水の令嬢の秘密の書斎
レヴェリアが住んでいるこの別邸には、広々としたレヴェリア専用の書斎がある。
そこには、入った瞬間圧倒されるくらい膨大な本があり、レヴェリアは主に読書をするために使用している。
レヴェリアは特に読書が大好きで、邪魔をされるのが嫌なので、書斎だけはアルセーヌとルーカスとルクでさえ許可がなければ入ることができない。
穏やかな昼下がり、レヴェリアは書斎で本を読んでいた。
自室ではないので、勿論アルセーヌもルーカスもルクもいない。
ルクは特に気にしていないが、アルセーヌとルーカスは自分たちが見ていないところで、レヴェリアに倒れられたりしても困るのでヒヤヒヤしている。
だが、レヴェリアが一人で読書をしたいという気持ちも尊重したいので、感知魔法を強めて外からレヴェリアの魔力を読み、それが乱れたら直ちに駆けつけるということにしている。
レヴェリアのそばには、常にアルセーヌとルーカスとルクがそばにいるが、このときだけは一人になれるので、楽しく気楽に読書を楽しんでいる。
そして、読書を始めて、かれこれ四時間ほど経っている。
アルセーヌとルーカスとしては、きちんと休憩を取っているか確認したいので一時間に一度くらいは顔を見たいのだが我慢している。
そして、さらに三時間ほど経ち、時刻は十七時となった。
レヴェリアは特に社交も仕事もないので、とにかく寝る時間が早く、基本的にはいつも十七時にディナーを食べ、軽く読書を挟んでから入浴し、ルーカスに髪や肌を手入れされ、アルセーヌが淹れた紅茶を飲み、二十時には就寝という気楽な生活を送っている。
アルセーヌはレヴェリアを呼ぼうと、書斎の扉をノックした。
「お嬢様。晩餐のお時間です」
だが、返事はない。
「お嬢様?聞いてます?入りますよ」
アルセーヌは何回かノックしてみるが、反応がないので、仕方なく扉を開ける。
そして、アルセーヌは大きくため息をつく。
レヴェリアは本を読んでいる途中で、寝てしまったのか、机に突っ伏して寝息を立てている。
アルセーヌはレヴェリアが寝落ちしているところを初めて見たので、内心驚いている。
「……まったく。仕方のない方ですね」
アルセーヌは呆れながらも、小さく微笑んで、レヴェリアを抱き上げる。
レヴェリアは無意識に、アルセーヌの服を掴んでいる。
アルセーヌはレヴェリアを寝かせようと、寝室に向かって歩き始める。
廊下を半分ほど進んだ頃、レヴェリアが薄目を開けた。
それに気づいたアルセーヌがレヴェリアを見つめる。
「起こしてしまいましたか。寝てていいですよ」
レヴェリアはアルセーヌを見つめ、頭はまったく回っていないが、眠たげに呟く。
「……ねえ。アルセーヌ」
「はい。どうしましたか?」
「……アルセーヌ……大好き……」
アルセーヌは立ち止まって、一旦目を閉じ、レヴェリアの額に口づける。
そして、レヴェリアの髪に顔を埋めて呟く。
「そういうことは、言わないでください。可愛いです」
だが、レヴェリアは眠ってしまっているので、聞いていない。
アルセーヌは再び歩き始める。
レヴェリアの寝室の扉を開くと、ルーカスがカーテンを閉め、ルクが寝台で寝ていた。
ルーカスがレヴェリアの様子に気づき、穏やかに微笑む。
「寝ちゃってたんだ。珍しいね」
「ええ。本当に、珍しいことばかりです。やめてほしいです」
ルーカスが首を傾げる。
「他にも何かあったの?」
アルセーヌはレヴェリアをルクの隣に寝かせ、レヴェリアの額に自分の額を当てた。
「いいえ。ただ、お嬢様が可愛いという話です」
レヴェリアは無意識に隣のルクにしがみついて、眠っている。
アルセーヌとルーカスはその様子を、ただただ温かい目で見守っている。




