腕の中の幸せ
ああ、最高。幸せ。
小さな身体を腕の中に閉じ込め、俺は幸福を噛みしめる。
「ね、楽しいの?」
「楽しいっつーか、どっちかってーと幸せ、だな」
少し見上げるように振り向いてきた彼女に俺はにへ、と顔を緩ませて見せた。すると彼女はそっか、と俺の腕の中をもぞもぞ動き、身体を預けてくる。
あったけー。ふわふわ。柔らかい。
彼女に後ろから覆いかぶさるように抱きしめ、長い足の中に閉じ込めてしまう。
少し傷み気味のふわふわした髪に鼻を寄せて匂いを嗅げば、こいつがいつも使っているシャンプーの匂いがした。
……寝落ち、してくれねぇかな。そしたらベッドに運んでもっと、ぎゅーってできるのに。布団に入って朝まで一緒に寝ちゃえるのに。……俺の彼女は寝つきが悪く、寝落ちなんてまずできない人間である。そこが少し残念だ。
「くすぐったいよ……」
「ん………」
肩に回っていた腕を脇腹に差し込み、おなかをギュッて抱き寄せる。腕の上側に柔らかい肉感が乗っかった。
「ちょっと、やめてよ……」
「いーじゃん……柔らかいし」
少し険しい目をする彼女の頬にキスを落とす。機嫌なおして、大好きだよ、という意味を込めて何度も唇で触れた。
いやらしい気持ちには、ならない。ただ、腕の中にいる女の子が愛おしい。くびれた腰、柔らかい胸、甘いミルクのような匂い、もちもちの頬、長い睫毛、みんなみんな俺にないものですぐに壊れてしまいそうに見える。
小さな手が俺の腕に添えられる。まるで桜貝のような小さな爪は、クラスの派手な女子とは違いトップコートなんか塗っていない。柔らかい、小さな手……。
デオドラントなんか使わないから彼女本来の匂いに包まれて、幸せになる。
「好きだ」
「うん、わたしも」
「大好きだ」
「……急にどうしちゃったの?」
ただ、伝えたかっただけだよ。
そう言って笑ったら、彼女は少し体勢を変えて俺の胸に頬をすり寄せた。
「あったかいね」
うん、俺もあったかい。