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火の騎士は鈍感

 マルクは勇敢で積極的でありながらも、どこか子供のような無邪気さも兼ね備えた人物だ。

 イグニス学校での成績は非常に良く、勉強は得意なのだが、少し天然なところがあり、合わない人とはとことん合わない。

 騎士団には人当たりの良い人が多いし、コリンの助けもあったので、騎士たちとは割と仲良くできていたのだが、一人だけ絶望的に合わない騎士がいた。

 貴族出身の騎士、ジュリアン・ローズだ。

 マルクとジュリアンが合わないのは、マルクの天然さも原因の一つではあったが、ジュリアンの横暴な性格も大きな原因であった。

 これは、マルクがジュリアンにいじめられていた時の話である。

 マルクはいつものように、訓練場へ向かっていた。

 今日は、いくつかのグループに分かれて行うそうで、コリンは先に訓練場へ向かっていた。

 マルクが訓練場に向かって歩いていたその時、後ろからジュリアンに声をかけられた。

「今日の訓練、十時からって言ってたけど十二時になるってよ」

 マルクとジュリアンは同じグループなので、ジュリアンは訓練開始時刻の変更をマルクに教えに来たのだ。

 だが実際は、訓練開始時刻は変更されておらず、マルクが失態を犯すように、ジュリアンが嘘の情報を言っているのだ。

「そうなのか!ありがとう!」

 ジュリアンの言葉を見事に信じたマルクは、笑みを浮かべながら、ジュリアンに礼を言う。

「これくらい、どうってことないさ」

 ジュリアンはニヤリと不敵な笑みを浮かべて、その場を立ち去った。

 マルクはジュリアンの情報を信じているので、訓練開始まで、しばらく空き時間ができた。

 なのでジュリアンは、マルクは寮に戻ると思っている。

 だが、マルクは訓練場に向かった。

(空き時間で、準備運動とかしようかな……)

 マルクは思いの外、真面目であった。

 寮に戻らず、訓練場に向かうマルクを木の陰から見ていたジュリアンは、一人で地団駄を踏んだ。

「なんで、訓練場に行くんだよっ!!人の話を聞いてなかったのか!?」

 かなり大声で叫んでいたため、マルクにも聞こえている距離だ。

「まず、軽く走って……それから、魔力巡らせて……どうしよっかな……」

 だが、マルクは準備運動のメニューを考え込みながら、歩いていたので、ジュリアンの叫びは、よくも悪くも聞こえていなかった。

 マルクが考えながら歩いていると、訓練を終えたコリンが前から歩いてきた。

「訓練頑張ってね」

「おう」

 一瞬足を止めたが、大した会話はせず、再び歩き始める。

 しばらく歩いた頃、コリンは木の後ろで、ジュリアンがマルクのいる方向を睨みながら地団駄を踏んでいるところを発見した。

(また、何か考えてるのか)

 コリンはジュリアンを止めようか迷ったが、面倒くさいので放置することにした。

 そして、マルクはきちんと本来の訓練開始時刻の少し前に、訓練場に到着した。

「きちんと早めに到着していて、よろしい」

 ガストンがマルクのことを褒めている。

「ありがとうございます!」

 マルクはいつも通りの、無邪気な笑みを浮かべている。

「クソがあぁ!!」

 ジュリアンは訓練開始時刻が近づいているにも関わらず、木の後ろでまだ苛立っている。

 マルクとジュリアンの衝突はまだまだ続く。

 だが、すべて同じ結果になることに気づくことは、ないかもしれない。

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