第七話 謎の異変
今日も、ルカはアガサから魔法を教わっていた。
ルカは上級回復魔法を習得するべく、毎日魔力操作を反復したり、中級回復魔法を繰り返して展開したりしている。
ルカは要領がいいのか、日に日に腕を上げている。
国内屈指の回復魔法の使い手であるアガサも絶賛している。
「ルカ様は本当に魔力操作がお上手ですね」
アガサは本当は、ルカに攻撃系魔法も教えたいが、もしそんなことを言ったら周りの人間に怒られてしまうかもしれないので、言えないでいる。
実際、ルカは魔力操作に長けているので、様々な方法で巧みに攻撃することができるかもしれない。
アガサはそれを非常に残念がっている。
ルカも攻撃系魔法を使いたがっているが、周りの人間の顔を窺って我慢している。
休憩時間が終わり、ルカは再びアガサの教えのもと、魔力操作をしていた。
その時、アガサとルカのもとに一人のお付きが近づいてきた。
そして、二人に向かって丁寧に礼をし、真剣な顔で、慎重に話し始める。
「申し訳ありません、ベルクール先生、ルカ様。ルカ様、至急来ていただきたいのですが……」
ルカはぽかんとして戸惑っていたが、すぐに気持ちを切り替える。
「わかりました。すみません、ベルクール先生。行ってきます」
ルカは非常に申し訳なさそうにしているが、アガサは特に気にした様子もなく、穏やかな笑みを浮かべる。
「ええ、構いませんよ。行ってらっしゃいませ」
アガサに見送られて、ルカはお付きと一緒に建物に向かって歩き出す。
建物に着くと、大勢の村の人々が混乱した顔で、ルカを見ていた。
ルカは村の人々がここまで混乱しているのを見るのは久しぶりなので、戸惑っている。
「み、みんな、どうしたの?」
ルカがそう問うと、代表の者が少し焦った様子で、事情を説明し始める。
「あの、実は、村の子供が一人消えたのです」
「ええっ!それは本当ですか?」
ルカの戸惑いが増し、顔が驚愕で染まっている。
「はい……。村全体はもちろん、森も調べました」
ルカが驚いていると、村の人々が次々と声を上げていく。
「きっと魔物に食べられたんだわ!」
「外の者に連れ去られたのかも」
「でも、最近村に出入りした者はいなかったはずよ!」
「どこかで迷子なのかも?」
ルカが慌てながらも、なんとかみんなを落ち着かせようと、声を張り上げる。
「落ち着いてください!僕も探しに行きます!ベルクール先生にも協力を頼みます!なので、落ち着いてください!」
その言葉に、ざわめきが収まっていく。
ルカはすぐにアガサに協力を頼み、数人のお付きを連れて、村へ出た。
アガサは飛行魔術と感知魔術を使い、上から森を捜索している。
ルカは森に入ることが許されなかったので、村を隅々まで捜索していた。
だが、しばらく捜索を続けても子供は見つからず、もう太陽が沈みかけているので、ルカとアガサは一旦捜索を中断しようとした。
その時、少し離れた場所で悲鳴が上がった。
ルカたちは即座に、そちらへ目を向ける。
そこは家畜を飼っている牧場のようなもので、柵に囲われている。
その中央に、何頭もの大きな牛が倒れていた。
「どうしたのですか!?」
ルカが小走りで、悲鳴の主の元に駆け寄る。
「き、急に牛たちが倒れ始めて……」
ルカの背中に冷や汗が流れた。
この村は今、異変が絶えない。
その原因も分からない。
それがたまらなく怖いのだ。
ルカはお付きとアガサの方を向き、重い口を開いた。
「みんなを集めてください。情報を共有します」
ルカはいつもより、真剣な顔をしていた。
その姿は小さな子どもでありながら、まるで神様のようだった。




