第五話 あなたのために
ここ最近、ルカはずっと考え事をしていた。
ルカは村の人々が好きというわけではない。
だが、村の人々はルカを崇拝していて、ルカがいなくなったら生きてはいけないだろう。
ルカは最近、そんな人たちに同情するようになった。
そして、ルカは思いついた。
回復魔法を使えるようになりたい、と。
この間の大型魔物襲撃の際、ルカは何もしていない。
たしかに、ルカが魔物と戦うことは周りの人間が許さないし、ルカは回復魔法の使い方なんて知らない。
ルカにできることは、さほどなかったのだ。
それで、ルカは自分を束縛とも言えなくはないが、守ってくれている人間に対して、何かをしたいと思ってしまったのだ。
それに、回復魔法なら攻撃系魔法と違って危険なことはほとんどない。もしかしたら、周りの人間も許してくれるかもしれない。
土の大精霊グランディスの器であるルカには、回復魔法は比較的向いている。
ルカはとりあえず、そばの人間に回復魔法を学びたいと言ってみることにした。
「ね、ねえ……」
「どうしましたか?ルカ様」
ルカがおどおどしながら声をかけると、即座にそばにいた女が反応してくれた。
「あの、僕、実は……魔法を使えるようになりたいんだ」
女は首を傾げて、不思議そうな表情をしている。
「あらあら、急にどうしたのですか?」
「魔法っていっても、攻撃魔法とかじゃなくて、回復魔法を学びたいんだ。みんなを助けたくって」
そう言うと女の顔は一瞬明るくなったが、すぐに真面目な顔になった。
「お気持ちは大変嬉しいですが、駄目です。ルカ様には必要ありません」
「お願い!回復魔法だけだから!」
ルカが必死になってお願いする。
「駄目なものは駄目です!もし誤って魔力が暴走してしまったら危ないです」
「ちゃんと制御する!だから、お願い……」
諦め始めたのか、ルカが語尾を弱め、下を向いてしまった。
女はそんなルカを見て、申し訳なく思ったのか、あわあわしながらルカを宥める。
「あ、ごめんなさい……。本当にお気持ちは嬉しいんですよ。あの、でも危ないかもしれませんし」
ルカは泣き落とせるのではないかと思い、少し泣き声で話してみることにした。
「……僕の、魔力が……危ないのが、悪いの……?」
「そ、そんなことないです!わかりました!上の者に伝えてみますから!」
あれから数日後、ルカは魔法を学ぶことが許された。
あの女が頑張って、周りの人間に訴えかけたそうだ。
学んで良いのは回復魔法のみである。
誰かが見ているときじゃないと使ってはいけない、使って良い回数は一日あたり二十回以内など、色々と制限はつけられたが、ルカから見ればこの程度の制限はどうってことない。
ちなみに、回復魔法を教えてくれるのは回復魔法の使い手として、国内でもとても有名な魔法使いだ。
これから、ルカの新しい生活が始まる。
ルカは今までと違うことができるので、非常にワクワクしている。
周りの人間も大反対するかと思いきや、割と楽しみにしている節がある。
「よし!がんばるぞ!」
「はい!ルカ様!頑張ってください!」
「全力でサポートします!」
ルカがこれほど楽しいと思ったのは生まれて初めてかもしれない。




