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土の聖子と魔法の先生

 これは、ルカが回復魔法を学びたいと言ってからしばらく経った時の話である。

 今日は、ルカに回復魔法を教えてくれる先生に挨拶をする日だ。

 先生はすでに、応接室に来ているそうで、ルカは数人のお付きを連れて、応接室に向かっている。

 ルカは先生についてほとんど何も教えられておらず、すごく回復魔法が上手らしいということしか知らない。

 名前も知らなければ、性別も年齢も分からない。

 そのため、人見知りなルカは大変緊張していた。

「だ、大丈夫、かな……」

 ルカが敵に睨まれている小動物のように、ぶるぶる震えながら、か細く呟く。

「大丈夫ですよ、ルカ様」

「そうですよ。すごい先生なんですよ」

 お付きはルカを落ち着かせようと、笑顔で明るく話しかける。

 だが、ルカの顔はどんどん青くなっていく。

「そんなすごい先生なの……怖いかな……」

 そんなことを言っていたら、応接室に到着してしまった。

 ルカは扉の前で、ずっとおどおどしていたが、部屋に入らないわけにもいかないので、覚悟を決めて、大きく息を吸う。

 そして、まだ不安は残るが、穏やかで明るい笑みを浮かべて、扉を開け、部屋に入る。

「失礼します……」

 ルカは恐る恐るソファーに座って、机を挟んだ向こう側のソファーに座っている先生を見た。

「はじめまして、ルカ・フェアチャイルド様。アガサ・デ・ベルクールと申します。これから、よろしくお願いしますね」

 先生は綺麗に礼をして、ルカに笑いかける。

「……は、はじめまして……。ルカ・フェアチャイルド、です……。よ、よろしく、お願いします……。」

 ルカも緊張でカチコチになりながら礼をして、途切れ途切れの挨拶をする。

 アガサは苦笑いで、これは時間がかかるなと思った。

 だが、アガサは様々な場所で働いたことがあり、中には魔法に力を入れている学校で講師をしたこともある。そこには、ルカと同じくらいの年齢の子どももたくさんいたので、アガサは子どもと接することに慣れている。

 アガサはとりあえず、授業より先に、二人で話でもして仲良くなろうと計画を立てた。

 ルカはまだぶるぶる震えており、声を発することすらできずにいる。

 そんなルカにアガサは笑いかけて、静かな声で話しかけた。

「ルカ様は本がお好きなのですね。普段、どんな本を読むのですか?」

 アガサは応接室に本が多く置かれていることから、ルカは本が好きなのではないかと推測したのだ。

 その質問が嬉しかったのか、ルカは少し肩の力を抜くことができた。

「……色んな本を、読みます」

 ルカの顔が少し柔らかくなっており、言葉が止まる回数が幾分か減った。

 そんなルカが可愛らしいと思ったアガサは、威圧感がでないように気をつけながら、ルカと話を続ける。

「私も子どもの頃は本が大好きで、たくさん読んでました。そこの本棚に入ってる、その魔女のお話も好きでしたね」

 その言葉にルカの顔がぱあっと明るくなる。

「僕もその本読みました!主人公が大好きで、面白かったです!」

 いつの間にか、ルカは生き生きとした笑顔で、元気に話すことができるようになっていた。

 アガサの手腕は素晴らしいもので、アガサは数時間でルカと打ち解けることに成功した。それどころか、ルカの人見知りまで和らげてみせた。

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