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大精霊の器が辿った道  作者: 安達りあ
土の聖子編
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第十一話 黒炎に包まれて

 周りの家々が燃え始めて、数分が経った。

 このままでは、結界で塞いでいるとはいえ、この建物にも火が及ぶだろう。

 それを理解している人間が、アガサに声をかけた。

「ベルクール先生は飛行魔術が使えましたよね?」

「え、ええ……」

 アガサは急に話しかけられたので、戸惑いながら答える。

「では、ルカ様を連れて上から脱出することはできますか?」

 アガサは苦虫を噛み潰したような顔で、首を横に振る。

「残念ながら、私では魔力量と技術力の問題で、ルカ様と一緒に飛ぶことはできないのです」

「……そうですか」

 この場にいる全員が、結界を維持しながら、どうにかこの危機を脱する方法を考える。

 一人は炎に向かって水魔法を放ってみるも、何もなかったかのように水は消える。

 一人は瘴気に封印魔法を施そうとするが、魔力が全く足りず、封印されない。

 一人は水魔法を帯びさせた剣で火を斬ってみるが、火はびくともしない。

 そんな皆の様子をルカは、後ろから祈るように眺めていた。

 自分にできることがほとんどないことを理解しているのだ。

 その時、感知魔法で火の広がり具合を常時感知していた一人の使者が、焦った様子で声を張り上げた。

「この建物の一部にも燃え移りました!このままでは、あと数分以内にこの建物も燃えてしまいます!」

 その言葉で、全員の焦りが一段階増した。

 このままでは、大切なルカを失ってしまう。

 その瞬間、建物の一角が崩れ落ちた音がした。

 その時、全員が決心した。

 お互い目を見合わせて、頷きあっている。

 ルカを守るには、これしかない。

 アガサが大きく息を吸い、円滑に指示を出し始める。

「半分は結界維持を継続してください!もう半分は、水魔法で火を弱めて逃げ道を作って!」

「「はい!!」」

 全員の返事がきれいに揃った。

 その声は緊張よりも、誇りに満ちていて、誰も火に向かうことに躊躇いはない。

 そして、一人の使者が声を上げた。

「北側の火が少し弱いので、そちらを狙ってください!」

 そして、村の人々の半分が火に向かって水魔法を放つ。

 だが、火はほんの少し揺れるだけで、勢いは収まらない。

 それを見た一人の村人が、鼓膜が張り裂けそうなほど声を張り上げた。

「魔力を惜しむな!すべての魔力を注ぎ込め!!」

 全員が魔力が枯渇するのを覚悟で、手に魔力を込める。

 すると、火の勢いが少し弱まった。

 ここを通れば、多少の火傷は免れないが、死にはしないだろう。

 使者がルカを軽々と抱き上げ、そこに突っ込んで行く。

 アガサや数人の村人も、ルカを守るようにして付いていく。

 だが、大多数の村人は建物に残っている。

 それを見たルカは、声を漏らした。

「……どうして?みんなもはやく来ないと。死んじゃうよ……?」

 そんなこと、村人はわかっている。

 使者は急いだほうが良いと分かっているが、少しだけ足を止めた。

 残った村人は誇らしげな笑顔で、潤んだ目でルカを見つめ、静かな声で、赤子をあやすように、ルカに静かに語りかける。

「私たちは良いのです。ルカ様が無事なら、それで良いのです。」

 ルカの目から涙が溢れる。

「……みんなも、来てよっ……!!」

 村人の目からも、ルカと同じように涙が溢れる。

「いけません。私たちがそちらに行けば、道が塞がってしまいます」

 村の人々は決して魔法が得意な訳ではない。

 そのため、移動しながら魔法を使うということが、できないのだ。

 使者はこれ以上立ち止まれば、ルカが助からないと思い、足を再び動かし始める。

 ルカは残っている者たちに向かって必死に手を伸ばす。

「やだぁっ!みんなを守るって、決めたのにっ!!」

 火の勢いが戻りかけていることに気づいた使者が、足を速める。

 その時、瘴気がルカたちの方に近づいてきた。

「「ルカ様!!」」

 その瞬間、ルカの異様な色をした瞳に、ただただ暗い影が映った。

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