第三話 黒い影が
ルカには村の人々によって隠された、知らない話がある。
水の大精霊ネレイスの器レヴェリア・エリア・エーヴェルヴァインが悪魔によって、殺された。
ルカは悪魔というものを知らない。
悪魔は大精霊の魔力を好んでおり、大精霊の器を殺してその力を奪うことがある。
それをルカは知らない。
悪魔がこの世界に顕現するには、膨大な時間と犠牲が必要なので、ルカのもとにはまだ悪魔が来たことはない。
火の大精霊カルディアの器マルク・フェルドが騎士団に入団し、騎士として戦っている。
その時に国王は大精霊の器を保護したいと表明した。
その少し前に、大精霊グランディスの器ルカ・フェアチャイルドの元にも国王からの使者が来た。
それをルカは知らない。
◇◆◇
ある日、ルカの元に一通の手紙が届いたそうだ。
内容は大精霊の器を保護したい、その詳しい説明のために使者を送るというものだった。
ルカ宛に届いたものは、周りの人間が確認している。
ルカが外の世界に興味を持たないように、外に出たいなどと言い出さないように。
そして、周りの人間たちは話し合った。
どうやって国王の申し出を、拒否するか。
とりあえず、ルカにはこの話を伏せることとなった。
そして、使者がやって来た。
ルカを建物の奥に押し込み、見張りも付けた。
使者は常に慎重に行動し、周りを観察していた。
どうやら、この村の噂は王城にまで届いていたらしく、使者は警戒していた。
そして、村の人間は使者を徹底的に追い返すべく、使者をとにかく威圧していた。
「ですから、とりあえず一度だけでも良いので、王城に来ていただきたいのです!」
使者は真摯な眼差しで、必死に訴えかけている。
だが、それが伝わる連中はここにはいない。
「何故ルカ様を王城に連れて行かなければならないのです!?」
「ルカ様の護衛なら、私たちだけで十分です!!」
「ルカ様を王城に閉じ込めるつもりでしょう!?」
全員が半ば錯乱しながら、異議を唱えている。
使者は全力で困り果てている。
「そんな!王城に一度来ていただきたいだけです!今後の私共とルカ様についての関係について話し合いを」
「関係!?」
「何を企んでいるのですか!?」
「そんなもの、今まで通りお互い不干渉で良いでしょう!」
国王直属の優秀な使者は、真摯な態度を崩さないようにしているが、眉間にシワができ始めている。
「一度だけ王城に来ーー」
「行きません!!!!!」
もはや、話を聞いてすらもらえない。
だが、使者は諦めない。
「でしたら、一目で良いのでルカ様にお目通りを願いたいです!!」
「良いわけがないでしょう!!!!!」
部屋に沈黙が漂う。
いつの間にか話し合いが白熱していたのか、部屋がとても暑い。
「……一度話を持ち帰り、議論させていただきます」
「もう来なくて結構です」
もうこれ以上の話し合いは不可能だと判断した使者は、冷静に話を切り上げた。
「では、失礼します」
◇◆◇
国王は再度、ルカとの接触を再検討している。
だが村の人間は、それを全力で拒んでいる。
そんなこと、ルカは知る由もない。
この話を受けていれば、ルカはさらに孤独にならずに済んだかもしれないが。




