第十二話 決定打を
スタンピードはほぼ収束した。
だが、現場はまだ終わっていない。
マルクとコリンは、大怪我をして、今にも意識を手放しそうなアイラに必死に声をかけている。
「しっかりしろ!アイラ!」
「アイラさん!起きて!」
そこに、第四部隊の騎士が数名やって来て、すぐに回復魔法を展開した。
第四部隊が今使っている回復魔法は、マルクやコリンが使っているものよりも上位のもので、かなり繊細な魔力操作と集中力を要する。
しばらく経つと、アイラの呼吸が落ち着いてきた。
傷も先ほどよりは、深くない。
でも、まだ気を抜くことはできない状態だ。
「砦に移動して治療します」
第四部隊の騎士たちがアイラを素早く担架に移して、砦に向かって歩き出す。
マルクとコリンがついて行って良いのか戸惑っている。
そのことに気づいたガストンが、マルクとコリンに向かって微笑む。
「お前らもついて行ってやれ」
「「ありがとうございます」」
マルクとコリンはサッと一礼して、すぐに第四部隊のあとを追いかける。
砦に着いた瞬間、魔道具などを用意して待ち構えていた第四部隊の別の騎士たちが、即座に処置を始めた。
「思ってたより傷が深いですね」
「急ぎましょう」
マルクとコリンはその様子を見守ることしかできない。
第四部隊の騎士たちは手早く回復魔法と魔道具を使い、傷を塞ぐために手を尽くしている。
そして、しばらく経つと、一人の騎士が立ち上がり、微笑みを浮かべて、マルクとコリンに話しかけた。
「傷はある程度塞がったので、しばらく安静にしておけば、大丈夫だと思います」
二人は安堵したように息を吐く。
そしてマルクはアイラの元にしゃがんで、手を握っている。
「守ってくれてありがとうな」
アイラは笑顔で、マルクの手を握り返す。
そんな二人の様子をコリンは、保護者のように見守っていた。
あの事件から、数日経ったある日、第一部隊の数名が、エリーナの部屋に呼び出されていた。
呼び出されたのは、マルク、コリン、アイラ、ガストン、そしてジュリアンだ。
エリーナが揃った面々を見つめながら、重い口を開く。
「今日集まってもらったのは、スタンピードの時のアイラ・ヴァンスが負傷した件について、まとまったからだ」
スタンピードの時に、マルクの足が拘束され、魔物に攻撃されかけたところをアイラが庇ったことについて、ガストンが調査を行ったらしい。
エリーナとガストンが目を見合わせて、そしてジュリアンの方に視線を向ける。
そしてエリーナが厳しい口調で、話し出す。
「今回、マルク・フェルドの足が拘束されたのは魔法によるものだった。そして、調査の結果、その魔法を使ったのはジュリアン・ローズだと判明した」
ジュリアンの顔が一気に青くなる。
コリンとアイラも一瞬は驚いたが、すぐに顔が怒りに染められた。
「そのことについて、なにか弁明はあるか?ジュリアン・ローズ」
ジュリアンは戸惑いながら、恐る恐る口を開く。
「……い、いや、僕は……」
ジュリアンは声が震えていて、言葉が上手く出てこない。
そこにエリーナが追い打ちをかけるように、声を低くする。
「普段からマルク・フェルドに対して、時間の虚偽伝達、装備の破壊、騎士として相応しくない発言をしていたとも聞いた。率直に言おう。お前をこの騎士団より除名する」
その瞬間、ジュリアンは崩れ落ちたりでもするかと思いきや、肩を震わせ、笑い始める。
「どれもこれも!そこの平民が悪いんだよ!平民のくせに!贔屓されやがって!」
ジュリアンが手を大きく振り上げて、マルクに殴りかかろうとする。
ガストンが即座に立ち上がり、ジュリアンの手首を強く掴む。
エリーナは紅茶を一口飲みながら、その様子を一瞥する。
その表情は、一切変わらない。
「言いたいことは、それだけだな。ガストン、今すぐそいつを連れ出せ」
「はい」
ガストンがジュリアンを引きずって、連れて行く。
ジュリアンはずっと喚き散らしている。
それを、コリンとアイラは呆れながら見つめている。
マルクはというと、何が起きているのか分からないとでもいわんばかりに、間抜けな顔をしていた。




