12話 失敗(´・ω・`)?
がちゃん!!!
セレナが近づいた瞬間、
銅像の内部に隠されていた盗聴器が弾け飛んだ。
(……ふむ。ハルシュタイン家の神子は、本当に“見えて”いるらしいな)
男は、仕込んでおいた爆破音と盗聴遮断を確認し、ゆっくりと息を吐いた。
この盗聴器は、現文明の測定器ではまず感知できない微弱魔力で稼働する。
国家機密レベルの試作品――普通ならまず、気づかれない。
それを、あの少女は感知し、破壊した。
(あの神子の感知能力は、こちらの想定を大きく超えている。
今後、同種の魔道具を使うたび、真っ先に嗅ぎつけてくるだろう)
男は顎に手を当て、淡々と結論づけた。
「……倉庫の証拠ごと燃やした以上、今回の件は引くしかあるまいが」
(――計画は失敗だ。だが……)
男はポケットから魔法石を取り出し、微笑を浮かべた。
(ただ逃げるだけでは終われない。
あの“魔力が視える少女”が生きている限り、我々の技術は無力化される。
国を離れる前に――あの神子だけは潰しておく必要がある)
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「こりゃまた豪快に燃やしたね」
黒焦げの倉庫を前に、第一皇子が肩をすくめる。
火は鎮火し、そこには変形した金属片と焼けた魔道具の残骸だけが転がっていた。
「我々の捜査が入る直前の爆発です。証拠ごと処分したのでしょう」
セドリックは焼けた金属片を拾い、指先で弄ぶ。
「となると……結局“決定的な証拠”は掴めなかった、か?」
「――本来なら、そうなります」
「本来なら?」
皇子が片眉を上げると、セドリックは小さく笑った。
「今回に限っては、“こちらだけ”手札が増えたのです。
相手の優位は《測定不能な魔力で動く盗聴装置》を持っていたこと。
しかし、セレナがそれを視認できると判明した瞬間、完全に崩れた」
「……つまり?」
「次に彼らが動くなら、狙いは魔道具ではなく――神子本人。
そこが、我々が罠を張れる唯一の入り口です」
セドリックは、黒く焦げた金属片をぐしゃりと握り潰した。
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「教祖様!! これはどういうことですか!?
盗聴器が仕掛けられていたって、本当なのですか!!」
真理の灯教会の神殿。
信者の貴族夫人が、教祖ハインリッヒへ詰め寄る。
「何のことでしょう?」
「主人の友人が言いました! 盗聴器が銅像から出てきたと!
……ずっと信じていたのに!」
「貴女の信頼は、その程度ですか?」
「え?」
「冷静に考えてください。
本当に“盗聴器”だったと、どうして断言できるのです?」
「そ、それは……」
「その銅像を調べたのは?」
「……主人の知り合いが」
「そうです。そこに答えがあります。
あなたと私を引き離すために、彼らが一芝居打っただけです。
どうか私を信じて――そして協力を」
「協力……?」
「はい。我々を害そうとする者たちを、排除するのです」
その時、夫人は気づいていなかった。
部屋に満ちた、甘く、妙に濃い香り。
それが、少しずつ思考を溶かしていることに。
ぐらりと視界が歪む。
「では――まずは第二皇子殿下を、こちらにお呼びなさい」
柔らかな声音のまま、命令だけが鋭く刺さった。
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「お姉ちゃん!」
自宅の庭で、植物を鑑賞していたところにエルマー君とリーデン伯爵がやってきました。エルマー君が嬉しそうに駆け寄ってきてくれます。
「突然訪ねて、すまない」
「セレナ、相手をしてやっておくれ。私達は商談に行くよ」
伯爵が頭を下げ、父も笑顔で迎えました。
「わかりました」
私はエルマー君と庭のベンチへ向かいます。
我が家で一番景色のきれいな場所です。
すると――
「セレナ」
ふいに、背後から声が降ってくる。
振り返ると、いつの間にか宰相閣下が立っていました。
「宰相閣下。今日はどのような御用で?」
「君の父上に話があってな……来客中か」
「はい。商談の最中です」
「ここで待たせてもらおう」
「では、執事にお伝えしてきます」
そう告げたところで、袖をくいっと引っ張られた。
「ねぇ、お姉ちゃん。お姉ちゃんって……“視える”んだよね?」
「たぶん、ですが」
「……僕、もしかしたら“視える”かもしれない」
「……え?」
「母様の周りにね……最近、“紫っぽいオーラ”が見えるんだ。
一人でぶつぶつしてる時だけ。
糸みたいにふよふよしてて……なんだか、誰かに引っ張られてるみたいで」
私は、息を呑んだ。
――それはまさに、第二皇子を見たときと同じ“色”。
「どういう状態だ?」
宰相閣下が声を落として尋ねる。
「うまく言えないけど……すごく、気持ち悪いの」
説明を聞き終えた瞬間――
宰相閣下とベルン様が、わずかに視線を交わしました。
空気が、静かに張り詰めるのを私は感じました。




