第六話 終わりの始まり
レヴェリアは、アルセーヌに剣を向けられている。
だが、レヴェリアは全く動じない。
アルセーヌを、まっすぐ見返している。
「少しくらいは取り乱してくれると思ったんですが」
アルセーヌが冷たく言いながら、レヴェリアの胸を目掛けて剣を突き動かした。
「避ける素振りくらい見せてくれたら良いのに」
だが、ルーカスはそれを許さない。
「おい!アルセーヌ」
大量の敵を放置してアルセーヌを止めるのは、不可能だと判断したルーカスは、遠隔で魔法を放った。
それが、アルセーヌの剣にぶつかり、アルセーヌの剣の軌道が外れる。
レヴェリアの肩に、剣が深く突き立てられた。
レヴェリアの血が、白いワンピースを赤く染める。
「……っ!」
レヴェリアは必死に歯を食いしばって耐えている。
「おい!アルセーヌ!」
ルーカスの叫び声が、響く。
「邪魔が入りましたね。お嬢様が痛い思いをする時間が増えてしまいましたね」
アルセーヌがレヴェリアからゆっくりと、肉を裂く感触を楽しむように剣を引き抜きながら、唇に微笑を刻んでいる。
だが、レヴェリアはまだ自らの足で立っている。
「アルセーヌ!貴様……!」
ルクが敵と戦いながら、低く唸る。
クロノスに対してではない。
レヴェリアを傷つけた者に対してだ。
その時、ルーカスの魔力が格段に跳ね上がった。
「お前ら邪魔だ」
一瞬にして敵が声を上げる暇もなく、全員飛ばされる。
ルーカスは悪魔本来の魔力を解放したのだ。
今までは、レヴェリアの前で悪魔本来の魔力を解放したことはなかった。
レヴェリアが悪魔本来の魔力に耐えられないとわかっていたからだ。
だが、そんなことを言っていられる状況ではない。
ルーカスとルクがレヴェリアの元に駆けつける。
だが、その前にアルセーヌが立ち塞がる。
「おい、アルセーヌ。お前なんのつもりだ」
ルクが低い声で、威圧するように言う。
「もちろん、大精霊の器を殺して魔力をいただくのです」
ルーカスとルクの顔が、怒りに満ちる。
「もういい。お前を殺す」
ルーカスとルクがアルセーヌに攻撃を始める。
「やれるものならやってみなさい。私はあなたたちより強い」
ルクの咆哮は部屋の空気を大きく震わせた。
黒い魔力がルクの周囲で逆巻き、怒りに呼応するように床が軋む。
アルセーヌは僅かに目を見開くが、すぐに冷笑へと戻す。
「おやおや、そんなに必死になるほど大切でしたか。…滑稽ですね」
「黙れ」
ルクの声はただ、冷たく、底が見えない怒りで満ちている。
「アルセーヌ」
その名を呼ぶルーカスの声は、いつもの柔らかさを完全に失っていた。
「もう許さない」
ルーカスがアルセーヌに魔法を放つ。
アルセーヌはそれを剣で受け止める。
「おやおや、やっと本気になったのですね。ずいぶん待たせるじゃありませんか、ルーカス」
ルーカスの指先に魔力が集まり、周辺が光に包まれ始める。
今、悪魔たちの、レヴェリアを賭けた運命の戦いが、始まった。




