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大精霊の器が辿った道  作者: 安達りあ
土の聖子編
39/66

第二話 奇妙な日常

 ルカの一日はとても長い。

 かといって、特に何かをするわけでもない。

 一日中、人々に向かって、無理矢理作った笑顔を振りまくだけだ。

 今日もそれらを終え、ルカは寝台に寝転がっていた。

 まだ寝るには少し早い時間だが、とにかく疲れたのだ。

 ルカは人々の前に出ていないときでも、常に誰かに見張られている。

 だから、ルカは見張りの人が一瞬目を逸らした隙に、枕に顔を埋めて呟く。

「やだなぁ、こんなの」

 呟く必要があるわけではないが、呟かずにはいられない。

 見張りの人が首を傾げて、ルカを見つめる。

「どうかしましたか?ルカ様」

「ううん。なんでもない」

 ルカは何もないふりを続けないといけない。

 そうしないと、悲しむ人がいる。

 そうしないと、生きていけない人がいる。

 そうしないと、怒られてしまう。

(……あぁ、本当にいやだなぁ)


 大精霊の器は、何かと狙われやすい。

 それはルカだって例外ではない。

 穏やかなはずだった昼間、村に警鐘が鳴り響いた。

 襲撃者を知らせるものだ。

 警鐘が鳴ると、明るい人々の顔が一気に険しくなり、全員が武器を取り始める。

 今回の襲撃者は、大精霊の器を殺そうという人間の集まりだ。十数人くらいの魔法使いや戦士が集まっているようで、前より増えたとはいえまだまだ人口の少ないこの村では、対処は大変だろう。

 だが、そんなことはなかった。

 人々はルカを信仰することで、自分の持つ力を何倍にも引き上げているのだ。

 その様子をルカは建物から、見つめるだけだ。

 後ろから、見張りの女がルカに不安そうな口調で話しかける。

「ルカ様、大丈夫ですよ。すぐに終わります」

 どうやらこの女は、ルカが襲撃者に対して恐れを抱いていると思っているらしい。

 だが、ルカは襲撃者に対して、怖いと思ったことはない。

 どうせ、みんなが僕を護るために倒すんだ、そう思っている。

「みんなならすぐに倒せるだろうね」

 ルカは皮肉を込めたつもりで言った。

 だが、女の表情はぱあっと明るくなった。

「お褒めに預かり、光栄です!皆に伝えておきますね!」

 どうやらルカの思いは何も伝わっていなかったようだ。

 いつだってそうだ。

 何を言ったって、みんな勝手に自分の都合に合わせて解釈する。

 つくづく反吐が出そうだ。

 そんなつまらないことを考えているうちにも、襲撃者はみるみる減っていく。

 大した魔法も使えないくせに、魔法使いと対等に渡り合っている。剣を習ったことがあるわけでもないのに、戦士を倒している。

 やがて、襲撃者が全員倒れた。

 人々は嬉々として、ルカのもとに戻ってくる。

「ルカ様、ご安心を!」

「お怪我はありませんか?ルカ様!」

「もう悪い奴らはいませんよ!ルカ様!」

 ルカは暴れたくなったが、なんとか抑え込んで、みんなに向かって微笑んだ。

「みなさん。僕のために、ありがとうございます」

 そう言うと、みんながさらに笑顔になる。

 ルカは誰にも見えないように、後ろを向いて、ため息をついた。

「……僕のためじゃないくせに」

 ルカは孤独に泣きそうになった。

 でも、ルカが泣けば周りの人間が困るのだろう。

 でも、ルカはこう思わずにはいられない。


……いつまで、この遊びを続けるの?

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