病魔の足音
晴れてアパレル会社に就職した私を待ち受けていたのは、入社一週間後から始まった残業地獄!!
ちなみに私の仕事は婦人服のパタンナー。
職人さながら黙々と仕事をこなしていく。
そんな中、夜7時をすぎると、夜食の手配が始まる。
9時以降も仕事をする人の為に…。
通勤に一時間半かかる会社を選んだのは全て憧れのパリ・ロンドンの為!
泣き言は言ってられない!
残業だろうが何だろうが、かかってこい!!
最初のうちは、終バスに間に合う時間に帰っていたが、毎日会社と家の往復だけの生活に辟易し始め、残業帰りに先輩や同僚と飲みに行く機会が増えていった。
仕事柄、ファッションも、その当時流行っていた《デザイナーズブランド》を、高いなぁ…と知りつつも、同僚達の影響で買い漁りだした。
毎月の給料も、服代、飲み代、タクシー代にほとんど消えていく始末。
ひたひたと歩み寄る浪費癖…。
唯一3万円だけは家にいれていたが…。
会社に出入りする銀行マンの勧めで、クレジットカードを作らされ、いざというときのカードローンもつけられ、お金のない不自由さから解放されてしまった私。
忙しさにかまけて通帳の記帳すらせず、ATMでお金を下ろす為、カードローンのせいで残高不足になっていても気付かない。
借りている事すら実感がなくなっていきはじめた。
現金が残り少なくなり始めると今度はクレジットカード。
ブランドの服だって躊躇することなく買えるんだから。
そんなこんなで迎えた、生まれて初めて貰った夏のボーナス。
たしか給料の1ヶ月分。
嬉しかったのも束の間。
カードローンとクレジットカードの引き落としですっかり消えてしまった。
でも今までの借りた分、全てチャラになった事だし、まぁいいか~。
貯金する事なんか全く頭になかった。
冬のボーナスを積み立てすればいいや~てな具合で。
すっかり返済できた私は、これまで以上に浪費癖がエスカレートしていった。
気がつけば、毎月の給料のほとんどがローンとカードの返済で消えていった。
毎月のカードの返済額を減らす為、とうとうカードでの支払いを《ボーナス一括払い》にするところまでいってしまったのである。
カードでの領収書が増える…増える…増える…。
買い物依存症…病魔に冒され始めていることにも気付かなかった。
ボーナス一括だから、今月は大丈夫!
現金がなくなれば、キャッシングでなんとかなる!
利子の事など一切おかまいなし、どんどん深みにはまっていった。
そして、待ちに待った冬のボーナスを貰う日をむかえた。