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水の令嬢は風邪を引く

 レヴェリアはとにかく病弱だ。

 身体が大精霊の魔力に耐えることができていないというのも原因の一つではあるが、それを抜きにしてもレヴェリアは身体が弱い。

 そのため、レヴェリアは頻繁に体調を崩す。

 今日も今日とて、レヴェリアは風邪を引いている。

 レヴェリアは部屋の寝台の上に、ぐったりと寝転がっている。

 顔は真っ赤に染まっていて、手足は震えている。

 アルセーヌがレヴェリアの額に、濡れたタオルを丁寧に置く。

「今日は一日安静にしてくださいね」

 アルセーヌは微笑みながら話しかける。

 レヴェリアは声を出す気力もないようで、小さく頷いている。

 その時、ドアが控えめにノックされ、薬と水を持ったルーカスが部屋に入ってくる。

「お嬢様、お薬をお持ちしました」

 アルセーヌがレヴェリアの背中を支えて、レヴェリアをそっと起こす。

 ルーカスが薬と水を差し出す。

「……ありがとう」

 薬と水を受け取るレヴェリアの動きは、いつもよりかなり鈍い。

 アルセーヌはレヴェリアが薬を飲み終えたことを確認し、そっとレヴェリアの背を支えて寝台に寝かす。

 その時、部屋の端からルクの大きな欠伸が聞こえた。

 ルクは起きた瞬間にも関わらず、部屋の空気がいつもより重いことに気づいたのか、寝台のそばに近寄る。

「風邪を引いたのか?」

「ええ。熱がかなり高いです」

 アルセーヌが素っ気なく答える。

 ルクがレヴェリアの様子を確認しようと思い、寝台の上に飛び乗る。

「うっ」

 ルクは体が大きく、かなり重いので急に上に乗られたレヴェリアから声が漏れる。

 見かねたアルセーヌがルクを掴んで、寝台から引きずり降ろす。

「ルク。お嬢様は体調が優れないのですから、急に飛び乗るな」

 アルセーヌがかなり怒っている。

「様子を確認しようと思っただけだ」

 ルクがアルセーヌを睨みながら、低い声で威圧するように吐き捨てる。

 だが、すぐにレヴェリアに視線を移す。

「すまない。レヴェリア」

「……いいよ、別に」

 ルクはアルセーヌとは仲が悪いが、レヴェリアに対しては素直だ。

「とりあえずルクは隔離しましょうか」

 ルーカスが提案をする。

「なぜだ」

「君またお嬢様に飛びかかりそうだからね。まあ、とりあえずコップ戻しに行くから付いてきて」

「仕方ないな」

 ルーカスとルクは言い合いをしながらも、部屋から出ていく。

 アルセーヌは寝台のそばに跪き、不安そうな顔でレヴェリアに話しかける。

「何か欲しいものはありませんか?なんでもおっしゃってくださいね」

 レヴェリアは今、完全に頭が働いていない。

 そのせいだろうか。

 レヴェリアはアルセーヌを見つめながら、小さくつぶやいた。

「……手、握ってて……」

 アルセーヌは表情には出ていないが、とても驚いた。

 いつもあんなに冷淡なお嬢様が、甘えてくるとは。

 アルセーヌは手袋を外し、レヴェリアの手をそっと包むように、握った。

「ええ、一生離しません。何があっても」

 アルセーヌは笑顔で、嬉しそうに囁いた。

 レヴェリアは安心したのか、そのままうとうとして、眠ってしまった。

 その時、扉が開いた。

 ルーカスがレヴェリアとアルセーヌを見るなり、動きを固める。

「……何をやっているのですか?」

 ルクは庭に出ている。

 そんなことは、今はどうでもいい。

 アルセーヌはルーカスに全力の笑顔を向ける。

「お嬢様が手を握っていてほしいとおっしゃったので手を握っているのです。見て分かりませんか?」

 ルーカスの後ろから、黒い魔力が溢れ出す。

「私の!お嬢様!から!離れて!ください!!!」

「静かにしないとお嬢様が起きてしまいます」

 ルーカスは嫉妬深い。

 しばらくは屋敷がピリピリするだろう。

 だが、アルセーヌはレヴェリアをたっぷり甘やかしてやろうと決心した。

 ルーカスはレヴェリアを取り返そうと決心した。

 ルクは庭で呑気に大きな欠伸をした。

 レヴェリアはアルセーヌの手をしっかりと握りながら、満足そうな顔で眠っている。

大精霊の器が辿った道を読んでいただき、ありがとうございます!今日から外伝を投稿しています。各4話の計16話の予定です。これからもよろしくお願いします!

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