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14話 ((((;゜Д゜))))何事!?


「な、何事ですか!?」


 突然兵士に囲まれ、夫が悲鳴のような声をあげた。

 エルマーも驚いて、思わず私のドレスの裾をぎゅっと掴んでくる。


(ごめんなさい……でも、あなたのためなの)


 私はそっと息子の背を撫でながら、第二皇子が指差している少女たちを見た。


 ――我が家が“呪われている”と吹き込み、

 自分たちで怪異を起こす仕掛けを置き、

 夫と息子を欺いた、憎むべき少女たち。


 これは“作戦”だ。

 教祖さまの言う通りにすれば、悪魔は排除できる。


 第二皇子が『皇族権限』で捕らえてしまえば――

 男爵家程度では抗議などできない。

 伯爵である夫が止めようとするなら、私が全力で阻止するだけ。


(捕まえさえすれば、あとは教祖様が何とかしてくれる)


 夫を騙し、息子を惑わせた憎い少女――


「この少女たちは魔道具を用いて倉庫を爆破した!

 ハルシュタイン商会の利益のために、競合の商品に盗聴器を仕掛け、

 その罪を隠すためだ!!」


 第二皇子の声が響く。


 兵士が少女たちを捕らえようとし――私がほくそ笑んだその瞬間。


 ばんっっっ!!!


 扉が開く。

 視線が集まる。


 そして――


「わが愛しのレディに対する狼藉は、その辺でやめてもらおうか?」


 一瞬だけ訪れた静寂を打ち破るように堂々と現れたのは――宰相セドリック・ヴァルハイトだった。


****


「何を言っている!? この子は倉庫爆破犯だぞ!!」


 セドリックに抗議するかのように第二皇子が叫ぶ。

 兵がセレナへ手を伸ばそうとした瞬間、

 セドリックとベルンがすっと前に出た。


「ほう。では、その証拠を提示していただきたい」


「そ、それは言えない!あなたはこの少女と懇意なのだ!

 皇族特権の逮捕権はいくら宰相でも覆せぬはず!!」


 第二皇子は追い詰められた獣のように叫んだ。

 皇族特権の逮捕を拒めるのは本人の身分のみ。


 セドリックは静かに片眉を上げた。


「ええ、皇族特権――帝国法に確かに記されている。

 だが、皇子。あなたもご存じのはずだ。

 “公爵家には適用されない”と」


「な……貴様に言っているのではない!! この少女――」


 第二皇子は途中で言葉を飲み込んだ。


 そう、セレナは“未婚の女性”。

 公爵家との繋がりは、今のところ――ない。


(まさか……だから法務省に入り浸って……)


「察しがよくて助かるよ」


 セドリックは微笑み、セレナの手を取って宣言した。


「我、セドリック・ヴァルハイトは――

 セレナ・ハルシュタインとの婚約をここに発表する。

 よって、わが婚約者に手を出すことは絶対に容認できん」


 そして軽々とセレナを抱き上げてにぃっと笑う。


「はいっ! 私は宰相閣下と婚約しました!

 逮捕されるいわれはありません!

 これが世にいうマイ・ダーリンです!!」


 セレナが得意げにぎゅっと抱きつくと、


 ――ざわっ!!!


 会場中が騒然となりどよめきが広がる。


「そ、そんなものが……許されると思っているのか!!

 そいつは悪魔だ!!」


 第二皇子が必死に叫ぶが、兵士たちの表情には迷いが生まれていた。


「悪魔? 彼女のどこをもって悪魔呼ばわりしているのか」


「その女の家の商品だ!

 それを使ってから私は頭痛がひどい!

 調べたら“睡眠妨害の魔道具”が仕込まれていた!!」


「では尋ねよう。

 それは“いつ”仕込まれた?

 購入時か、後からか――調査はしたのか?」


 第二皇子は一瞬で蒼ざめ、目をそらした。


「い、いや……だがハルシュタインの商品から……!」


「後付けは容易だ。

 それ以上に問題なのは、“なぜ非公式の形で皇族法を用いた”かだ」


 セドリックの言葉が突き刺さる。

 誰が聞いても皇子側が不自然だった。


 セドリックはセレナのおでこに軽くキスすると、

 兵士たちへ静かに告げた。


「さて、問おう。

 皇族法を乱用した皇子と、法を遵守する公爵家。

 君たちはどちらが正当だと思う?」


 兵士たちは互いに目を見交わした。

 皇子側の兵士たちからみてもこの逮捕には無理があるのだ。


「も、申し訳ありません! セドリック閣下が正当です!!」


 一斉にひざまずいた。


****


 ざわざわざわ。


 セドリック様と手を繋いだまま、

 私は連行されていく第二皇子を見送りました。


「違う!! 皇子は正しい!!

 あの女は悪魔だ!! 皇子は悪魔を排除しようとしただけ!!

 彼女は――悪魔なのよ!!」


 リーデン伯爵夫人が叫びます。

 場の視線が一斉に夫人へ向きました。


「そうよね、エルマー!!」


「えっ……?」


 困惑したようにエルマー君が私と夫人を見比べます。


 答えられるわけがありません。

 私は悪魔でもなんでもありません。

でも母親を裏切りたくないというエルマー君の気持ちもわかります。


「今ここで証言させましょう!

 なぜあの女が悪魔なのか、いまここで!」


 夫人が懐から何かを取り出そうとしました。


 その瞬間――


 “紫の光”が、夫人の眉間へ一直線に走るのが視えました。


 教祖が杖を掲げ、その先端に濃い魔力の塊。

 それと夫人の眉間を繋ぐ“紫の糸”が一直線に。


 もしかしてあの魔力の塊をあてるつもりかもしれません。


 そのすぐ隣には、エルマー君がいます。


 考えるより先に、エルマー君を守りたい一心で体が動いていました。


 私は全力で夫人にタックルをかけ――


 ぱしんっ!!!


 私が夫人を押し倒し――夫人の手にあった“何か”が、弾け飛びました。



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