺すことで人間を支援している神様の力を奪えるのだそうで。
それだけではなさそうだが、姉は単純にこの邪神という神を利用して元の世界に戻るやり方があることを確信し協力しているらしい。
ちなみに絶滅せよ、人を助ける神を殺すべしと姉にしつこく念押ししていた神様に姉は右ストレートを炸裂させて黙らせたそうな...。
「さてさて、準備もできたことだし外行くか!」
「いやいや異世界読本はどうするのよ?」
「忘れてた。」
「なんかすぐに死亡する死亡エンドが見える気がするのは私だけなのかしら.......?やはり、妹を部屋の柱に縛って...」
「ちょっと、聞こえてますよー、そこ!てか印刷してから下に降りて読むからオッケーなの!ほらいくよ!」
(といったわけで、物凄い場当たり的な感じでアタックする妹を私は白い目で追いかけるのでした:ノキア談)
ある日、バッティングセンターに行くと、ミミは老人に聞かれました。
「あなたが湖に落としたのはこの金のバットですか? それともこの銀のバットですか?」
「私が落としたのは男に恵まれる運だけです。」
「あなたは正直者ですね、ご褒美に全て差し上げましょう。」
「重そうだしバットケースに入らないよ。木のバットはありませんか?」
「ちぇっ、在庫処分できそうだったのに」
「おい!」
そして、ミミは今日は金のバット(15キロ)でバッティングセンターで練習をするのでした。
「くそ重いわ!今日は90キロのゲージでやるか。」