風の殺し屋とすごろく
今現在、珍しいことに、居間にノクターンのメンバーが全員集まっている。
そして、その全員が驚くほど真剣な顔で、机を囲んでいる。
机の上には、一枚の小さいマスがたくさん描いてある大きな紙があり、その上に色とりどりの駒が六つ並んでいる。
「では、始めよう」
アウレリアンが地が震えるような低い声で呟く。
その声に反応して、全員が顔を見合わせて、無言で頷き合う。
そう。
今から、彼らはすごろくをするのだ。
ちなみに、このすごろくには罰ゲームがあり、最後にゴールした者は、夕飯の買い出しに行かなければならない。
まず、アウレリアンがサイコロを振る。
出た目は六だ。アウレリアンは満足そうな顔で、自分の駒を六進める。
次に、サイラスがサイコロを振る。
出た目は四だ。サイラスは柔らかく微笑み、駒を進める。
次に、エレボスがサイコロを振る。
出た目は五だ。エレボスは無邪気な子供のような笑みを浮かべ、自分の駒を進める。
止まったマスには、三マス進むと書いてある。
「よっしゃ」
エレボスは元気にガッツポーズをして、自分の駒をさらに三マス進める。
次に、ヌルがサイコロを振る。
出た目は一だ。だが、ヌルは余裕そうな気配を纏いながら、自分の駒を進める。
次に、レオンがサイコロを振る。
出た目はアウレリアンと同じく六だ。レオンは、興味がないとでも言わんばかりに全く表情を変えず、自分の駒を進める。
次に、クロウがサイコロを振る。
出た目は二だ。そして、クロウは無表情で小さな手で駒をつまみ上げ、駒を二マス進める。
だがその時、クロウは怪訝そうに顔を顰めて、駒を元の位置に戻した。
クロウが止まったマスには、スタートに戻ると書いてあったのだ。
だが、めげずに頑張ろうと決心したのか、表情が少し明るくなる。
そうして、再びアウレリアンから順番にサイコロを振っていく。
それから、しばらく経った。
アウレリアンとレオンが一番を争っている。
その後ろで、サイラスとエレボスとヌルが順番を前後しつつ、ゆっくりと進んでいる。
だが、クロウだけは、まったく進んでおらず、最初のところで二マス進んでスタートに戻るを繰り返している。
「なんで……」
サイコロを振るたびに、クロウの表情が暗くなっていくので、皆不安そうな顔でクロウの様子を気にかけている。
そして、ついにアウレリアンが一番にゴールした。
アウレリアンは腕を組んで、皆を見下すようにニヤニヤしている。
次に、レオンもゴールした。
レオンはずっと無表情で、特に喜んだりはしていない。
続いてサイラス、エレボスの順番でゴールした。
「やった!」
「よっっっしゃぁっっ!」
二人とも、声を上げて喜んでいる。
残るは、ヌルとクロウだ。
ヌルはもうすでにゴールの目前なので、あと少しでゴールできるだろう。
クロウは最初のスタートに戻るループから脱することはできたが、まだ大して進んでいない。
そして、ついに、ヌルがゴールした。
ヌルは相変わらず無表情かと思いきや、クロウの方を不安そうな目で見つめている。
「……っ、うっ……」
クロウが今にも泣きそうな顔で、サイコロを握りしめている。
皆、どうしたらいいのか分からず、そわそわしている。
その時、一番に動いたのは、意外にもヌルだった。
「ああぁ、わかったよ!買い出し一緒に行ってやるから、とっととゴールしろ!!」
ヌルの口調は悪いが、その言葉にクロウの表情はぱっと明るくなる。
「ほんと?」
「本当だからはやくしろ!!」
「うん」
クロウはサイコロを振り、少しずつ駒を進めていく。
しばらくして、クロウもようやくゴールすることができた。
「やった!」
「はやく買い出し行くぞ」
「うん」
皆は、その様子を温かい目で見守っていた。
「お前らだけじゃ荷物持つの大変だろ。俺もついて行く」
そこでレオンは動くつもりはなかったのだが、気づいたら口が開いていた。
クロウとヌルが可愛い妹のように見えたからかもしれない。




