第一話 小さな村で
この世には四体の大精霊が存在するとされている。水の大精霊、風の大精霊、火の大精霊、土の大精霊。彼らは神に近しい存在で、それぞれ人間を一人選び、自身の器とする。
器と言っても人間の身体を乗っ取ったりするわけではなく、有事の際に、世界へ顕現するための媒体にするだけだ。また、大精霊は器に自身の魔力を与える。
その魔力が器にどのような影響を及ぼすかは、器自身によるものかもしれない。
これは土の大精霊の器、ルカ・フェアチャイルドが崇められた末に壊れてしまう話。彼はただの無力な子供であった。
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ここは、冒険者も旅人も来ない、簡素で何もなく、いつ廃れてもおかしくない小さな村だった。
だが、六年ほど前から様子が変わり始めた。
人影もまばらだった村に、人が増え始めた。
多いというわけではないが、旅人が立ち寄るようになった。
素朴だった家々が少し豪華になった。
暗かったみんなの顔が、明るくなった。
村の中心に、とても豪華で大きな建物が建った。
みんなその建物に、よく集まる。
その中心には、小さな子どもがいる。
そして、誰もいないところで、その子どもは無邪気に呟いた。
「外に出てみたいなぁ」
その子どもの名前は、ルカ・フェアチャイルド。
ルカは、生まれつき瞳の色が金色で、髪の毛の一部が緑がかっている。
そんな人間は、この世にいない。
なので、生まれた瞬間、すぐに分かった。
ルカ・フェアチャイルドは『土の大精霊グランディス』の器だと。
大精霊の器は、代償があることが多い。
稀に代償がない者も現れるが、基本的には病弱であったり、精神に異変があったりする。
ルカの場合は、瞳と髪の色素異常だった。
大精霊の器に対する反応は、かなり分かれている。
そもそも存在を知らない者も多い。
面倒事には関わりたくないので、静観する者がいる。
まだあまり解明されていない大精霊について知りたいと思って、強引な方法で引き込んだりする者がいる。
悪魔への供物にしようと思って、捕らえようとする者もいる。
未知の存在が怖いので、殺そうとする者だっている。
村は、ルカという名の神を手に入れた。
そもそもこの世には、精霊に祈りを捧げる習慣はあった。
この世界では、空中に漂う精霊の力を借り、己の魔力で世界に干渉して起こした現象を魔法と呼んでいる。
魔法を使うには、精霊の存在が必要不可欠だ。
そのため魔法を使う人々は、精霊へ感謝を伝えるために、よく祈りを捧げる。
そんな人たちにとって、大精霊の器という存在は、大きいのだろう。
この村は、辺境なので、魔物を倒したり、暮らしを便利にするために、日常的に魔法を使う。
そのため、精霊に大層感謝している。
なので、村の人間はルカを執拗に崇めた。
ルカは建物の中に閉じ込められて、見世物のように扱われた。
「外に出て、綺麗な景色を見てみたい!」
ルカは周りの人間に一度だけ、幼心にそう言ったことがある。
すると、周りの人間は血相を変えて、ルカを叱った。
「もし、ルカ様が怪我でもしたらどうするのです!?」
「いけません!外の世界に触れるなど!ルカ様が穢れてしまう」
あれ以来、ルカは外の世界を諦めた。
だが、そのうち壁は壊れることとなる。
それは喜劇か。
それとも悲劇か。




