火の騎士は唐突に
ジュリアン・ローズが騎士団から除名されることが決まってからというもの、騎士団は何かと忙しかった。
エリーナが騎士団内での嫌がらせや、喧嘩がないかを徹底的に調べ上げたのだ。
それによって、先輩騎士と新人の間でのトラブルや新人の怠けなど、騎士団には思ったよりも様々な問題があることが分かった。
マルクとコリンとアイラは、エリーナに騎士団内の調査を手伝わされていたので、かなり忙しかった。
ようやくそれらが落ち着き、マルクたちはほとんどいつもの日常に戻っていた。
今日は久しぶりの休暇だ。
いつものマルクなら、休暇であっても訓練場に行き、訓練をするのだが、今日は一人で街を訪れていた。
昨晩、マルクは布団にくるまりながら、考え事をしていた。
「なあ、コリン」
「どうしたの?」
「アイラに何かお礼したいんだけど、どうしたら良いと思う?」
マルクは、自分を守って怪我をしてしまったアイラに対して、お礼をしたいと思っていたのだ。
だが、何をすればいいのかよく分からないらしい。
「お菓子とかアクセサリーとか買ったら良いんじゃない」
「たしかに!」
マルクは、冷静なコリンが出した案を採用し、街にプレゼントを買いに来たのだ。
ちなみに、マルクはスイーツを買おうと思っている。
そして、マルクは街で一番人気だと言われているスイーツ屋に行った。
そこで、マルクは箱に詰められているマカロンを買った。
マカロンは小さめだが、色とりどりで、上にドライフルーツやナッツなどが乗っていて、とても可愛らしい。
それがアイラにぴったりだと思ったのだ。
「で、良いもの買えたの?」
マルクが寮の部屋に帰るとすぐに、コリンが不安そうに聞いてきた。
「大丈夫だって!」
マルクは自信満々に胸を張っている。
「明日の訓練のあとに渡そうかな」
そう言って、マルクは明日のことを考えた。
その時、マルクはとあることを思いついた。
(そうだ、どうせなら……)
その日、マルクは緊張でビクビクしながらも、楽しみでワクワクしながら寝ることとなった。
次の日の訓練後、マルクは訓練場のそばにある、ちょっとした休憩スペースにいたアイラに声をかけた。
「アイラ!ちょっと時間あるか?」
「うん、あるけど……どうしたの?」
マルクは持っていたマカロンをアイラにそっと手渡した。
アイラはそれをぽかんとした顔で、戸惑いながら受け取る。
アイラがとても戸惑っていることに気づいたマルクが、むず痒そうに後頭部を掻く。
「スタンピードの時、その……あ、ありがとう」
マルクが気恥ずかしそうにしているのを見て、アイラが吹き出して、笑う。
「全然良いよ!悪いのはジュリアンだし」
アイラはいつも通りの笑顔を浮かべている。
それにつられて、マルクもいつも通りの無邪気な笑みを浮かべる。
そして、マルクは何の前触れもなく、いつもの元気な口調で、想いを言葉にした。
「アイラ、お前が好きだ!」
アイラは一瞬驚いて、目を見開いた。
だが、すぐに笑顔になって、勢い任せにマルクに抱きついた。
アイラはマルクの胸に顔を埋めていたが、すぐに顔を上げて、マルクの顔を見つめて、笑顔を浮かべた。
「私も!」
そして、しばらくマルクとアイラは抱き合ったあと、夕日を背に、手を繋いで寮の方へゆっくりと歩いて行った。
なんだかんだで、面倒見が良く、心配性なコリンはそれを、遠くからそっと見守っていた。
ちなみに、この騎士団では、寮と食堂以外の場所にお菓子を持っていくことは禁じられている。
だが、そんなことは誰も気にしていなかった。




