18話 ((((;゜Д゜))))しまったぁぁぁぁぁ
――しまった。完全にハメられた。
教祖は焦る。
セレナに指をさされた瞬間、
貴族たちの視線が“驚愕”から“憎悪”へと変貌していく。
本来なら完璧だったはずの計画。
だが、魔道具による扇動を“死の恐怖”が一度上書きし、
洗脳がほぼ解けてしまっていた。
しかも今、その効果は
セドリックとセレナ側に完全に利用されている。
セレナ達に向けていたはずの敵意が自分に向いてしまったのだ。
(……まずい。このままでは“扇動の対象”が私になってしまう。
なんとしても流れを取り戻さねば!)
「ま、惑わされてはいけません皆さんッ!!」
教祖は声を張り上げる。
出来れば、人前に目立つ形で出ることなど避けてきた。
だが今はそれどころではない。
「セムテラム教典第二十五条・ハラムの章ッ!!
そこには、“紫の光は悪魔の証”と明記されています!」
声を震わせながらも必死に叫ぶ。
「セドリック様の能力で紫が視えたのは、
悪魔の力を一時的に共有しただけ!
決して“悪魔でない”証明にはならないのです!!」
ざわり、と空気が動く。
再びセレナへ憎悪が戻ろうとした、その瞬間――。
「おっかしいですねぇ~」
ベルンがひょいと手を挙げた。
「その教典に書いてあるの、“紫の色が視える悪魔がいた”って話ですよ?
“紫が視える=悪魔”には繋がりませんよね?」
「…………!」
「紫の光は悪魔の証なんて書いてないのに
なんで教典の内容をゆがめてまで今嘘をついたんでしょうね?」
会場に、ざわめきが走る。
「そういえば……そうだ」
「嘘をついているのはあいつだ」
「捏造しゃないか」
再び空気が揺らぎ、教祖への不信が積み重なる。
そこへ――
「さて、皆に問おう」
再び、宰相の声が響く。
ゆっくりと宰相が歩み出た。
声は静かだが、誰も逆らえない“刃”を含んでいる。
「先ほどの議論の本質は、
“魔力が視える悪魔”が教典に記載されていたか、ではない」
ひたり、と教祖に視線が突き刺さる。
「最大の問題点は――」
会場全体が息を呑む。
「真理の灯教会 教主、ハインリッヒ・ヴェルム」
セドリックの声が鋭く冷たくなった。
「あなたが “紫の魔力=悪魔” という噂を流した事実を、
たった今、否定しなかったことだ」
その瞬間。
ざあっ……!
貴族たち、兵士たちの視線が一斉に教祖に集まる。
先ほどまでセレナに向けられていた殺気が、
そのまま倍以上の濃度で教祖へ突き刺さった。
動揺の色を隠せない教祖を見下ろしながら、
セドリックは薄く笑った。
「言い逃れのできぬ“事実”が一つ」
静寂が落ちる。
「紫の光=悪魔 と定義したのは、
他ならぬ “貴殿” だ」
宰相が指さした。
それが、決定打だった――逃げ道はもうない。




