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大精霊の器が辿った道  作者: 安達りあ
土の聖子編
38/66

第一話 小さな村で

 この世には四体の大精霊が存在するとされている。水の大精霊、風の大精霊、火の大精霊、土の大精霊。彼らは神に近しい存在で、それぞれ人間を一人選び、自身の器とする。

 器と言っても人間の身体を乗っ取ったりするわけではなく、有事の際に、世界へ顕現するための媒体にするだけだ。また、大精霊は器に自身の魔力を与える。

 その魔力が器にどのような影響を及ぼすかは、器自身によるものかもしれない。


 これは土の大精霊の器、ルカ・フェアチャイルドが崇められた末に壊れてしまう話。彼はただの無力な子供であった。

―――――――――――――――――――――――――――

 ここは、冒険者も旅人も来ない、簡素で何もなく、いつ廃れてもおかしくない小さな村だった。

 だが、六年ほど前から様子が変わり始めた。

 人影もまばらだった村に、人が増え始めた。

 多いというわけではないが、旅人が立ち寄るようになった。

 素朴だった家々が少し豪華になった。

 暗かったみんなの顔が、明るくなった。

 村の中心に、とても豪華で大きな建物が建った。

 みんなその建物に、よく集まる。

 その中心には、小さな子どもがいる。

 そして、誰もいないところで、その子どもは無邪気に呟いた。

「外に出てみたいなぁ」

 その子どもの名前は、ルカ・フェアチャイルド。

 ルカは、生まれつき瞳の色が金色で、髪の毛の一部が緑がかっている。

 そんな人間は、この世にいない。

 なので、生まれた瞬間、すぐに分かった。

 ルカ・フェアチャイルドは『土の大精霊グランディス』の器だと。

 大精霊の器は、代償があることが多い。

 稀に代償がない者も現れるが、基本的には病弱であったり、精神に異変があったりする。

 ルカの場合は、瞳と髪の色素異常だった。

 大精霊の器に対する反応は、かなり分かれている。

 そもそも存在を知らない者も多い。

 面倒事には関わりたくないので、静観する者がいる。

 まだあまり解明されていない大精霊について知りたいと思って、強引な方法で引き込んだりする者がいる。

 悪魔への供物にしようと思って、捕らえようとする者もいる。

 未知の存在が怖いので、殺そうとする者だっている。

 村は、ルカという名の神を手に入れた。

 そもそもこの世には、精霊に祈りを捧げる習慣はあった。

 この世界では、空中に漂う精霊の力を借り、己の魔力で世界に干渉して起こした現象を魔法と呼んでいる。

 魔法を使うには、精霊の存在が必要不可欠だ。

 そのため魔法を使う人々は、精霊へ感謝を伝えるために、よく祈りを捧げる。

 そんな人たちにとって、大精霊の器という存在は、大きいのだろう。

 この村は、辺境なので、魔物を倒したり、暮らしを便利にするために、日常的に魔法を使う。

 そのため、精霊に大層感謝している。

 なので、村の人間はルカを執拗に崇めた。

 ルカは建物の中に閉じ込められて、見世物のように扱われた。

「外に出て、綺麗な景色を見てみたい!」

 ルカは周りの人間に一度だけ、幼心にそう言ったことがある。

 すると、周りの人間は血相を変えて、ルカを叱った。

「もし、ルカ様が怪我でもしたらどうするのです!?」

「いけません!外の世界に触れるなど!ルカ様が穢れてしまう」

 あれ以来、ルカは外の世界を諦めた。

 だが、そのうち壁は壊れることとなる。

 それは喜劇か。

 それとも悲劇か。

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