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15話 勝った( ̄ー ̄)ニヤリ<フラグ(´・ω・`)

 


 がちゃん、と音が響いたあとの広場は――凍りついていた。


 倒れた夫人と、とびかかったセレナ。そして泣きそうな子供。

 床には記憶保存の宝珠が砕け散らばっている。


 誰もが息を呑み、誰もが理解できず、

 時間だけがぎこちなく進んでいく。


 そんな中、最初に口を開いたのは。


「……なぜ、“今”突き飛ばしたのでしょう?」


 杖を手にした教祖ハインリッヒだった。


 低く、ひんやりとした声がホールに落ちる。


「その《記憶宝珠》に何が記録されていたのか……

 私には分かりません。

 しかし、なぜあなたはそれを“破壊した”のでしょう?」


 その言葉に、周囲がざわっと揺れた。


「言われてみれば……確かに」

「やましいことがなければ、あんな行動するか?」

「夫人の証言を、封じた……?」


 ――うまくいった。


 教祖の口元が、確信に染まる。


 リーデン伯爵夫人は混乱し、宝珠を壊した衝撃で腰が抜けかけている。

 エルマー君は怯え、どうしていいか分からず母にしがみつく。


 そして広場にいる全員が、セレナを“疑惑の目”で見始めていた。


 セレナは青ざめ、言葉を失う。

 宰相セドリックも、突然の状況に一瞬だけ動揺し、動けない。


 教祖の攻撃しようとした魔力が“見えていた”のはセレナだけ。

 他の人間に認識できたのは、


 夫人が証言しようとした


 セレナが突然タックルした


 宝珠が壊れた


 その三点のみ。


 宝珠には《何の証拠も入っていない》。

 だが――見た者がどう受け取るかは別問題だ。


(印象操作として、十分)


 本来なら、こんな曖昧な状況証拠で裁けるわけがない。

 法廷であれば、一瞬で弾かれる主張だ。


 ――しかしここは法廷ではない。


 煽り、感情を揺さぶり、人心を暴れさせればいい。

 この会場で暴発させ、セレナと宰相を“消せば”いい。


(難しい……だが、不可能ではない)


 教祖の国で開発された“特級魔導具”。

 それは人の心の不安・恨み・恐れを増幅し、

 “殺意”へ変換するための試作兵器。


 今回の盗聴器は、その兵器を普及させる前の実験――単なる布石にすぎない。

 本命ではない。失敗してもどうとでも挽回できる。


 だが、あの少女の視る能力はどう考えても脅威にしかならずここで確実に消しておかねばならない。


 精神を惑わせる香はすでにホールに満ちている。

 宰相たちが対策をしているのは密偵から聞いていた。


 その前で、セレナがぎゅっと拳を握りしめ、立ち上がった。


「違います。私は……守ったのです」


 凛とした声だった。


「ほう。では――何から守ったのです?」


「あなたが夫人に向けて放った《紫の魔力》です。

 あなたは夫人に“攻撃魔法”を放っていました!」


 教祖が待ち望んだ言葉がセレナの口から紡がれた。


 その瞬間。


 ゾクリ。


 会場の空気がかわる。


 “疑念”が“恐怖”へ。

 “恐怖”が“怒り”へ。


 ――会場中の視線が、一斉にセレナへ向けられる。


 それは、恐ろしいまでにむき出しの――殺意。


 トリガーが発動したのだ。


(……勝った)


 教祖は静かに、確信した。


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