第十一話 赤い血に染められて
マルクたちはスタンピードの魔物たちと交戦している。
騎士たちが魔物を順調に倒していってるので、魔物の数はみるみる減っている。
今のところ大した被害も出ていない。
このままいけば、スタンピードは最小限の被害で収まるだろう。
マルクが残り少ない魔物を炎を纏った剣で素早く、貫いた。
燃え盛る炎が、魔物を焼き焦がしていく。
その時、マルクの後ろから別の魔物が飛び掛かってきた。
マルクは、先ほどまで戦っていた魔物から剣を引き抜き、飛び掛ってきた魔物を倒そうとした。
だがその時、誰かがマルクの足元に向かって魔法を放った。
マルクの足に泥がまとわりついて、魔物の攻撃を避けきれない。
魔物の爪はもう、目の前だ。
このままでは鋭い爪に、体を引き裂かれてしまう。
この攻撃を、まともに喰らったら、ただでは済まないだろう。
良くて重傷。
死んだっておかしくないだろう。
マルクは足を必死に動かそうとしているが、思うように動けていない。全身から汗が噴き出している。
それに気づいたコリンが血相を変えてマルクに向かって走っているが、距離がある。このままでは、間に合わないだろう。
ガストンは後ろの方で指揮を執っていて、マルクの様子に気づいていない。
マルクは、もう避けることはできないと判断し、少しでも傷を浅くしようと、身を捻った。
魔物の爪が、ギラリと輝く。
マルクが覚悟を決めた、その時、マルクと魔物の間に割り込んだ騎士がいた。
アイラだ。
アイラはいつものように凛々しい顔で、何の躊躇いもなく魔物に立ちはだかった。
剣は持っていない。
魔法を使う素振りも見せない。
魔物と距離が近すぎて、もう攻撃は間に合わないのだ。
マルクもコリンも限界まで目を見開いた。
魔物の爪が振り下ろされて、アイラの肩に深く食い込み、血が噴き出す。アイラの肩が裂ける。
マルクがただ、必死に叫んだ。
「アイラッッ!!」
アイラは震える手で肩を抑えて、膝から崩れ落ちそうになっているが、強い意志を持って立ち続けている。
直ちにコリンが駆けつけて、魔物のみぞおちに剣を突き刺す。
魔物は咆哮しながら、地面に倒れ込んだ。
それと同時に、アイラも地面に膝をつく。
マルクは足にまとわりついている泥を必死に振り払って、アイラの元に駆け寄る。
「大丈夫か!アイラ!」
コリンがアイラを支えながら、不安げな顔をしている。
「かなり傷が深い。急がないと。危険な状態だ」
そう言ってコリンはアイラに回復魔法をかけ始める。
だが、傷が深すぎてコリンの回復魔法では、回復が間に合っていない。
マルクも回復魔法を発動するが、それでも間に合っていない。
アイラが大怪我をしている事に気づいたガストンが、マルクたちの元に駆けつける。
そして、周りにいる騎士たちにテキパキと指示を出す。
「直ちに第四部隊を呼べ!回復魔法を使えるものは、補助してやれ!急げ!」
周りにいた騎士たちが、素早く動き始める。
ガストンは一刻を争うことをすでに理解しているようで、何故このような状態になったのかは聞かない。
今は何よりも、アイラの命が最優先だ。
マルクとコリンが必死に叫ぶ。
「アイラ!しっかりしろ!」
「アイラさん!間に合わせるから!頑張って!」
だが、アイラは目に見えて、どんどん状態が悪化していっている。
血がどんどん流れ出している。
呼吸が浅くなっていく。
目はだんだん焦点が合わなくなっていく。
そんな中でも、アイラは言葉を紡いだ。
「マルク……無事で、よかった……」
マルクは泣きそうな顔で、アイラの手をしっかりと握る。
「絶対助けるからな」




